パソナテック

たった1人からの挑戦。カスタマージャーニーの可視化で社内ムーブメントを起こす

株式会社パソナテック
事業戦略室 マーケティング責任者
藤川 友紀氏

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手書きの「カスタマージャーニーマップ」が原点

株式会社パソナテックは、ITやエンジニアリング分野に特化した人材サービス企業として1998年に創業。昨今は人材サービスだけでなく、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)そのものを支援する事業に力を入れている。

同社事業戦略室 マーケティング責任者の藤川友紀氏は、2018年にマーケターとして入社。

「入社したばかりで、サービスの具体的な流れやユーザーフローが不明確な中、どこから改善したらいいのかがまったく分からない状況でした。何人かの社員に聞いても、縦割り組織の分業体制のため全体を網羅して把握している人はいません。だったら自分で調べてみようということで、いろいろな部署の人に会いに行き、どんなことをしているかを詳しくヒアリングしていきました」

そこで藤川氏は、各部署のヒアリングで仕入れた情報をもとに、多岐に渡る社内の業務プロセスを理解するため、「カスタマージャーニーマップ」を作成。

「最初は、中途入社の社員が何をやっているのか、少し煙たがられたこともありました。しかし、少しずつ情報を集めて、それを図示して各部署をつないでいくと、逆に周りの社員から『どこが知りたいの?』と声をかけてもらえるようになりました」

多数のヒアリングによって完成したカスタマージャーニーマップにより、はじめて同社のマーケティングプロセスの全貌が目に見える形になったのだ。

マーケティングの全体像は見えたものの、いまだ課題は山積み状態。問題が大きく顕在化したのが、2020年からのコロナ禍だった。それにより、同社の人材事業にも大きな変化が起きる。「特に緊急事態宣言が出た20年4月には、求人サイトのPV数は前年同月比で22倍にまで急上昇しました」

求人サイトへのアクセスが増え、会員登録者数も跳ね上がった。だが、最終的に就業に至る人は横ばいだったという。新型コロナウイルス感染症の影響で企業の求人案件が一時的に減少したことや、職を求める非IT分野からの転職希望者の登録が急増したことにより、求人の内容とミスマッチが起きていたのだ。

「この問題に対し、マーケターとして自分ができることは何だろうと、ユーザー行動のインサイトを可視化することから始めました。ユーザーの状況を的確に理解することで、ミスマッチが改善するだろうと考えたのです」

オリジナルIDで、一気通貫の可視化を実現

また、藤川氏は行動データの可視化によって、ユーザーと求人のマッチングを向上させると同時に、広告の貢献度評価も見直したいと考えていた。

「まずは広告によって、どれだけ就業に結びついているかを見ることが重要でした。そこでAdobe Marketo Engageと、広告効果測定ツールのADEBiS(アドエビス)と連携させて、実際にどの広告が貢献しているかを可視化できればと考えました」

だが、実現には課題があったと藤川氏は言う。そもそもとしてAdobe Marketo EngageとADEBiSを連携させるための、共通IDが存在しなかったのだ。そこで「なければ作る」という発想で、社内のエンジニアに協力してもらい、「Marketo Forms 2.0 API」を活用することで、固有のIDを自動生成し、連携させることに成功。

「Marketo Forms 2.0 API」を活用し、オリジナルIDを生成
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このIDの統合によって確認できた広告の貢献度は、驚くべき結果が出たという。「広告のコンバージョンやCVRと就業率は、まったく相関性がないということが分かりました。コンバージョンが圧倒的に高かった広告が、じつはそこからのリードタイムが非常に長く、就業にあまり結びついていなかったのです。逆に、コンバージョンは低い広告でも、リードタイムが短く、確実に就業に結びついていることが判明しました」と藤川氏は語る。

それにより、従来は最もコンバージョンの高い広告に多くの広告費を投下していたが、広告貢献度に応じた予算配分を見直すことができたのだ。

また、最もコンバージョンが高い広告からの流入は、既存の会員が非常に多いということも分かった。そこで、配信条件から既存会員を外すことで、広告予算を効率的に使いつつ、既存会員にはAdobe Marketo Engageメールの活用で、サイトへの誘導を強化する施策を実施した。

求職者と求人とマッチング率が6倍に

流入してきたユーザーの各タッチポイントでの改善は、マーケティング部門だけですべて実行するのは難しい。そこで藤川氏は、カスタマージャーニーマップ作りで社内を回ったときに築いた人脈を生かし、現場でAdobe Marketo Engageを使った施策も同時に進行中だという。

「最初は初心者でも始めやすく、短期間で効果がみえるメールのABテストから試してもらいました。これまでは経験と勘に頼ってメールの件名や文言を決めていた人も、数字で効果が可視化されることで、具体的な改善につながりましたね」

こうした取り組みの結果、求職者と求人のマッチング率が、従来の6倍に向上。

また、プラスアルファの成果として、IT未経験者が会員登録した際の対応も改善したと藤川氏。「Adobe Marketo Engageの条件分岐を使い、IT未経験者の登録時に当社の教育プログラムへ(ITエンジニアへの育成プログラム)の誘導を自動的に行うことで、社内リソースを大幅に低減することができました」

同社のAdobe Marketo Engage活用は、今後も拡大していくと、藤川氏は話す。

「今後はB2Bの分野でも活用したいと考えています。他にも、当社のオウンドメディアでのAdobe Marketo Engage活用によるナーチャリングや、エンジニア採用と法人ビジネスへの受注にも繋げていく計画です」

同社のマーケティングオートメーション(MA)基盤として動き出したAdobe Marketo Engageに対し、藤川氏は「Adobe Marketo Engageのよさは、外部システムとの連携が容易な拡張性の高さと、細かい条件分岐ができる柔軟な機能性にあります。また、サポートやコミュニティも非常に充実していますので、これらの利点が今後利用を拡大していく際にも、非常に助けになると考えています」と評価。

藤川氏が自ら作ったカスタマージャーニーマップと、Adobe Marketo Engageという高機能ツールを手がかりに、同社のMAは今後も発展していくことだろう。

2021年12月2日 現在

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