クラウドソーシングに対する多様なニーズを反映したシナリオ改善で、案件化率&業務効率アップを実現

国を挙げての「働き方改革」「地方創生」推進などの動きに先駆け、ネットを通じて"働き方の変革"に取り組んできた企業が注目を集めています。日本初・日本最大級のクラウドソーシングサービス「ランサーズ」を運営するランサーズ株式会社です。

ビジョンはズバリ「テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる」。

仕事を「依頼したい」「受注したい」企業・個人間をつなぐプラットフォーム事業をはじめ、「ランサーズ」に登録しているフリーランスとの協働を通じたコンテンツ制作、さらにはMarketoも協業するデジタルマーケティング支援事業なども実施。

企業の経営課題の解決と、同社が言うところの「ランサー(フリーランス)」のエンパワーメントに取り組んでいます。

2008年に創業後、仕事の依頼者、全国各地のフリーランスの登録者も急増。「ランサーズ」上で実現した案件依頼総額が1150億円(2017年4月現在)を突破するなど、順調に成長を遂げています。

今回は、Marketo運用を担当するマーケティング部のマネジャー・大島 彰紘氏、同部・坪井 聡氏に、Marketo導入の経緯、その運用スタイル、成果についてうかがいました。

クラウドソーシングに慣れていないユーザーの離脱をいかに防ぎ、サポートするか

同社がMarketoを導入したのは15年10月のこと。その際の課題は、仕事の依頼者サイドのアクティブ化が目的だったといいます。

「クラウドソーシングに興味を持っていただいた後、一定期間内に依頼をしないと休眠顧客となってしまう可能性が高まる、"熱が冷めやすい"という課題がありました。仕事の受発注を活性化するためにも、ユーザーの温度感の高い間にナーチャリング、リード醸成をすることが課題となっていたのです」と坪井氏。

具体的には、登録直後のアクションに応じた定型メールを送る、いわゆるステップメールを送信。さらに属性情報、行動情報でスコアリングし、優先度をつけながら、発注意欲が高そうなリードに対しては架電対応などを実施します。

しかし、一定の効果は得られたものの、新たな問題意識が浮上。

そもそも、登録後、アクションを起こしていない人にとって、何がボトルネックになっているのか。あるいは、サービスラインナップが複雑化する中で、クライアントのニーズ・課題に対して、適切なソリューションを提供できているのか。

「クラウドソーシングに対する依頼者のニーズ、目的の可視化ができていないのではないか。Marketoのポテンシャルを生かし、もう少し踏み込んだ分析、施策が実施したいという思いもあり、改めてシナリオの大前提となる、依頼者の行動、ニーズの洗い出しからスタートしました」(大島氏)。

こうして16年11月から、サイト内でのアンケート調査、Web上やリードへのメールに関するアクティビティログの詳細な分析、解析などを実践。

そこから浮かび上がってきたのは、"仕事の依頼者のクラウドソーシングに求めるモノ、課題解決に向けてのニーズに対して、適切な情報提供ができていないため、登録後休眠化する人が多い可能性がある"という仮説でした。

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同社のビジネスモデルは大きく2つ。1つが、「ランサーズ」を始めとする仕事の依頼者と受注者がネット上で契約、発注、受注、納品まで完結するプラットフォーム型ビジネス。もう1つが大規模な案件を依頼したい法人などのニーズに応じ、同社コンサルタントがさまざまなサポートを実施するソリューション型ビジネスになります。

特に前者のクラウドソーシングについてはシンプルな仕組みのようですが、依頼したい仕事内容だけを考えても、Web制作、アプリ制作、ロゴデザイン、ライティング、翻訳など全141の仕事のカテゴリがあり、個々のカテゴリにおいても依頼したい内容は多岐に渡ります。

また、なぜその仕事を依頼したいのか。販促目的なのか。集客したいのか。コスト削減が第一なのか。あるいは、自分自身の業務負担軽減のためなのか。こうした仕事内容や目的によって、マッチングすべき人材は異なり、ランサーからのアウトプットへの期待によっても、コンペ方式やプロジェクト方式といった適した発注スタイルが変わってきます。

さらに、特にクラウドソーシングに慣れていないユーザーにとって、ネット上で仕事の受発注をすべて完結するのは意外にハードルが高いもの。

そういったユーザーが離脱することなく、いかに具体的なアクションに導くことができるか。クラウドソーシングと一口にいっても、課題解決に向けてのプロセスは十人十色。必要とされるコミュニケーション、サポートも変わってきます。

つまり、Web上でやりとりをするクラウドソーシングだからこそ、発注から納品まで無事にたどり着き、依頼者、受注者双方の満足度向上を実現するには、個々のニーズに合わせた細やかな対応・サポートが必要となる。

よって、一様なメールアクションではなく、One to Oneのコミュニケーションを目指し、「依頼者ごとに異なるボトルネック、ニーズを踏まえ、より細かいセグメントに基づくシナリオの見直しに着手しました」(大島氏)。

多種多様な仕事カテゴリにわたるニーズを精査。ニーズに合わせたシナリオメールでリード醸成

まずは、ホームページ制作、アプリやシステム開発、ロゴやイラスト作成、ライティング、タスク・作業など、多種多様な成果物のニーズをもつクライアントのペルソナを細かく設計。依頼したい仕事の内容や、自身のスキルも様々なクライアントがいるからこそ、各カテゴリには「仕事を依頼する上でつまづきやすいポイント」が異なります。

それら、依頼内容やその範囲、目的などの諸条件、細かいニーズの掛け合わせからシナリオを作成。「ネット上で受発注まで完結できる」「依頼は自分でできるが、フリーランスの探し方をサポートしてほしい」といったさまざまなニーズに向け、「プラットフォームの使い方」「マッチングサービス提供のご案内」「活用事例集」といった、適切なサービスの紹介や、活用方法などを伝えるコンテンツを新たに制作。各種コンテンツとの接触に応じて、クライアントのニーズを把握し、同社との関係構築について提示するシナリオメールの送信を実施しました。

ソリューション型サービスへのニーズが高そうな法人ユーザー、あるいはそもそものニーズが明確化していないユーザーに対しては、インサイドセールス担当が架電で対応するなど、ダイレクトなコミュニケーションも活用。ユーザーが欲しい情報とサービスの提供をスタートします。

こうして、シナリオの見直しに約4カ月費やし、17年2月から施策を実行。「サイトを訪問するユーザーのポテンシャル、それに対するアクションへのレスポンスが可視化され、定量的に分析できる地盤ができた」と坪井氏。すでに成果も見え始めているといいます。

シナリオ見直しで、10~15%案件化率がアップ。業務工数も30~50%削減

具体的な成果として、一つが登録ユーザー(依頼者)からの依頼転換率のアップ。「Marketoのシナリオに接触したユーザーと、そうでないユーザーを比較すると、平均10~15%案件化率が上昇。さらに、広告経由で訪問してきたユーザーについても、自然流入のユーザーと同程度の案件化、ROI向上の効果が出始めています」(坪井氏)。

二つ目に、業務工数の削減、効率アップが挙げられます。

シナリオの見直しにより、大量のコンテンツ作成業務、およびそれぞれに適したランディングページ(LP)作成業務が発生したものの、多様なランサーの協力やMarketo内のテンプレートの活用により、スピーディーな作成と横展開が実現。

さらに、ユーザーの反応に合わせてLPの改修や、ダウンロード資料などコンテンツの見直しについても、スピード感を持ってPDCAを回せるようになりました。

「当社の場合、比較的、さまざまなマーケティング業務に関する権限が付与されていることもあり、Marketoの活用で、従来エンジニアに依頼していた実装も、部署内で完結できるようになりました」と大島氏。

LPだけを見ても、「承認から実装まで、平均3~4週間かかっていたのが、1~2週間で完了するなど、肌感覚値で30~50%ぐらいは工数の削減をはかることができました」(坪井氏)。

このような効率化の背景には、縦割り構造となっていた組織体制の見直しがありました。それまで個々のサービスごとに施策を実施していたものを、全て「Lancersへ訪れたお客様」と捉えることで、サービスの垣根を超えて顧客中心のサービスを提供できる組織にしたという。

「従来はプラットフォーム型、ソリューション型の個々のサービスごとに施策を実施していたのが、社内のエンジニアの声を聞きながらサイト内の依頼の仕組みやフォームも変更するなど、全社横断的に顧客視点で情報設計の見直し、Marketoを活用して適切な情報提供を実施するベースができたのは、次につながる成果といえます」と語る2人。

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今後の課題としては、仕事の受注サイドの行動・ニーズの可視化による改善、現在使っているSFAとMarketoの連携などを挙げつつ、「マーケティング施策で深堀りできたユーザーのニーズを、サービスやプロダクトに生かしていきたい」と大島氏。

政府の進める働き方改革について、会社員の兼業・副業支援の指針も打ち出されたこともあり、自由な働き方を模索する層がさらに増加していくことも期待されます。新たなワークスタイルを提示するフロントランナーとしての同社が社会に果たす役割、その注目度もさらに高まっていきそうです。

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