GLナビゲーション

GLナビゲーション

営業組織の再現性とスケールを重視。小規模組織でもMA活用して最速で成果を上げる

GLナビゲーションは2009年創業。人材教育サービスで起業し、現在はBtoB領域のITコンサルティングとBPOサービスが売上の9割以上を占める。

同社の代表取締役を務める神田滋宣氏は、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない大きな要因は、業務プロセスを変えられないことにあると考えている。同社は、企業にコンサルタントを派遣し、課題を抽出した上でBPOの形でいったん業務をまるごと引き受け、最新のデジタルツールを使ったプロセス変革を含めた効率化を行う。

企業側は、GLナビゲーションによる変革後の業務を自社に再度取り込むことで、真のDXを実現できるという。「従来はDXやITの要員をベンダー側から派遣しても、その人が企業側に転籍するというキャリアパスは用意されていませんでした。当社はその壁を壊して、優秀な技術者を企業に提案できる仕組みも構築しました」と神田氏は語る。

同社では、このサービスを企業に紹介し、常駐派遣の案件を「プロジェクト」として獲得するための法人営業を行ってきた。手元には既存の顧客企業のリストが100社ほどあり、そのリストに対してGmailからメールを手動で一斉送信しながら、架電による「ご用伺い」の営業、新規についてはリストを上から電話営業する方法を取っていた。

だが、20年3月のCOVID-19感染拡大の影響を受けて、企業ニーズは激減、事業部売上が50%以上低下する中、いかに企業ニーズを効率良く発掘し、限りある営業リソースを優良顧客に集中できるかが、急務の課題となっていた。相手がどれだけ興味を持っているか分からない中、1人の営業担当者がマンパワーでこなせる件数にも限界があったのだ。

この状況を変え、人に依存しない生産性の高い営業組織を構築したいと考えた神田氏は、MA(マーケティングオートメーション)の導入を検討する。

あるべき営業組織の形を考え、それに最適なツールを選定

神田氏の頭の中では、営業組織強化の目的は明確に整理できていた。1つ目は、顧客データを一元管理した業務の効率化。例えば、様々な営業・マーケティングツールと連携した顧客データベースを構築し、手動で送っていた日々のメール業務の自動化などを図っていくことだ。

2つ目は、受注確度の高い見込み顧客の優先順位付けを明確にした業務フローの構築。そして3つ目が、分業体制を組み、組織のオペレーションを改善することで、案件数が増加しても人数を増やすことなく対応できるレバレッジの効いた営業活動を実践することだ。

この考えは、同社が過去にSFA導入で失敗したときの反省に基づいて生まれたものだという。

「前回のSFA導入では、自分たちの業務を効率化するためには、どんなツールがいいかという視点に立っていました。そのため、欲しい機能はしっかり吟味したものの、結局は業務にツールを合わせ込むことが難しく、解約することになりました。本来は、使うツールに合わせて業務の方を変えなければいけませんでした」(神田氏)

そこで今回のマーケティングツール導入では、まず自社の目指すべき営業組織はどうあるべきか、真剣に考えるところから始めた。

20年の1月頃から具体的にツールの検討を始めたが、いくつかのベンダーと話をしてみると、神田氏の考え方に一番合っていたのはMarketo Engageだったという。「MAを入れるにはどういう営業組織にして、どう役割分担をすればいいのかを担当の方が一緒に考えてくれました。ご提案いただいた『Marketo Engageが考えるベストプラクティス』が、我々の向かいたい方向とぴったり合っており、これを実現したいと思いました」(神田氏)。

Marketo Engageを選んだ理由は機能面にもある。同社は他の業務アプリケーションとのサービス連携に力を入れており、今回も連携できることは必要条件だった。SaaSで提供される他のマーケティングツールでは難しいものもある中、Marketo Engageは開発不要で管理画面の操作のみでスムーズに連携できることを評価した。

構築とプランニングの両軸でベストプラクティスを取り入れ、初速から最高速度で導入スタート

20年3月にはMarketo Engageの導入を決定し、5月から構築を開始。

だが、導入には課題が1つあった。それは、導入の専任担当者を置けなかったことだ。「専任が必要ということは理解していたのですが、当社の少ない社員数では難しく、既存の営業メンバーの0.2人月の工数で、初期導入せざるを得ませんでした」(神田氏)。

この体制で、Marketo Engageの導入を進めるべく、同社ではアドビ社内にあるノウハウを最大限活用して初期導入のスピードを加速した。ポイントは、Marketo Engageの操作や設定などの構築側と、営業現場の課題に合わせて施策を考案するプランニング側で、相談窓口を分担したことだ。「構築側に対しては、アドビ社から紹介されたベンダーとのディスカッションを通じて、必要な機能に対して適切な実装方法を遠隔でアドバイスしてもらい、プランニング側では、Marketo Engageを活用して、最速で顧客を成約に持っていくにはどうすればいいかをアドビの営業・カスタマーサクセス担当の方と一緒に考えてもらいました」(神田氏)。

ゼロからのスタートではなく、Marketo Engageのベストプラクティスをベースに初期導入を行うことで、少人数の内部体制でも、問題点を潰しながらスピーディーに進めることができた。そして、20年7月にMarketo Engageを中心としたマーケティングシステムの本格運用を開始した。

「週1回、ボードメンバーを含めた会議で課題を検討し、ツールの機能追加が必要であれば、それを構築側のベンダーと相談していきます」と、同社アカウントエグゼクティブの濱野康太氏は語る。

誰もがデータドリブンな組織営業を実施、営業効率は4倍以上に改善し、売上は3倍に

同社のインサイドセールスは、Marketo Engage導入で次のように変わった。

まず、顧客を一斉メールの反応やこれまでの成約状況から、3階層に分類した。最上位のTier1には直接電話をかけて詳細に商談を進め、逆にメールの一斉送信対象からは外す。Tier2はスコアが上位の企業から順に電話で当たっていき、面談まで進める企業を増やしていく。そしてTier3(潜在層)に対しては、関係を保つためにメールによる定期的なコミュニケーションを続ける。Marketo Engageによるスコアと過去の取引実績を掛け合わせ、さらに詳細に顧客を数値化してアプローチの精度を高めていった。

それと並行して、営業の役割分担、業務フローも見直した。「従来は、営業担当が一斉メールの手配や電話による状況確認から、最重要のTier1顧客との関係構築まですべてを担当しなければいけませんでした。Marketo Engageの導入で顧客の分類が進んだことで、新規顧客の獲得はアルバイトのスタッフが担当し、受注確度が高いリードが発掘できれば、社員の営業担当が引き取ってクロージングまで持っていく体制に変更できました」(濱野氏)。

また同社は、新規顧客獲得のためのアウトバウンド業務の目標値をメールアドレスの取得数に設定。MAで効率的にナーチャリングができるようになったからこそ、やみくもにアポイントを取りに行くのではなく、まずはメールで情報を案内して、スコアが上がればアポイントを取りに行くという仕組みが構築できたという。

業務効率化のため、Marketo EngageとGoogleスプレッドシートやGmail、Slackなど、様々なツールとの連携も進んでいる。顧客にコンサルタントを提案するメールを送り、経歴のリンクをクリックした人が現れると、どの企業がどのコンサルタントをチェックしたかという情報が、Slack上でインサイドセールスにリアルタイムで通知される。それを見てすぐに電話をかけることで、採用に課題を抱えている顧客にダイレクトにアプローチでき、電話がつながったその場で商談に入ることもできるようになった。また受注確度が高い、高確度な企業属性を分析し、同様の属性を持った顧客にも優先的にアプローチすることで、営業の確度を上げることにも成功した。

営業担当者は、日々更新される顧客の行動と属性のスコアを見て、電話をかける相手を決める。客観的なデータに基づく効率的な営業組織が動き出した。

「スプレッドシートに情報を記載するだけで、Marketo Engage上に自動で新規リードの登録や顧客プロファイルの更新がされたり、Gmailから送るメールの履歴を自動で蓄積、またメールテンプレートをボタン1つで呼び出せるため、従来行っていたコピペなどの作業がなくなったので、作業時間が劇的に短くなったのと同時にミスも減りました。また、最適な顧客に最適なタイミングでアプローチが取れているため、電話営業の確度が大きく向上しました。営業のKPIは、母数となるメール送信数からの面談数、それに対するアサイン(成約)数などを設定していますが、すべてについて数値が大幅に改善しています」と、同社アカウントエグゼクティブの新山恒平氏は語る。

また、同社はメールナーチャリングのコンテンツはテキストベースのシンプルなものを使用。まずは、コンテンツの制作工数をかけることなく、100パターン以上のコンテンツを量産し、A/Bテストを繰り返しながらナーチャリングと絡めた施策実行と効果検証を行っている。

Marketo Engageを本格的に活用し始めた20年7月から、すぐに効果は表れた。前月と比べて新規アサイン(成約)数は4倍、面談数はなんと8.2倍となり、アプローチできる新規リード数も2.1倍に増加。それ以降も、PDCAを回すたびに営業のKPIは改善しているという。

「属人的な営業からデータドリブンな営業に変わって効率が良くなっただけでなく、それを誰もができるようになったことが、大きな進化です」(新山氏)

小さな企業だからこそデータドリブンな組織になるべき

この「データに基づいて営業活動をすれば、誰でも同じ結果が得られる」という組織が、神田氏が目指した改革の目的に他ならない。「経営の視点からすると、再現性があることが非常に重要です。かつては自分というトップセールスが動いて売上を積み上げてきました。現在は優秀な若手も入ってきています。しかし、いつまでも属人的な力に頼っていては、企業は成長できません。Marketo Engageによって仕組みを作り、分業することで、営業プロセスをスケールさせるイメージが持てたことが大きいと思います」(神田氏)。

同時に神田氏は、小規模の企業でもMarketo EngageのようなMAツールを積極的に活用すべきだと主張する。

「専任担当者を置くリソースや社内にナレッジがなくても、ツールベンダーが保有している専門知識やノウハウを初期段階から取り入れることで対応できます。また、当社のリード数は当初、約100件からスタートしました。Marketo Engageは大量のリードを自動処理するイメージを持っている人も多いと思いますが、リード数に関係なく、データドリブンな生産性の高い営業組織を構築する上でインフラ的な役割を担う必須のテクノロジーです」(神田氏)

同社のリード数は、導入半年で100件からおよそ600件に拡大しており、売上高は昨年対比で1.6倍、今期は300%以上の増加見込みで推移している。法人営業の成功を受け、今後は、人材採用の部分でもMarketo Engageを本格的に活用していく。拡大したプロジェクトのニーズに対応する人材の確保を進めていく計画だ。

さらに、新しい事業も動き出している。同社執行役員の新倉佳樹氏は、「今回当社がMarketo Engageで構築したインサイドセールスのノウハウを、BPOサービスとして切り出して、他社にも提供していきたいと考えています」と話す。

小規模な企業にありがちなハイパフォーマー頼みの営業から、データに基づく組織営業へと変貌を遂げたGLナビゲーション。今後の躍進へ、道筋が見えてきた。

コロナ禍で顧客接点を失い、営業組織の立て直しが急務の中堅中小企業は非常に多い。GLナビゲーションの営業改革は、そうした企業にもヒントを与え、勇気付ける事例である。

取材日:2021年1月14日

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