ジオコード

デマンドセンター構想の下、全社横断でマーケティングを推進

株式会社ジオコード
オーガニックマーケティング運用部 部長
渡辺友馬氏

webマーケティング事業と独自の営業管理ツール「ネクストSFA」を核とするクラウドセールステック事業の2本柱で、顧客企業の集客から受注までを1社完結でサポートする株式会社ジオコード。幅広い業種業界の顧客の支持を得て、2020年には東証JASDAQ市場上場、16期連続増収を達成している。

同社では、さらなる成長と幅広い顧客へのサポートを実現すべく、20年1月よりwebマーケティング事業のてこ入れに着手。同年3月にはAdobe Marketo Engageを導入し、チームで様々な課題解決に取り組んだチャレンジと実績が評価され、「2021 Marketo Engage Champion」の「Marketing Team of the Year」も受賞した。

今回は、当初のチームビルディングからリーダーとして同社のマーケティング活動をけん引してきたオーガニックマーケティング運用部 部長の渡辺友馬氏に具体的な施策や成果について語ってもらった。

自社製品のSFAとの連携を前提にMAリプレースを決断

実は19年12月末に当時のマーケティング課 課長に就任するまで、「マーケティングの知識はほぼゼロの状態でした」と意外な事実を明かす渡辺氏。デザイナーとして入社し、様々なキャリアを積む中でwebマーケティングに関わってはいたものの、マーケターとしてはビギナーだった。「先入観がない分、『まずはマーケティング活動とは何なのか』という原点から突き詰めて考え、自分たちが大事にするべきバリューの設定や共有を図り、その指針に基づき直面している課題の洗い出しから推進しました」(渡辺氏)。

当時の最大の課題は、メインの仕事が目の前の問い合わせ対応になっていたこと。渡辺氏によると自社、競合、市場の分析もされていない状況だったという。さらに、「オウンドメディアのアクセスが1カ月で約100PVしかない」「導入したABM(Account Based Marketing)のツールを使いこなせていない」「既存のMA(マーケティングオートメーション)がメール配信ツールと化している」といった課題も踏まえ、業務サイクルの見直しや、webサイトの更新/改善にも順次、着手していったという。

さらに、マーケティング施策の基盤となるMAのリプレースも検討。活用できていないABMツールや成果が出ていないツール、広告施策などもいったん停止し、予算を環境整備に投入した。「当社の『ネクストSFA』との連携を大前提に拡張性、さらに問い合わせがあった際などのデータ通知の即時性などが決め手となり、Adobe Marketo Engage1択で上層部を説得し、導入に踏み切りました」と渡辺氏。

20年3月の導入から3カ月ほどは、旧MAからのデータ移行といった初期設定作業に追われ、操作性に慣れるまでに苦労したというが、徐々にレポートの配信、webセミナー開催、ステップメール配信などの施策を実践。

オプトインの問題から過去の約1万リード凍結を強いられるなどの苦難も乗り越え、8月にはHOTリード100件を創出させた。コロナ禍で在宅を強いられたのを契機に全社員でコンテンツを書きため、オウンドメディアの1日のアクセス数が140倍になるなど一定の成果を達成。これらスモールステップを経て、9月から本格的な施策に着手したという。

リード創出、育成、選別、データ分析の仕組みを構築

1つ目の取り組みが「webサイトのリニューアル」だ。サイト更新/改善によるCV率の頭打ちを見て、資料ダウンロードを充実化するためのCMSを構築。サイトからの問い合わせを2段階にし、アンケート形式で問い合わせの背景や現状の課題について記述してもらう「2ndフォーム」を設定するなどの工夫も凝らし、フィールドの営業チームからも"一歩踏み込んだ提案ができる"と好評価を得るに至る。

2つ目が「インサイドセールス(IS)の立ち上げ」。前述したようにHOTリードの急増により、フィールドの営業チームからも要請を受け、21年2月よりチームを発足。「社内のトップセールスの実績を持つ役員からの直接指導を経て、多くて月20~30件、ISだけで商談見込みを創出し、商談数も半期の昨対比で約1.3倍になりました」と渡辺氏。

3つ目が「デマンドセンターの仕組みの構築」だ。これは商談創出に向けた全社的取り組みを概念化した構想で、「リードジェネレーション」「リードナーチャリング」、確度が高いMQLを創出する「リードクオリフィケーション」、全データの分析/構築を担う「データマネジメント」の4ステップの流れや、失注した際の再ナーチャリングなどお互いのフィードバックの仕組みも構築。「マーケティングチームだけでなく、各事業部門の営業やコンサルタントなども巻き込み、現在進行形で好循環なサイクルの強化を推進しています」と渡辺氏は話す。後述するように、フィールドセールス部門での理解、連携については形になりつつあるという。

データクレンジングの徹底でシステム連携を強化

こうした基盤作り、具体的な施策を進めていく中で、さらに新たに噴出してきた3つの"壁"の解消や解決にもチャレンジしていく。1つ目の壁が各ツールのデータのクレンジングの問題だ。同社ではかねてから懸案事項となっていた商談情報とリード情報の自動登録を実現すべく、Adobe Marketo Engageと「ネクストSFA」の連携を20年12月にスタート。

だが、いざ連携作業に着手したところ、SFA内の大量の重複企業や不正確な入力情報などの問題が明らかとなる。そこでデータクレンジングに着手。企業情報(LBC)統合ソリューションを導入するとともに、手作業で情報を付与。これまで営業が個々で入力していた作業を、企業データに関するものはマーケティングチームで引き取るなどの仕組みも構築した。

こうして企業データの問題をクリアにしたところで、Adobe Marketo EngageとChatWork、スプレッドシート(Google Apps Script)、名刺管理ツール(Sansan)との連携も推進(図表)。「リードに動きがあった際にChatWorkで営業メンバーに通知を飛ばすことで、レスポンスのスピードが大幅にアップしました」と渡辺氏。問い合わせから30分以内にコールすることをルール化するなど、システム連携による施策の精度アップを進めている。

2つ目の壁がマーケティングと営業の役割分担のルール化、効率化の問題。同社は従来、営業マンがテレアポで顧客を開拓していく、いわば"古典的"な手法を主軸に事業を拡大。だが、購買行動の変容にコロナ禍も加わり、変革への取り組みが喫緊の課題となっていたという。

そこで、これまでフィールドの営業が自由かつ優先的に見込み顧客にアプローチしていたスタイルから、エリアに関係なくISが最優先で動けるようにルールを整備。さらに、SFAへの入力についても、抜け、モレ、ダブリがあった商談やアプローチのフェーズをマーケティングチームで管理。オプトインの有無を必ず残すことなどもルール化した。

3つ目の壁が、部門横断的なフィードバックやPDCAの仕組みの不足だ。解決策として、先に挙げたSFAとAdobe Marketo Engageの連携による行動ログの可視化や、チャット連携によるリードの即時通知といった情報の即時可視化を推進。SFAの入力法の改善を踏まえた情報や履歴の共有による部門横断的なフィードバックの可視化も実現している。

既存の顧客のフォローアップに向けた施策も構想

一連の取り組みにより、定量的な成果として見込み顧客の創出、案件数、商談数も前年比でほぼ倍を達成。定性的な成果として、「営業組織のリーダーや上層部がマーケティングの重要性を認知し、掲げる"デマンドセンター"への理解が進んできたのも大きいですね」と語る。

同社のマーケティング活動が、"問い合わせ対応"から劇的に進化し、短期間で具体的な成果達成を実現した秘訣は何なのか。渡辺氏は「まずは動いてみて、小さなステップを踏み、PDR(プレップ、ドゥ、レビュー)ぐらいのスピード感で準備、実行、検証を重ねていくことが大事ではないでしょうか」と指摘。さらにあらかじめ仮説を複数立て、壁にぶつかって方向転換を迫られた際にも決して後退はせず、必ず前に進むこともポイントだという。

また、部門横断的な取り組みを進める上では、「他部署のリーダーとまめにコミュニケーションを取ることが大前提となります」(渡辺氏)。形式ばったミーティングより、ちょっとした隙間時間を見計らってキーマンに声を掛け、雑談ベースで情報や意見を拾い上げていくことがコツだという。ツール導入などで上層部に稟議を通す際にも、「普段からいかに話しやすい空気を作っておくかが肝要です」と語る。

今後の目標としては、「新規獲得だけでなく、既存のお客様へのフォローアップを実践し、アップセルやクロスセルにもつなげていきたいですね」と渡辺氏。その実現のために、マーケティングチームや営業部門だけでなく、web制作やコンテンツ制作などに関わるクリエイターチームの作業の可視化、データ化も進め、ボトルネックの洗い出しを実践。その前提となる全体の業務フローやサービス設計の可視化や改善についても、他部門のリーダーと連携し、着手していきたいと語る。

全社でマーケティングに取り組む"デマンドセンター"の理想形を実現するために着々と取り組みを進めていく同社。今後の新たなチャレンジにも注目したい。

取材日:2021年9月10日

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