マーケティング入門

2021.05.28

知っておきたいカスタマーサクセスの基礎知識

「カスタマーサクセス」という言葉は、ビジネスパーソンのあいだでもまだあまり認知はされていません。しかし、外資系企業やIT企業、特に今成長しているサブスクリプションモデルのサービスを提供する企業では導入が進み、既に重要な概念となっています。
ここでは、今後、さまざまな事業のビジネスにおいて重要性が高まっていく、カスタマーサクセスの基礎知識をご紹介します。

目次

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスという言葉は、企業理念やミッションなどで「顧客に与えたい価値」として使われることがあります。しかし、ここでご紹介するのは、あくまで企業の活動や職種としての意味合いのものです。

具体的に「カスタマーサクセス部門」という部署を例に、その役割をご説明しましょう。企業の営業部門が、ある商品を顧客に販売したとします。カスタマーサクセス部門の業務はここからです。「商品を販売して終わり」ではなく、販売後も顧客へのアプローチを継続し、その顧客が商品を使って期待する成果を上げるまで積極的に関与して顧客満足度を高めていくことが、カスタマーサクセス部門の役割であり、カスタマーサクセスという行為なのです。

カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスが注目されるようになった背景

近年、日本でカスタマーサクセスが重視されている背景には、サブスクリプションモデルの台頭をはじめとしたビジネス環境の変化が挙げられます。主な要因をピックアップしてご紹介しましょう。

サブスクリプションモデルの台頭

近年では、サブスクリプションモデルが浸透し、初期費用が少なく、必要な期間だけ利用できるサービスが支持されています。例えば、かつては買い切りで永続的に使用できたパソコンソフトが、現在では月ごとに利用料を支払って、一定期間のライセンスを購入するサービスに変わっています。

また、追加オプションや、利用可能な機能に応じた段階的なプランを設けるサブスクリプションモデル、無料版から有料版への誘導を行うフリーミアムモデルなど、手軽さでユーザーを獲得し、アップセルを図るビジネスモデルも浸透しています。

そのため、「所有から利用へ」の流れの中で、企業は商品・サービスの購入後も顧客に継続的なアプローチを行い、顧客満足を高めていく必要が生じています。

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グローバル市場における差別化

今や、国内のニーズに合わせた新しい商品・サービスを開発しても、海外ではすでに同様の商品・サービスが存在していたり、国内ではまねができなくても、海外のインフラやノウハウを活用することで即座にまねされてしまったりします。市場のグローバル化に伴い、先行者メリットは得られても、機能や技術の優位性は長続きしません。

そのため、保守やメンテナンス、導入サポートなどのアフターサービスの充実に加え、カスタマーサクセスによって社会的にインパクトの強い成功事例を生み出し、安心感と信頼感を高めて差別化することが重要視されています。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは?

カスタマーサクセスと似た言葉に、「カスタマーサポート」があります。こちらのほうが多くの方にとって聞きなじみのある言葉ではないでしょうか。
両者には、まず前提として以下のような違いがあります。

  • カスタマーサポート:受動的なサポート
  • カスタマーサクセス:能動的なサポート

また、両者のサービスが1つの会社の中で両立し、時に協力し合うことも重要なポイントです。それぞれの役割を分けて考えてみましょう。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの比較

カスタマーサポートの役割は「迅速な問題解決」

カスタマーサポートでは、顧客の困り事や相談は、顧客自身がみずからお問い合わせをすることが前提です。すべての顧客に対して窓口を設け、カスタマーサポート部門が一手に対応し、解決に向けた迅速かつ効率的なサポートを行うことが求められます。

カスタマーサクセスの役割は「顧客と自社の成長と成功」

一方、カスタマーサクセスの役割は、よりコンサルティングに近いものとなります。顧客が商品・サービスを購入して実現したかった計画の実現、ひいては事業の成長に向けて、ともに伴走していく取り組みです。そのため、顧客との関わりは中長期的であり、個々の顧客に合わせた商品・サービスの活用方法や事例紹介などを、積極的に提案していきます。

そうして、カスタマーサクセスが信頼関係を築きながら顧客を成功に導くことで、自社の成長につながる3つの恩恵が得られます。
まずひとつは、高い顧客満足を得ることでアップセルやクロスセルが期待でき、顧客のLTV(顧客生涯価値=顧客から生涯にわたって得られる利益)が高まること。次に、顧客と伴走したからこそ得られる具体的な活用事例は、開発部門にとってこのうえないフィードバックとなること。そして最後に、顧客との信頼関係があればこそ、セミナーへの登壇やウェブサイトへの導入事例の掲載など、マーケティング活動におけるアドボケーターとしての活用が期待できることです。

カスタマーサクセスのメリット

カスタマーサクセスは、顧客を獲得して売上につなげるだけの「ファネル型」のビジネスモデルから、顧客が私たちの売上を作り、商品・サービスを育て、次の顧客獲得のためのプロモーターにもなる効率的な「フライホイール型」のビジネスモデルに転換するために欠かせない取り組みなのです。

カスタマーサクセスの最大の目標はLTVの向上

カスタマーサクセスにおいて最も重要な目標は、顧客一人ひとりのLTVの向上です。しかし、ビジネスが成長するに従い、カスタマーサクセスは人力での対応では間に合わず、LTV向上が難しくなっていくことが課題となります。

カスタマーサクセスにおける役割は先に述べたとおり、顧客とともに伴走し、成功へ導くことです。その過程で信頼関係を深め、高い顧客満足を得ることで長期的な継続利用を実現し、さらに売上向上につながるアップセルやクロスセルを促すことで、顧客一人ひとりのLTVを高めていくことがカスタマーサポートの最大の目標となります。

実際に、カスタマーサクセスにおけるKPIの指標は企業によって異なりますが、「リテンションレート(継続率)」「クロスセル・アップセルの金額・件数」「ヘルススコア(顧客のサービス利用状況から今後の継続利用の可能性を数値化したもの)」など、LTVを構成する要素が採用される傾向があります。

カスタマーサクセスの指標

人力では越え難いLTV向上の障壁とは?

しかし、販売商品がサブスクリプションモデルのサービスなどの場合、カスタマーサクセスによるLTVの向上には、以下のようなことが障壁となります。

ひとつは、カスタマーサクセス部門の労力の限界です。サブスクリプションモデルでは、サービスの新規契約数を伸ばすことがビジネスの成長につながるため、積極的に新規獲得に取り組み、人材確保が追いつかないほどの急成長をすることも珍しくありません。そのため、カスタマーサクセスも担当する顧客数が増え、人力に頼るのでは十分な対応が困難になっていきます。

カスタマーサクセスの対応力不足は、解約の抑止にも大きく影響します。契約更新日が近づいた顧客をチェックして対策を打つやり方では、すでに手遅れになっていることも多く、LTVが途絶えてしまいます。

また、BtoBにおいては、顧客の担当者が異動・退職で変わった際に、前担当者に蓄積された知見やノウハウ、今後のサービスの活用計画がそのまま新担当者に引き継がれるとは限りません。それによってカスタマーサクセスがふりだしに戻ることも多いため、前担当者とのこれまでのやりとりの履歴や顧客情報を漏れなく管理できるプラットフォームを用意しておくことが欠かせません。

MAが実現するカスタマーサクセスへの効果

そうしたカスタマーサクセスにおける人力の限界を解消してくれるのがマーケティングオートメーション(MA)です。MAはデジタルマーケティングの自動化による新規獲得のための営業プロセスだけでなく、既存顧客の商品・サービスに対するエンゲージメントを継続的に管理することにも役立ちます。

MAが実現するカスタマーサクセスへの効果

顧客へのフォローを効率化

MAは、顧客の動向を常にトラッキング(追跡)し、そのとき顧客に必要なフォローや情報提供などのサポートを自動的に行ってくれます。例えば、サービスの使用方法に迷った顧客が自社のウェブサイトにアクセスしてヘルプページを閲覧しているとき、そのヘルプのカテゴリに合わせたフォローメールを送信し、より質の高いサポートを提案することができます。

また、自社が提供するウェブサービスの基幹システムとMAを連携させ、顧客のサービスへのログイン状況や利用している機能に応じてトリガーメールを発信するといった設定も、自由に行うことができます。

解約の予兆を察知できる

MAはつねに顧客をトラッキングできるため、サポートのみならず解約の兆候も素早く察知することができます。人力では顧客の状況確認に優先順位や順序をつける必要がありますが、MAであればすべての顧客の動向を常時、見守ることが可能です。
顧客ごとの動向や、カスタマーサクセスにおける活動履歴もすべて一元管理できるため、解約の予兆を発見したら素早く営業部門と顧客の現状をデータで共有し、訪問によるフォローアップや問題解決を行うことで不満を解消し、解約を未然に防ぐことが可能です。

マーケティングオートメーション入門ガイド

今さら人に聞けない!「マーケティングオートメーション」の特徴やメリット

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カスタマーサクセスの成功事例

広範囲な顧客の状態を可視化、テックタッチの取り組みに着手したHENNGE

「テクノロジーの解放で世の中を変えていく」をビジョンに、顧客企業の安全をサポートするHENNGE(へんげ)株式会社。クラウドサービスへのセキュアなアクセスとシングルサインオンを実現するID管理ソリューション「HENNGE One」を中心に、導入企業1600社以上、ユーザー約190万人を抱える同社の事例です。

比較的企業規模の大きな顧客が多い同社のカスタマーサクセスは、担当が個別で手厚くフォローするハイタッチの施策を実施することで低い解約率を維持していました。しかしながら、顧客数が増加するにつれ、より効率的に、多くの顧客とコミュニケーションを取る施策が必要となりました。そこで目を付けたのがMarketo Engageを活用したテックタッチの施策です。

カスタマーサクセス成功のためには顧客の状態(ヘルススコア)の把握が必須。同社も製品導入後企業にサーベイを送っていたものの開封率・クリック率・回答率が可視化されていない状態でした。そこで、Marketo Engageを活用し各項目の正確な数値を把握し、初回調査や2回目以降の状況伺いメールを自動で送信するシナリオを設計。回答されていない顧客に対してはリマインドメールやDMを郵送するなど、顧客ごとにパーソナライズされた打ち手によりメール開封率約20%、回答率5%強の向上に成功しました。

また、従来アナログな個別フォローを実施していた大規模企業に対しても利用促進ミーティングの提案をMarketo Engageにより自動化、継続的な接点を持つことによって常に顧客の状態を把握することができるようになったとのこと。今後のデジタルを取り入れたカスタマーサクセス施策にも注目です。

導入事例:HENNGE顧客の状況の可視化でカスタマーサクセスを実現

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複数の既存顧客向けシナリオを設計、ロイヤリティ向上を実現した弥生

会計ソフトをはじめとする業務ソフトウェアおよび関連サービスの開発・販売・サポートを行う弥生株式会社。今回は利用者シェアNo.1の個人事業主向けクラウド会計ソフト「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」の既存顧客向け施策にMarketo Engageを活用した事例です。

どちらの製品も最初は無償でサービス提供しているため、顧客の活用を促進し、翌年の更新時から有償に切り替えてもらうための施策が必要でした。そこで"既存顧客との関係強化"に狙いを定め、Marketo Engageを活用開始。契約更新→アップセル→他社推薦へのコンバージョンを目標にしました。

  1. 導入後支援メールの送信。契約後の日数をトリガーに、やって頂きたいことをまとめたステップメールを設計し、顧客がつまずきやすいポイントを網羅的にフォロー。
  2. アップセルを促すためのパーソナライズされたコンテンツの送信。製品A未利用の顧客にはAの紹介メール、Aを利用中の顧客には製品Bの紹介するようなメッセージの出し分けを実施。
  3. 顧客属性や行動データを基にアプローチ手法に傾斜をつける設計を実施。メール・紙のDM・電話といった複数チャネルを組み合わせて顧客をフォロー。

このような顧客に寄り添った施策を実施した結果、特定商材のアップグレード数は2.7倍に。また、ユーザーからはSNS上で喜びの声が上がるほどの成果が出たとのこと。「能動的なコミュニケーションの実施により他社推薦者になって頂く」という当初の目標を実現した同社のカスタマーサクセス事例です。

導入事例:弥生クラウド会計ソフト利用者シェアNo.1の弥生が語る、ロイヤリティを高める既存顧客向けマーケティング

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カスタマーサクセスの成功はMAの活用がカギ!

カスタマーサクセスは、ただ商品・サービスを販売して顧客任せの状態にするのではなく、顧客の成功と成長に責任を持って取り組んでいく活動です。そして、それが自社商品・サービスの差別化となり、成長と信頼に結びついて長期的な利益(LTV)を高めていくことにつながります。

スタートアップ企業における投資の獲得はもちろん、上場企業における株主の獲得においても事業継続性が問われる今、カスタマーサクセスへの対応は重要です。しかし、ユーザー数が増加すればするほど、人の手による対応は困難となっていきます。そこで、MAによってカスタマーサクセスを自動化することが、成功のカギとなるわけです。

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