今回は、マルケト本社ブログの中から、著者Matt Heinzの「How to Write a Marketing Budget Your CFO Will Enthusiastically Support(CFOから積極的に承認してもらえるマーケティング予算の立て方)」を取り上げます。(原文はこちら

ビジネスのグローバル化が進む中、最高〇〇責任者、いわゆるCxOと呼ばれる米国型の組織体系導入企業が増えており、財務においてもCFOという言葉を頻繁に耳にするようになりました。ただ、日本においては、経理部門や財務部門の責任者がCFOに該当する程度に限定されており、IRや管理会計の健全性の維持が主たる役割となっているのが現状です。一方の米国型組織体系におけるCFOは、事業の財務戦略の立案と執行そのものを推進するトップマネジメント担当者の一人であり、CEO(最高経営責任者)と同等の権限や役割を担っています。つまり、部門のトップであるだけでなく、経営戦略の意思決定に深く関与する存在なのです。ご自身の企業のマーケティング予算の稟議決裁者がCFOという肩書でないにしろ、決裁者に受け入れられやすい予算計画とはどんなものか、海外ブログを国内の状況に照らしながら、考察したいと思います。

1. まず組織の目標を知る

"全社目標を知らずしてマーケティング計画や予算を立てられるはずがありません。全社目標を知ることでCFOやCxOクラスの優先事項と自身の優先事項を接続することができるのです。"

上記で述べたように、CFOを含むCxOは、各部門の取り組みが中期経営戦略や三か年・五か年の経営戦略にどう接続され、またどのように貢献するのかを見ています。また日本においては、軽微な内容の予算化された部門予算稟議であっても決裁者がCFOやその他CxOであるケースも少なくありません。彼を知り己を知れば百戦殆からず、と言われるように、予算申請をする前にまず、自社の経営戦略が何かを再確認し、自身が策定するマーケティング戦略がどう接続しているのかを再認識するべきなのです。

2. 営業部の支持を得る

"計画と予算をCFOに提出する前に、まずは営業部からのフィードバックを得ましょう。来期の数字を達成するため、あなたの計画が必要であることを認識させるべきなのです。
営業部を引き連れてのCFOとのミーティングが可能ならば、[...]要求内容をより正当化しやすくなるのです。"

中期経営戦略や三か年・五か年の経営戦略には、最終地点目標と、中間地点目標ごとのターゲットとなる具体的な営業数字が記載されています。経営戦略の中で意識されるのは営業数字であり、マーケティング数字であることはほぼありません。また多くのCFOがマーケティングは営業の前工程と認識していることを踏まえると、マーケティング戦略を営業戦略と接続し、営業目標値への貢献度という軸で伝えることでようやくCFOにとって理解しやすい内容になります。

3. 昨年度の失敗要因を排除する(失敗要因の説明とともに)

"仮に素晴らしい一年を過ごしたとしても、合格点と言えるほどではなかったり、想定していた結果にはつながらなかった活動内容はあったと思います[...]予算計画をより効率的で信頼性の高いものにするためには、失敗項目をすべて排除し、予算計画の中でそれを理由とともに強調し明確化することです。そのようにすることは、来年度予算の増額要請を正当化するために使う論拠を実証するためにも役立ちます。"

具体的な営業数字への貢献については、タイムリーな成果への評価と軌道修正が必要です。承認された部門予算を執行することだけが部門の役割ではありません。期待する効果が得られなかった活動があったならば、本来改善・削減、もしくは撤廃し、組織目標への貢献度に応じて予算配分が最適化され続けるべきです。しかし、組織目標や営業目標への成果に対する評価が軽視されがちという現状があります。

4. 事業目的別に予算を整理する(マーケティング特有の機能別ではなく)

"マーケティング部門の組織構成や、それぞれのメンバーの主要機能を軸に投入する予算や担当地域などをまとめるのがチームにとってはやりやすい手法ではありますが、CFOやその他経営層にとっては、事業目的毎に整理されている方がずっと正当性を判断しやすいのです[...]少なくとも売上、既存顧客リテンションの観点から取り組み内容を分類できるようにしておくべきです。"

マーケティング部門とは言え、部門が一体感を持ってワンチームで組織目標・営業目標に向き合っているケースは国内では少ないのではないでしょうか。リードジェネレーションチーム、イベントマーケティングチーム、デマンドジェネレーションチーム、プロダクトマーケティングチーム、インサイドセールスチーム、ブランディングチームなど、マーケティング部門内でもさらに機能別組織になっており、それぞれがそれぞれの目標に向かって活動を行っている企業も少なくないのではないでしょうか。

しかし先述のとおり、これら機能別の目標・目的毎に策定された予算の正当性を見極めたり、成果を評価するようCFO含むCxOに求めることは現実的ではありません。

5. 可能な限り結果を予測する(経費だけでなく売上も)

"新しい予算によって得られる結果が何かを正確に伝えることの方が、はるかに好ましいです。さらに理想を言えば、申請した予算が削減された場合の悪影響が明確になるように、ROI試算を作成しておくべきでしょう。"

3つ目のポイントでお伝えした成果への評価ですが、これはマーケティング活動の結果をただ振り返るのではなく、マーケティング戦略に基づく活動内容の費用対効果と目標値、成果が期待できる時期、他手段との比較などが計画段階でしっかりと説明され、合意されていなければなりません。

6. 遠い将来にいくら投入するかは、期の初期段階の施策貢献度によって変化させる

"今日の急速に変化する市場では、来期の下半期に何が必要となるのかを正確に予測することは困難でもあります。
だからこそ確定しきった予算額を提案するのではなく、初期段階での貢献度によって予算額を変動させる項目を決めましょう。"

上記でも述べたとおりですが、承認済み部門予算をその通りに使い切ることだけでは不十分です。さらには、ROI、成果が期待できる時期、他手段との比較などが計画段階でしっかりと説明され、合意されていたと言えど、組織運営が必ずしも計画通りに進むとは限りません。三か年・五か年の中期経営計画期間の中では、不測の事態や、市場の急激な変化を踏まえて戦略を修正する必要があるのです。下半期にもなれば、「半年以上も」前に立てた予算になります。果たしてその通りに使うことが本当に最適化されていると言えるのでしょうか。それよりも、例えばリスティング広告については、下期のリスティング投入予算額は、上期のキーワード別のリード獲得単価やコンバージョン率などの貢献度によって変動させる、といった予算申請にしたほうが、組織のお金がただ「使われている」のではなく、「最適投資されている」ことが伝わりやすくなります。

7.マーケティング部門メンバーのボーナスをマーケティング戦略の完遂ではなく営業成果に結び付ける

"営業の業績がどのようであれ、マーケティング目標やタスクが完遂されていれば、彼らは(ボーナスの)支払いを受けることになる場合がほとんどです。ぜひ今年度は、マーケティングのボーナスをより広範な企業業績に結びつけることを検討してください。少なくとも、デマンド・ジェネレーションチームのボーナスを商機の増加および/または商談成約数に結びつけましょう。また既存顧客リテンションチームのボーナスは、チャーン(顧客のサプライヤー乗換え)の削減や、または顧客生涯価値(LTV)の伸びに結びつけましょう。"

具体的なROI成果目標や組織目標への貢献度は、担当部門や担当者への具体的なインセンティブと連動させることで、より実行計画を加速させることができます。ただ、国内の現状としては、成果報酬の考え方が適用されているのはおそらく営業職くらいで、貢献に対するインセンティブ制度をその他の部門に設けている企業は多くありません。ボーナス支給額も、基本的には組織の業績連動型になっており、職種にかかわらず支給される企業も多いのではないでしょうか。一方の米国を例にとると、外勤営業職に限らず、インサイドセールス職に対し、営業訪問許諾取得数等に連動してコミッションやボーナスを支給するといったインセンティブ制度を設けている企業が多く存在しています。しかしマーケティング職については米国も日本同様で、成果と報酬が結びつくような仕組みを取り入れている企業はまだまだ少ないようです。

そして著者はこう締めくくります。

「コストセンターでなくプロフィットセンターのマーケターとして真剣に取り組むのであれば、運用用のダッシュボードとエグゼクティブ・ダッシュボードを分ける必要があります。別の言い方をすると、運用用の指標は自分自身とマーケティングチームだけが見ていれば良いのです。

マーケティングの貢献と価値を組織に伝えるときは、すでにCFOが慣れ親しんでいる指標に焦点を当て、マーケティング的な内輪言葉を含めないことです。例えばEメールの開封率やクリック率などは含めないということになります。また、リツイート、ソーシャルにおけるエンゲージメント、口コミ、Webトラフィックの状況や、リード単価も含めなくて良いでしょう。

CFO用のエグゼクティブ・ダッシュボードは、営業パイプラインへのマーケティング貢献度、顧客生涯価値に対する合計顧客獲得コスト、商談化率の向上に対するマーケティング活動の貢献などに焦点を当てる必要があります。マーケティング組織内部においては、活動をよりよくするための指標に自由にフォーカスすれば良いのです。一方で外部的には、プロフィットセンターとしての役割を強化するために、CFO用のエグゼクティブ・ダッシュボードにある指標は収益に直結するものを優先させましょう。

これは単なる言い回しや部門間のコミュニケーションの問題だけではなく、マーケティングが組織においてどう認識され、評価され、優先順位付けされるかを明確化し、うまく調整することを言っています。また、マーケティングにおける文化そのものを変え、最も重要な指標だけに焦点をあてることを意味するのです。

実現させるためには、多くの方法がありますが、次のことをまずはセルフチェックしてみることをお勧めします。

  • 最後にCFO用のエグゼクティブ・ダッシュボードを見たのはいつでしょうか?重視されている指標、使用する用語、主に懸念している課題は何でしょうか
  • 営業部の指標と、あなたの指標はどの程度密接に関係していますか
  • 現在報告に使用している指標に活動ベースやオペレーション関連の数字がばらまかれているために、実際に重要視されるべき指標や、注目すべき指標から注意がそれてしまっていないでしょうか

マーケティング組織の他のメンバーも、CFO用のエグゼクティブ・ダッシュボードと内部用マーケティング・ダッシュボードの違いを理解しているかの確認を徹底しましょう。内部用ダッシュボードが重要ではない、ということでは決してありませんが、それは本来の目的を達成するための一手段に過ぎないことを理解しておきましょう。」

今回は承認されやすいマーケティング予算策定について紹介いたしました。