「MARKETING NATION パートナーカンファレンス 2017 Summer」で開かれた「The Marketing Nation Summitの参加者によるパネルディスカッション」の後編です。米国の後を追う日本のマーケティングは、これからどこへ向かっていくのでしょうか。経験豊富なパネラーのみなさんが肌で感じた米国の最新事情をもとに、私たち日本のマーケターが進むべき道を語っていただきました。

次に日本に来るマーケティングのトレンドとは

安竹:マルケト以外のパートナーさんのブースで気になったテクノロジーや、日本でも人気が出そうだなと感じられたサービスはありましたか?

横山:私が気になったのはコンテンツ系ですね。セッションの中でも「PDFのダウンロードは、そろそろやめましょう」というものがありましたが、コンテンツをインタラクティブなものにするツールがいくつかあって「Listen / Learn / Inspire」を実現するには、双方向性がないと成り立ちませんからね。

安竹:見積もりのPDFをダウンロードさせるのではなく、画面のボタンを押したらその情報がMarketoに入ってプロファイルされる「ROIカリキュレーター」などもありました。

御手洗:日本と違うなと思ったのが、パートナーブースの担当者が「パンフレットどうですか?」とか「デモを見てください」といったことを絶対にしないところ。まず「御社のビジネスを教えてください」から始めて、十分に深く聞かないと説明を始めないんですよね。あのスタイルは、すごく刺激を受けました。その中で気になったのは「Lattice」や「6sense」などのABMツールです。どれもLinkedInなどの30?40くらいのデータソースとつながっていて、データ量がものすごい。特にICT系のお客様が多い弊社からすると、夢があるなと感じました。

庭山:ABMのリードジェネレーションツールは、日本では法的な問題でほぼ使えない。いいなと思うけど悔しいので、あまり見ないようにしています。ABMソリューションが出始めて5年ほど経っているので、ターゲット企業をIPで特定して追跡するソリューションもあれば、データベースに囲い込んで面でナーチャリングしていくみたいなソリューションもあって、各社が色を出してきていますね。米国ではMAの普及が当たり前になっていて、その上で何をするのか。今のトレンドはABMですが、次のトレンドはPRM。パートナーリレーションシップマネジメントです。このトレンドは明確に出ている感じがしました。

マーケティングで目指す半歩先の未来

安竹:最後に、みなさんの今後の展望をお聞かせください。

庭山:弊社では今、グローバルエンタープライズの製造業がクライアントの8割を超えたので、日本の製造業の国内外のマーケティングをどうするかというところに、ますますフォーカスしていきます。世界30数カ国にいるマーケティングエージェンシーのパートナーと組んで、弊社のお客様に最適なマーケティング環境をワンストップソリューションで提供していく。私たちのようにコンサルティングからデータマネジメント、コンテンツを作ってキャンペーンを回して、インサイドセールスまで持っていくというのを包括的にやっているところは米国でも珍しい。これがうまくいくかどうかわかりませんが、自分でも楽しみながら「日本のマーケティングを世界のトップレベルに押し上げる原動力になる」という経営理念でやっていこうと思っています。

横山:もともと弊社は事業の軸がグローバルCRMで、海外の売上比率が高いお客様が多い。グローバルCRMの延長でMAをやっているので、グローバルも含めたトータルで売上を上げるためにどうすればいいのかが前提にあります。そうなると、標準化したい部分とローカライズ需要に合わせる部分の切り分けが大事になりますので、マーケティングの軸をどこに置くのかというテーマにもしっかりと向き合うことで、日本のグローバル企業の底上げをしていきたいと思っています。

御手洗:私たちはこの2?3年、定期的なメルマガを書いたり、マーケティングオペレーションをしたり、過去回帰系のデータ分析なども行ってきましたが、マーケティングテクノロジーの進化と共に自働化や機械化が進んでいくのは明確で、「人間たるマーケターがいつまでも行う仕事じゃないな」と自虐的に思っている業務が多くあります。特に、今後、データ解析やその前提となるデータコレクションが自動化されていくことは間違いない。そんな中でチャレンジングなお客様とともに、「マーケターとしての時間の使い方を見つめ直し、マーケターとして何をすべきなのか」という実証実験をクライアントワークを通じて積極的に行っていきたいと考えています。

安竹:米国のようなマーケティング風土が根付いていない日本では、MA導入のコンサルティングにあたって苦労されることも多いのではないですか?

御手洗:そうですね。やはり営業とマーケティングにはまだ壁があるし、事業部間でも壁がある。そうした壁をなかなか打ち破れなくて戦略が実行しきれないケースが多いですね。だからこそ我々が土足で踏み込んでいって、営業の方にマーケティングセンスを植え付けたり、営業とマーケティングの間を取り持つ人を社内に立ててもらったり、といった泥臭い仕事が必要です。

横山:御手洗さんのおっしゃる通り、土足で踏み込むこともあるので、自社のメンバーには"クライアント企業で出入り禁止にならないスキル"が大前提として必要になります。MAの仕事は、お客様が絶対に組織横断にならざるを得ないので、部署同士をそれぞれのゴールに向かってバランスよく導いていかなければなりません。正論だけを言っていても仕方がないので、そうしたマネジメント能力はベーススキルとして重要ですよね。

庭山:弊社はクライアントサイドのマーケティングマネージャーの育成に関わることをこれからの事業としていきたいという構想はあります。その一環として、中央大学のビジネススクールの客員教授にもなりました。企業の中のマーケターをどんどん育てて、お客様のナレッジをいかに高めていくか。その上で、米国並みのサービスを提供するマーケティングエージェンシーとして、「いくら売上に貢献したか?」で勝負していきたいです。

安竹:結局のところ、これから日本のマーケティングの未来が明るくなるかどうかについては、日本企業の組織の変革とマーケター自身のスキル的な成長にかかっているということですかね。マーケティングが半歩先の未来へドライブしていくというのは、間違いなさそうですが。みなさま、貴重な意見をありがとうございました。