これからのマーケティング、マーケターのあり方について、現場の声を聞く「Tomorrow's Marketer」の11回目。今回は、トレンドマイクロ株式会社のマーケティングコミュニケーション本部 山田 泰志氏、松井 真理子氏にご登場いただきます。

同社は、コンピュータ及びインターネット用セキュリティ関連製品の世界的なリーディングカンパニー。

IoT、クラウド化など、IT環境のめまぐるしい変化、新たな脅威の手口の登場に迅速に対応するセキュリティソリューションのエキスパートとして注目を集めています。

マーケターとしては、専門的視点に立ってのユーザーへの情報提供、コミュニケーションの重要性が高まるなか、何に注力しているのか。必要とされる資質は何なのか。グローバルに事業を展開する企業だからこそのマーケティング部門を巡る環境の違いなども併せてうかがいました。

単一の施策ベースではなく、コミュニケーション全体で効果測定、最適化を追求

2人のキャリアは、まさにマーケティング畑一筋。松井氏は、元々、半導体関連の商社で、メールによる顧客とのコミュニケーション、リードジェネレーションおよびナーチャリングに従事していました。

ただし、当時はまだマーケティングオートメーション(MA)もなく、営業へリードを渡すタイミング、案件管理の方法など試行錯誤の連続。BtoBマーケティングで、より進んだ施策を実施している企業へのチャレンジを考えるなか、トレンドマイクロへの転職を決意したといいます。

山田氏は、複数の外資・日系企業でBtoC、BtoB両方のマーケティングに従事。BtoBマーケティングのキャリアを追求していくべく、松井氏とほぼ同時期の4年前に同社に入社します。

元々、トレンドマイクロでは各国・拠点にMA導入の決定権があり、日本本社では別のMAを使っていましたが、2015年、全社的にMarketoへの切り替え、運用がスタート。

当時の日本における問題意識としては、顧客情報の集約、顧客視点での行動トラッキング、プロファイルの可視化、その結果を受けての適切なシステム構築やコミュニケーションの改善、社内の生産性向上の実現などが課題だったといいます。

Marketo導入時から、担当者となった2人の役割としては、山田氏はMarketoを中心とする他システム・ツールの連携を含めたシステムの構築と最適化、リードマネジメントといった統括ポジションを担当。

松井氏は、実際の施策を担当。前職でのキャリアを活かし、ターゲットである企業のIT担当者・情報システム担当者に向けてのメールマーケティングに従事しています。

では、2人はこうした日々の仕事で何に注力しているのでしょうか。

まず、大前提となる一つ目のポイントとして、山田氏が挙げたのが、「マーケターの意識を"施策"視点から"お客様"視点へシフトすること」です。

従来、マーケターの業務というと、「セミナー開催」「コンテンツ・資料作成」「出稿」といった施策ベースで語られ、結果についても単一の施策ごとに判断される傾向がありました。

そうではなく、お客様を基軸に「どういうコミュニケーションをとるべきか、求められているのか」「その結果がどうなのか」の分析、改善が本来のマーケティングのあり方といえます。

よって、運用統括者としては、Marketoだけでなく、他のシステム、ツール連携により、コミュニケーションの改善、パフォーマンス向上をいかに実現するか。ワールドワイドに各地域のMarketo担当者とも連携しつつ、全体の仕組み化、最適化に注力しているといいます。

月20通を超すメール配信で、適切かつタイムリーなコミュニケーションを実践

では、具体的な施策を実施する上で、何が重要となるのか。メールコミュニケーションを実施する松井氏が挙げる二つ目のポイントは、「タイムリーかつ適切な情報提供で、お客さまの信頼関係を醸成していくこと」。

昨今、企業のデジタルコミュニケーション・インフラを巡る環境は一変。日々、情報漏えい、サイト改ざんなどの事件が勃発し、脅威の手口もますます高度化、巧妙化するなか、「企業のIT部門・情報システムの担当者とのコミュニケーションの重要性がますます高まっています」と松井氏は指摘します。

松井氏は定期的に配信するメール以外に、時事情報を含め、月20通を超すメールコンテンツの作成、配信を実施。

「当社のエキスパートであるセキュリティエバンジェリストや製品チームのフィードバックも受けながら、個々のお客様が求めるニーズを想像し、最新の脅威に関する情報および当社のソリューションの情報について即時性を持ってご案内することに注力しています」と語ります。

ほぼ1営業日ごとに新たなコンテンツの作成、配信を実施するのは、相応の業務負担となりますが、Marketoにより、効率的かつ適切なメール配信が実現。生産性の向上と、細やかなリードジェネレーション・ナーチャリングの両立をはかっています。

三点目に、2人が挙げるのは「社内におけるMAへの理解を広げるための取り組み」です。

トレンドマイクロ株式会社 マーケティングコミュニケーション本部 山田 泰志氏、松井 真理子氏

実は同社のマーケティング部門は、所属するメンバーが数十名に及ぶ大所帯。

Marketoを中心に、お客様の視点をマーケターで共有し、かつ部全体の生産性向上を実現していくには、担当者だけでなく部門全体の「一定以上の理解を得ていくことが必須となります」と山田氏は言います。

そこで、昨年から月1回、関わるメンバーを集め、Marketoを活用した実際の施策の目的、MAに対する考え方などに関する説明会、勉強会を実施しています。

また、メンバーが多いと意識が分散しやすいというデメリットがある半面、多くのアイデアが集まるメリットも。「実際、情報共有の場を作ったことで、メンバーから、メールコミュニケーションを始め、やりたい施策に関して多くの意見が寄せられるようになりました」と松井氏。こうした新たなアイデアを元に、システムの実装の課題が山田氏にフィードバックされるなど、好循環も生まれているといいます。

海外の先進的な事例、情報をシステム構築、施策に活かしていく

四点目として、山田氏が挙げるのが「グローバル規模で、Marketo担当者と密に情報交換をすること」です。

同社は、海外の30以上の国、地域にビジネス展開。主要メンバーとなるMarketo担当者を日本、欧州、アメリカ、アジアの4地域に配置しています。

日本で外資系企業というと、海外本社の方針にそれぞれのブランチが従うイメージが強いですが、「当社は日本に本社を置いてます。ただし、地域ごとにフラット型の組織であるため、ミーティングもイーブンな立場で行われます」と日本の担当者である山田氏は明かします。

こうして、Marketoのシステム構築のあり方、適切な施策に関して、メンバーとの週1回の電話会議、日々のメールやメッセージなどのコミュニケーションを通じて、意見を交換。

主要メンバーの中には、Marketo製品やテクノロジーに関する豊富な知識と経験を持つ、各種アワードのホルダーも在籍しており、海外の先進的な情報を共有できるのも、Marketo運用における同社ならではのメリットとなっています。

ここまで仕事の具体的な内容、注力ポイントをうかがったこところで、後編では2人のマーケターとしてのこだわり、自己研さんのために実践していること、マーケターとしてステップアップを目指す人へのアドバイスを紹介していきます。