マーケティングの未来、マーケターとして備えるべき資質について、現場のリアルな意見を聞く連載も6回目を迎えました。

今回は、世界初の法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」を提供するSansan株式会社のマーケティング部 エバンジェリスト 石野 真吾氏をお迎えします。

「Sansan」といえば、Marketoと連携し、活用しているユーザーも多いのでは?

実は、石野氏は、ユーザーコミュニティ「Japan Marketo User Group(JMUG)」の中核メンバーとしても知られ、2016年には、JMUGの活性化に貢献したユーザーを表彰する「Japan Marketo User Group Champion Program」の初代年間チャンピオンにも選抜されました。

今回は、いつもと趣向を変え、Marketo導入・運用に際し、石野氏を陰ながら支えてきた弊社のコンサルタントである大里 紀雄も加え、ざっくばらんにマーケター談義を展開してもらいました。

導入キックオフで、提示された100ページのパワーポイント。そこには......

大学で薬学を専攻後、医療関係のコンサルティング会社に就職した石野氏。自身で新規事業を立ち上げるなどのキャリアも経て、Sansanで働いていた大学時代の同級生の誘いで、同社に転職。業務企画、営業のアシスト、業務フロー構築などに携わるなかで、Marketo導入に際し、自ら担当者に立候補したといいます。

当時、同社では、CMなどの効果により、リードの数が急拡大。しかし、リードを育成し、受注に結び付けるには、施策を増やさねばならない。そのため、営業やインサイドセールスへの負担が重くなり、結果的に人員を増やさねばならないという課題にぶつかっていました。

「当社の『Sansan』は、従来、人的リソースでカバーしていた名刺のデータ入力・管理をクラウド化することで、生産性向上の実現と収益アップを目指すツールです。このように企業が成長の確度を上げていくには、テクノロジーを上手に活用し、ムダな既存業務のコストを抑えていくこと。その仕組みをどう作るがポイントになります」と石野氏。

Sansan株式会社
マーケティング部 エバンジェリスト 石野 真吾氏

そのツールとして、石野氏はMarketoに着目。新たな取り組みを成功させるには、「失敗したら会社をやめるぐらいの覚悟を持たないと、うまくいかない」と考え、自ら不退転の覚悟で手を挙げます。

「導入前のキックオフの時から気迫が違いました」。と大里もそう振り返ります。

「『形式ばったキックオフはいらない』と言われ、石野さんがテーブルに分厚い資料をドンと置きました。めくってみると、100ページにも及ぶパワーポイントにMarketo導入で、実現したいリストが書かれていたんです。そして、"3カ月で、これを全部実現したい。そして半年で受注を倍にする"という明確な目標も提示されました」(大里)

導入前から、大里のほか、JMUGの他のユーザーの紹介を受け、様々な事例について積極的に吸収。導入イメージはある程度固まっていたという石野氏ですが、やはり実際の設計となると、さまざまな壁にぶつかるもの。

そこで、石野氏が心掛けていたのが、疑問点が浮上した時点で、スピード感を持って解消すべくアクションを起こすこと。

「大里さんにメールや電話で質問をする。あるいは、JMUGメンバーにも質問をぶつけてみる。大里さんは対応が大変だったと思いますが、わからないことを埋めていこう、と必死でしたね」と石野氏。

Marketoはあくまでもツールなので、自社のビジネスや課題に合わせて、どう機能を組み合わせ、システムを組んでいくかが肝要となります。

その観点から、「質問が来るということは、それだけ新たなことにチャレンジしようとしていることですよね。その熱い思いに応えられるよう、こっちも必死でした」と大里。最初の約1カ月半で、石野氏が大里に送った質問メールは百数十通にも及ぶといいます。

こうして、約2カ月で、MAシステムの設計、自社システムとの連携も完了。

最終的な成約率向上にもつながるデータベースの整備、インサイドセールスや営業のメンバーもスピーディに使えるインターフェースなどにもこだわり、運用を開始した初月から受注率アップ。「半年で受注を倍にする」という目標を、有言実行で達成します。

「ツールドリブンに終始しない」。人間臭さこそがマーケターに必要な資質

今や、自社のビジネスだけでなく、JMUGの活動を通じ、他社マーケターとの交流、サービス連携にも積極的に取り組む石野氏ですが、日々、心掛けていることや、マーケターのあり方についてどう考えているのでしょうか。

一つ目に石野氏が挙げたのが、「ツールドリブンに終始しない」。

デジタル化というのは、あくまでも手段であり、ツールを使った様々な施策はオペレーションでしかないと石野氏。

本当の意味のマーケティングとは、顧客の心を動かす仕組みを作ること。そのためには、目指すビジネスの方向性と全体像を踏まえ、経営目線でファネルの構築も考えていく必要があります」と語りました。

そのためには、リアルに顧客の声を聞く。営業、インサイドセールスなど、最前線で顧客に向き合っているメンバーと、しっかりと情報交換していくといった、アナログなコミュニケーションを取っていくことも大事。

「私がJMUGのユーザー会や、そこで繋がったユーザーとのリアルなつながりを大事にしているのも、生の声こそに実践的なファクトがあると考えているから」と石野氏は話します。

「ただし、人のマネをしてもうまくいかない」とも断言。

MAに限らず、世の中に、大抵のソリューションは揃っている。後はそれをどう組み合わせ、適正化していくか。他社の事例を参考にする際も、「しっかりと自社の顧客の視点を見極めながら、他社のケースをどう抽象化して考え、自社のモデルに落とし込んで考えていけるかが大事です」(石野氏)

顧客視点を持つ上で、2つ目に、大里がマーケターに必要な資質として挙げたのが「人が好きなこと」。

「人が喜んでいる顔を見たい。どんなサービスをしたら、顧客が喜んでくれるか。久しぶりに自分たちのことを思い出してもらうには、何をしたらいいのか。仕事だからではなく、新たなマーケティング施策や、サービスについて、心からワクワクしながら考え、アクションに起こせるかも大事な素養」と大里。

株式会社マルケト
コンサルタント 大里 紀雄

確かにMAを導入しても、喜ばれるサービスを提供できなければ、まさに宝の持ち腐れ。こうした人間臭さこそが、MAの知識以前に必要だといえそうです。

不退転の覚悟で、会社全体を巻き込むパワーこそが必要条件

3つ目に、2人が挙げたのが「腹に力を込めること」。ようは「本気で結果にコミットし、全力で熱く取り組めるか」。

「TECKETの飲み会なんかで話していても、『結局、マーケティングの施策をしっかりと回し、成果を出せるか否かは、どれだけ腹に力を込めているかだよね』と(笑)」(大里)

デジタル志向なメンバーに似つかわしくないアナログな精神論のようですが、マーケティング施策を成功させるには、顧客の心を動かすとともに、会社の人間を動かすことが必須。

そのためには、マーケターの覚悟がカギを握るというわけです。

「エンゲージメントマーケティングの本質は、顧客のコミュニケーションをファネル全体でやっていくことにある」と石野氏。つまり、マーケティングは、マーケティング部門だけの仕事ではなく、営業、インサイドセールスほか他部署を含めて、全社で取り組むべきもの。

「営業との連携がうまくいかない」「上層部の理解が足りない」といったマーケターならではの悩みに対しても、「厳しいことを言うようですが、マーケティングで成果が上がらない理由を他部署や会社に責任転嫁しているうちは、まだ本気度が足りないのでは」と石野氏は指摘。全力で、大マジメに"腹に力を込め"、会社全体、メンバー全体を巻き込む必要があると語ります。

さすが、不退転の覚悟でMarketo導入に挑んだからこその発言。と、マジメに語ったところで、「JMUGで飲みに行くことが増えて、腹に力というか、腹の脂肪もちょっと増えちゃいましたけど(笑)」(石野氏)と、場を和ましてくれるのも、まさに"人好き"なマーケターならではのサービス精神でしょうか。

「もちろん、私もまだまだマーケターとして未熟。他のユーザーと知見を共有しながら、経営目線でマーケティングを本質的に考えられるマーケターに成長していきたい」とし、「まずは久しぶりにTECKETで、飲みに行こう(笑)」と盛り上がる2人。

いくらテクノロジーが発達しようと、それだけではうまくいかない。

こうした人の繋がり、共有する熱い思いこそが、デジタルな取り組み、マーケティング施策を成功に導く、大事な"ピース"なのかもしれません。

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