前編は、リクルートコミュニケーションズでBtoBマーケティングを担う加藤氏、福塚氏に、これからのマーケティングのあり方、マーケターに必要な資質についてうかがいました。

後編は、同社のマーケティングオートメーション(MA)導入を支援した弊社のコンサルタント安竹 由起夫を加え、機能会社のマーケターならではの課題や、多くのマーケターがぶつかりがちなハードル、その解決に向けての考え方などに、ズバリ切りこんでいきます!

既存顧客の途中離脱につながるメッセージを逃さずキャッチするには?

安竹:まず、最初にうかがいたいのがBtoBマーケティングにおける2本柱となる、新規顧客の獲得と、既存顧客の維持をどう実践し、両立していくかについてです。

実は5月にマルケト本社がアメリカで開催した「Marketing Nation Summit」に参加したのですが、そこで盛んに言われていたのが「既存顧客向けにマーケティング予算をもっと割くべきである」と。つまり、既存顧客やその契約更新に対しても、適性に投資を分配し、顧客のロイヤル化を図っていくべしということでした。

以前から、顧客生涯価値(LTV)によって有望顧客をセグメントする重要性が指摘されたりもしていますが、日本においては、まだ新規顧客の獲得にプライオリティが置かれがちな側面もあります。お二人はどうお考えでしょうか。

加藤:まさに、私たちがMAを導入した際に浮上した課題に通じる話です。

例えば、営業の効率化ということを考える際、以前から問題視していたのが、リードをパスしても、営業がすぐにフォローできず、抱え込んでいるうちに機会損失してしまうことでした。

ならば、MAを活用し、適切なメールアプローチなどで、ホットリードの状態で渡し、きちんとクロージングまで持って行こうと。そこまでは想定していたのですが、そのうち、多くの部署から新規開拓で手一杯で、「既存顧客のフォローに手が回らない」という相談が寄せられるようになったのです。

つまり、せっかく求人広告などを出してくださったクライアントへのフォローが追いつかないまま、気づいたら他社にリプレイス(乗り換え)されてしまっていた。あるいは、求職者にダイレクトにメールを送信できるような付帯機能を使いこなせないまま、効果が上がらないからと、本来のバリューを提供できないうちに離脱されてしまったなど。

こうした課題に、いかにMAツールを活用した施策で、営業支援を実践していくか。そこに解決すべきボトルネックがあることに気づいたのです。

安竹:弊社のような契約更新が必要となる、いわゆるサブスクリプション型ビジネスを展開する企業にも共通する課題ですね。

弊社のMAをお客さまが使用している中で不明な点が浮上した際に、すぐにコンサルタントに質問してくださるようなお客さまもいらっしゃれば、残念ながら使いこなせないまま、「MAを入れても効果が上がらない」と離脱してしまうようなケースもありえます。

こうしたケースに対処するには、リードを育成するだけでなく、定期的なステップメールで、既存顧客をナーチャリングしていくようなキャンペーンもあったほうがいいのかもしれません。

福塚:どうしても新規獲得の比重が予算だけでなく、事業の目標値でも高くなっているといった、社内の評価基準の問題も挙げられると思います。

加藤:関連して、施策の一つとして考えているのが、離脱防止のトスアップのようなアラート機能への取り組みです。例えば、顧客は次からの広告掲載は止めようと検討している段階で、初期のログインや変更の設定をパタリと止めてしまうようなサイン、メッセージは出しているはずなんです。

MA上には動きとして出てこなくても、クライアントサイドのWebサービスや管理画面などの操作ログで、悪いほうへと閾値が超えた段階で、トスアップするような機能を考えています。

このように、新規顧客の獲得だけでなく、立ち上がりや継続利用、活用促進といった場面で、いかにマーケティング部門がフォローしていくか。そこまでのソリューションを拡充してこそ、真の求められるマーケティングが実現するというのが、最近2人でも話し合いを重ねている課題です。

スピード感を持って、3か月で初期構築。コンテンツ制作まで一手にサポート

安竹:日々、グループ内の事業会社の多岐に渡るマーケティング課題に組織横断的に関わる中、役割としては、どこに比重を置いていらっしゃいますか。

加藤:最初のシステム構築・導入ももちろん大事ですが、むしろフォーカスすべきは、その後の運用。よって、MAなどのツール選択の基準は使いやすい、やりたいことができる機能が揃っていればよいという考えです。

大事なのは、マーケティングの目的に合わせて、どう既存のシステムと連携し、成果を最大化していくか。そこに注力することがMA導入を成功させるポイントだと思います。

福塚:例えば、弊社グループだと、各事業ですでにMAを入れているものの、単純なメール配信機能以外が使いこなせていない、思うような成果が出ていないというケースもあります。つまり導入は完了しているが、実質的に機能していないという状態です。

そこから、本来あるべきマーケティングコミュニケーションやシナリオ、スコアリングロジックの設計からリスタートして、さらにステップメールのコンテンツ作成、その先の運用、PDCAサイクルを見据えてサポートしていくのが、我々の役割です。

安竹:コンテンツ作成まで手掛けるとなると、かなりの業務負担ですよね? 導入から運用まで、どの程度のスパンを想定していらっしゃるのでしょうか。

福塚:初期構築で3カ月と決めて実践しています。まずKGIの設定から入るのですが、事業会社においては営業目標値の設定は日頃から実践していても、MAやCRMのKGI設定は初めてというケースが大半です。

そこで、事業会社の担当者とブレストしながら、営業目標値や新規顧客の獲得目標値などからブレイクダウンを行い、MAが貢献できるKPIのポイントから見定めつつ、設定していく。

折衝しながらの作業なので、機能会社ならではの組織横断的なプロジェクトに関わる醍醐味でもありますが、苦労するポイントでもありますね。

チャネルとしてDM・FAXの見直し、コンテンツのシンプル化にも取り組んでいく

安竹:私自身、コンサルタントとして、MA導入に際しての課題や目指す目的といったところにフォーカスする必要があるのですが、MA導入・運用を成功させるには、組織縦断のスタンス、視点が必須だなと実感しています。

さらに、3カ月で立ち上げるようなスピード感を持っている御社のような専任チームが組織内にあるとないとでは、マーケティングの成否を大きく左右するポイントとなりそうですね。

例えば、提供するソリューションを社内だけでなく、今後、社外に展開することも想定していらっしゃいますか。

加藤:BtoCのビジネスにおいては、そういった流れも生まれつつありますね。ただし、将来的な展開も見据え、より精度を高めていくには、先端的なテクノロジーやビッグデータ分析に対応できるような人材の獲得、育成が必須だと考えています。

安竹:確かに新たなテクノロジーの活用は重要になりますよね。その点に関連して、新しいテクノロジーへのキャッチアップに、意識して取り組んでいらっしゃるとのお話でしたが、今後、接点となるチャネルや、コンテンツ作成に関するチャレンジについてお聞かせください。

加藤:チャネルとしてはもう一度、DMやFAXを見直すとか。

安竹:ロイヤルカスタマーを醸成していくという観点では、FAXなども活用の余地はありそうですね。

加藤:コンテンツ制作の一つの方向性としては、"シンプル化"でしょうか。従来の長い巻物みたいなメールではなくて、画像、ディスクリプション、CTA、他のヘルプデスクなどの接点程度を置くくらいのメールを考えています。

福塚:機械学習(マシンラーニング)も活用していきたいですね。

例えば、狙うターゲットに近いユーザーを自動的にクラスタリングしてくれて、コンテンツの出し分けを適切にやってくれる。つまりお客さまごとに、どのコンテンツを配信すべきか、もっとクリアに明かされてくるのではないか。自動的なマッチングシステムの構築には早々に取り組んでいきたいです。

安竹:いいですね。私も作ってみたい(笑)。

加藤:もちろん、新しいテクノロジーを使うことが目的ではなく、目指すのはより良いサービス、プロダクトの実現をアシストすること。よりよい世界を描くべく、さらなるチャレンジをしていきたいですね。

安竹:MAほかツール、テクノロジーをインフラに、今後のサービス、製品のさらなる向上、御社ならではの新しい付加価値の創出にも期待しています。今日はありがとうございました。

対談後に、「リクルートコミュニケーションズさんは日頃から、自分の立ち位置や会社の強みを明確に理解することの重要性、考えることの大切さを意識されており、常に自分、チームの市場価値向上に務めていることが印象的でした」と語った安竹。

まさに"価値の源泉は人"を謳う同社ならではの、リクルートグループを支える人材の厚み、強さを改めて認識させられる対話となりました。

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