これからのマーケティング、マーケターのあり方について、現役マーケターにズバリ斬り込む連載企画「Tomorrow's Marketer」。14回目となる今回は、リクルートグループで、人材採用サービス事業を手掛ける株式会社リクルートキャリアから、4名のマーケターにご登場いただきます。

同社 IT戦略室 UXデザイン部のマネジャー・松村 草也氏、同部メンバーの田中 拓也氏、李 奇花氏、デジタルマーケティング部メンバーの飯田 光氏です。

リクルートといえば、さまざまなビジネス領域で、クライアント企業、ユーザー・カスタマーのマッチングサービスを手掛けていますが、その基点となる創業事業を手掛ける同社では、新卒向けの「リクナビ」、転職者には「リクナビNEXT」といったメディアサービス、さらに求人企業と求職者の間に人が介在し職業紹介を行う転職エージェント「リクルートエージェント」などを展開しています。

4人が属するIT戦略室の立ち位置は、これらのメディア、サービスを手掛ける事業本部に対し、横断的に"IT×マーケティング"の視点で、カスタマー向けのUX向上につながる戦略・施策を設計、推進すること。

個々の役割は、松村氏と田中氏はエージェントインタラクション デザイングループに属し、「リクルートエージェント」の登録者(カスタマー)専用サイト・アプリや介在するキャリアアドバイザー向け業務システムの改善に従事。

デジタルマーケティンググループに属する飯田氏は「リクルートエージェント」、李氏は「リクナビNEXT」の応募につながるアクションの最大化を実現すべく、メール施策などを実践しています。

さらに、4人のこれまでのキャリアを紐解くと、松村氏と飯田氏は新卒入社組。松村氏は2010年にリクルートに入社し、2年目から、全社横断的にさまざまなサービス・メディアのUXデザイン・改善業務に携わった後、今に至ります。今回、最も若手メンバーの飯田氏は入社3年目。入社以来、一貫してウェブマーケティング関連の仕事に従事しています。

転職組の田中氏は、大日本印刷、 NHN Japan(現LINE)、グリーなどで、ITおよびデザイン、UX関連のキャリアを積んだ後、同社へ入社。

李氏は、SIerのエンジニア、事業会社のシステム部門などを経て、「ユーザーに近いところで、サービスを手掛けたい」という思いから、マーケターへジョブチェンジ。同じリクルートグループのリクルートジョブスを経て、16年4月から現在のチームに所属しています。

ITを軸に、全社的な組織変革も推進し、新たな競争優位を創出

道のりはさまざまですが、4人に共通しているのは"ITに強い"ということです。

かつてリクルートの競争優位性といえば、筆頭に営業力の強さが筆頭に挙げられてきました。しかし、2012年の分社化で、IT、マーケティング業務を横断的に実践する株式会社リクルートテクノロジーズが発足。また事業を運営する各社においても、4名が属するリクルートキャリアIT戦略室然り、全社的にIT、マーケティング施策による新たな顧客接点の強化に注力しています。松村氏、田中氏、飯田氏は、ITを軸とした組織変革も推進しているリクルートテクノロジーズにも籍を置いています。

こうした改革の背景として人材業界No.1企業であっても、「これまでは事業スケール、網羅性などで闘ってきたが、競合会社の増加や働き方に対する考え方も多様化する中、競争優位性を確立するのが容易ではない時代になっています」と明かす松村氏。

例えば、転職を考えている求職者と一言でいっても、その熱量やサービスに求める価値は人によってさまざま。「個々の転職者の思い、ニーズをくみ取り、UX向上を実現していくには、適切なOne to Oneコミュニケーションをいかにテクノロジーの力で生産性高く、効率的に実践していくかが問われるようになっています」と語ります。

テクノロジーはあくまでも何かを実現するためのツールに過ぎない

まさに"IT×マーケティング"の力で、リクルートの基幹事業をドライブさせていくというミッションを担う4名のマーケターは、日々の業務に携わる中で何を重視し、かつマーケターに必要な素養についてどう考えているのでしょうか。

松村氏が、マーケターに必要な資質として一つ目に挙げたのが「妄想力」です。

ITのプロらしからぬアナログな意見のようですが、いくら、テクノロジーが発達しても、データや数値だけでは、カスタマーインサイトをつかむことはできない。

例えば、カスタマーの行動に表れる変化、データなどの関連性について、「この現象はあのデータと関係あるのではないか」「カスタマーは、こんなことを考えているのではないか」などと妄想し、いわば"点"を"線"でつなげていく。こうして、自分なりの仮説を立てていく作業が欠かせないと言います。

さらに、こうした仮説をデータで裏付けしながらファクトを導き、「最後にアクションとしてやり切る力が必要になります」と語ります。

関連し、田中氏が二つ目に挙げるのが、「カスタマーの体験を"数珠つなぎ"で考えていくこと」。

例えば、エージェントサービス一つとっても、「職務経歴書作成」「介在するキャリアアドバイザーへの面談応募」「実際の面接」といった、いくつかのステップがあり、そのすべての体験の連続を通して、「使ってよかった」「またチャンスがあったら使いたい」と感じてもらえるかがUX設計のキモになると指摘。

働き方の多様化を背景に、転職市場においてもロイヤル顧客の醸成、生涯を通じた顧客満足の最大化をも強く意識するべき時代が到来していると言います。

三つ目として、李氏は、マーケティングオートメーション(MA)やテクノロジーを活用する際に、「やりたいこと、目指すことを明確にしておくこと」を挙げます。

至極、当たり前のことのようですが、先端技術に関するバズワードが頻出する中、テクノロジー導入が目的化してしまうようなケースも。

そうではなく、「テクノロジーはあくまでも何かを実現するためのツールに過ぎない」とし、事前に課題、それに対する仮説、やりたい施策・アクションをクリアにした上で、PDCAを回し、ベストプラクティスを導いていくことが肝要だと言います。

飯田氏も、「失敗を経て、振り返りが可能なのもMAなどのテクノロジーのメリット」と語り、あえて失敗を恐れずに、やりたいと思ったアクションを繰り返し実践し、検証していく作業の大切さを挙げます。

社外活動を通じ、次世代にもUXの大切さ、楽しさを伝えていく

では、業務以外で、自身の知見を広げるべく、意識的に実践していることを尋ねると、さまざまなインプットの形が飛び出しました。

読書を挙げたのが、飯田氏と松村氏。

「学生のころから、デジタルマーケティング領域の読書は継続して実践しています」と飯田氏。最近、面白かった書籍の一つとしてマーク ジェフリー著『データ・ドリブン・マーケティング』(ダイヤモンド社)を挙げてくれました。

先輩として飯田氏にオススメ本を推薦することもあるという松村氏も、「マーケティング関連の本は一通り読むようにしています。最近読んだ本、中室 牧子・津川 友介著『「原因と結果」の経済学』(ダイヤモンド社)では、A/Bテストでつまずきそうな統計のカラクリなどがわかりやすく解説してあって、オススメです」と語ります。

その一方で、「自分は転職の経験がないこともあって、努めて社外の人と会い、話を聞く時間もつくるようにしています」と言う松村氏。李氏も、「"HR×マーケティング"に関するセミナーに参加したり、いろんな人に会ったりして、多様なキャリアのあり方について情報を収集する。外に出ることを意識しています」と語ります。

また、李氏は日々の仕事に生かすべく、国家資格の「キャリアコンサルタント」の取得にもチャレンジ中。週末は勉強にいそしむ日々だとか。

ユニークな社外活動を挙げたのは田中氏です。

青山学院大学の社会人向け「ワークショップデザイナー育成プログラム」を履修した経験を生かし、学童保育の場で子供向けのUXに関するワークショップを開催していると言います。

「自分自身、一貫してデザイン畑を歩んできたこともあって、モノを作り、仮説検証を経て再び構築し直すような、ビルドアップの作業が好きなんですね。子供たちにも、学校の勉強では得られない試行錯誤の面白さを体験してほしいという思いから、一緒に楽しみながら取り組んでいます」(田中氏)

ちなみに前回、実施した際のテーマは「お父さんが幸せになるお弁当を作ろう」。両親へのインタビューを経て、子供たちに実際にお弁当を作ってもらい、フィードバックしあうなど、身近なスタイルでUXに取り組む楽しさを次世代に伝えています。

日々、テクノロジーに向き合いながらも、リアルな人間の思いも大切に、新たなチャレンジに挑み続ける4人。

後編では、同社のMA導入をサポートした弊社営業本部の稲垣 亮太、コンサルタント 大里 紀雄を加え、さらに個性あふれるメンバーの横顔、マーケティングにかける思い、将来の展望も掘り下げていきます。

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