デジタルマーケティングのコンサルティング会社である株式会社プリンシプル取締役副社長/チーフ・エバンジェリストの木田 和廣氏をお迎えした「Tomorrow's Marketer」は前後編の2部制でお届けしています。

前編に引き続き、後編では木田氏の大切にされている仕事観や、今後の展望について、弊社 シニアビジネスコンサルタントの大里 紀雄とともに、語り合っていただきました。

マーケターのキャリアプランニングはT型を目指せ

大里:今、データ・ドリブン・マーケティングという言葉を頻繁に耳にしますが、むしろ「うちはデータ・ドリブン・マーケティングをしています」というのは、「うちは決算を出しています」っていうのと同じくらい普通の話になっていくと思うのですが、いかがですか。

木田氏:データ・ドリブン以外に、何があるの?という感じですよね。

大里:ですよね。そんな中で今後マーケティングや経営をしていく上で、必要なスキルやモチベーションってどんなものが挙げられますか。

木田氏:今はマーケティングのテクノロジーがビッグバンみたいに爆発していて、ソリューションがたくさん出てきていますよね。だから、ひとつは広い視野を持つことが大事。でもそれだけではダメで、その中でひとつの分野を深堀りする必要がありますよね。自分のキャリアをT型で創造しなくてはいけないと思っています。例えば、"BigQuery"という言葉を聞いたときに、ぽかんとしていてはダメで、Google Cloud Platformで提供されているビッグデータ解析プラットフォームだということくらいはわかっていて当然です。その上で、SQLを書いて必要なデータを取り出すことまではできません、と言うならいいと思うんですけど、端から知らないというのではマズイ。マーケティングオートメーション(MA)ならメインの3つくらいは、言える必要があるでしょう。

大里:なるほど。

木田氏:仕事って、結局は"人から頼まれること"だと思うので、ただ幅広い知識があるだけでは、何も頼みようがないんです。だからこそT型で、何かひとつ足を深く伸ばす専門分野が必要になる。

大里:私、若いマーケターの方でちょっと心配しているのが、特定のツールの扱いには長けていてすごいんだけど、意外にマーケティングのことを知らないんですよね。「コトラーって誰ですか?」レベルで。最近はマーケターの間口が広いので、どこからでも入れるじゃないですか。Googleアナリティクス(GA)だって無料だし。例えば、GAの使い方がすごく詳しかったとしても、それだけではマーケティングではないと思うんです。ベースとなるマーケティングの知識があった上で、幅広い知識を持ち、なおかつ飛び抜けるところがないと。

木田氏:それはそうですね。私が言うT型の縦軸は、ツールのことではありません。マーケティングの素養があるのは、大前提の話です。

木田和廣が考える、プロフェッショナルとは何か

大里:木田さんが仕事で大切にしていることは、何ですか。

木田氏:NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』って番組があるじゃないですか。私もいつか出たいと思っているんだけど。あの中で必ず「プロフェッショナルとは何ですか?」という質問がありますよね。私も自分はプロだと思っているから、私なら何て答えるだろう?と考えながら、すごく興味を持って聞いているんです。そこで考えた答えのひとつが、"期待以上のものを返すこと"です。木田さんに頼んだらこのくらいかなっていうのが100だとしたら、いつも120は返していきたい。私はセミナーにもよく登壇するんだけど、絶対に一度たりとも手を抜いたことはありません。私は自分が芸者だと思っているので、必ず期待以上のものを返さないと、一度失望させたら、もうお座敷には呼んでもらえないと思っています。だから、いつも真剣勝負だし、受講後のアンケートもデータ化してTableauで分析もするし、その結果をもとに内容をチューニングしています。

大里:さすがですね。

木田氏:もうひとつプロとして大事なことは、"飽きないこと"ですね。仕事は同じことの繰り返しも出てくるんだけど、飽きちゃダメだと思っているんです。同じ作業をしていると飽きてしまいがちですが、データは2度と同じものはないし、月が変われば違うデータになってくる。なんで飽きちゃいけないかというと、積み重ねによって得られるものは必ずあるし、何よりもお客様に失礼だから。いくら知識があっても、したり顔で、好奇心も失っていて、定型で仕事をしているような人に頼むのは、嫌なものですよね。

大里:私は飽き性なので、耳が痛いです。飽きないために工夫していることがあれば、ぜひ教えてください。

木田氏:どんな仕事でも、必ずどこかに"Something New"があると思って臨んでいるんです。『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』という自分の強みを見つける本で、私の一番の強みは学習欲だったんです。だから私は"この仕事の中できっと学べるものがある"と思うと、俄然やる気が湧いてくる。この仕事から学べることは何だろう?このデータからどんな学びがあるだろう?このお客様からの学びとは?と、鵜の目鷹の目で常に探しています。

大里:だから進化できるんですね。

木田氏:私は学習欲のほかにも、コミュニケーション・達成欲・分析思考が強くて、Web解析コンサルタントは天職だと思っています。

"おじさん力"で人生100年を全力で楽しむ

大里:そういえば、以前お話されていた"おじさん力"について教えていただけますか。

木田氏:男性は誰しもおじさんになっていくじゃないですか。年齢を重ねた分だけ人間力を身につけなければならないと思っていて、それを"おじさん力"と呼んでいます。例えば、あるセミナーに参加して、5分くらい巻いて終わってしまい、主催者としてはもう少し尺を伸ばしたいので「何か質問はありませんか?」と会場に投げかける。そこで誰も挙手しなければ、主催者は残念な気持ちになるし、有料セミナーだとしたら参加者の中には損した気持ちになる人もいる。そんなときに代表して質問してあげるんです。もちろん助け舟を出してやったなんてアピールする必要はまったくないんですよ。自分のことを客観視しながら八方にレーダーを張り巡らせて、周囲の人の気持ちを察して行動に移せる人間力、それが"おじさん力"です。"おじさん力"を上げれば、周りからの評価が上がり、人気者になって出世もするだろうし、どこにいても求められる存在になるでしょう。私はこの"おじさん力"について、原稿持ち込みで本を書こうと思っているんですよ。

大里:いいですね。もう書き始めているんですか。

木田氏:いや、次のゴールデンウィークに書こうと思っています。私はゴールデンウィーク・お盆・お正月の長期休暇の時期には、必ず何かしらのプロジェクトを立てて、絶対に食っちゃ寝で時間を浪費しないんです。この前のお正月にはTableauに関するUdemyのオンライン講座を作りました。講座自体は合計11時間半なのですが、準備にその4倍くらいの時間がかかりましたけどね。こういった平日にはできないことができるから、長期休暇が楽しみでしょうがない。

大里:すごいなぁ。

木田氏:私は今51歳なんだけど、60歳までは今のようなフロントランナーで突っ走ろうと思っています。だから絶対に弱音は吐かないし、歳をとったからなんて言い訳はしません。60歳は次の人生へ切り替えるチャンスだと思っていて。私は100歳まで生きる予定なので、あと40年はこれまでとまったく違うことをやってみたいんですよ。今の仕事以外のこともできる状態にしておきたい。だから次の40年に向けた布石として、"おじさん力"で本を書こうとしているし、新たに船釣りも始めました。料理も好きだから、自分で釣った魚を料理して振舞うのも楽しいだろうし、外国へ行くかもしれないしね。自分でデザインして切り拓いていく人生って、素敵だなと思っているので、逆算思考で動いています。

大里:すごくいいですね!

木田氏:こういうおじさんもいるんだよ、というのを伝えていきたいですね。

大里:今日はたくさんの示唆をいただき、ありがとうございました。

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