これからのマーケティング、マーケターのあり方について、ズバリ斬り込む企画「Tomorrow's Marketer」。今回はリーダー対談として、アスクル株式会社でフューチャープラットフォームアーキテクチャ CITO/CDO 執行役員 テクノロジー本部長、カスタマーサービス本部長を務める秋岡 洋平氏と、弊社のバイスプレジデント 小関 貴志の対談をお届けします。

中小企業向けのオフィス用品などを取り扱う法人向け通販サービス「ASKUL(アスクル)」や、日用品を低価格でスピーディーに届ける個人向け通販サービス「LOHACO(ロハコ)」などでお馴染みのアスクル社は、「お客様のために進化する」を企業理念に、様々な領域で業界の最先端を走り続けています。

そんなアスクル社のIT部門をリードする秋岡氏は、実は前職が小関と同じDELLだったということもあり、秋岡氏が歩んだキャリアから、マーケターがIT部門と協働する際に気をつけるべきことまで、幅広い話題について語り合っていただきました。

すべてはお客様のサービスを進化させるため

小関:まずは秋岡さんのこれまでのキャリアと、今のお仕事についてお聞かせいただけますか。

秋岡氏:卒業後、ドイツの多国籍企業であるシーメンスの日本法人に入社して、半導体の事業部で営業企画をやっていました。全部で7年間働いたうち、最後の2年間で基幹システムの立ち上げプロジェクトにアサインされたのが、ITとの出逢いです。それが面白くて、これからのビジネスにはITの力が不可欠だと感じ、もっと勉強したいという思いで、29歳のときに小関さんと同じDELLに転職しました。

最初はヘルプデスクから始まって、最終的には日本のIT部門の責任者になりました。ただ、アメリカのヘッドクォーターが決めたものを、日本にロールアウトするというミッションだったので、もっと自分で物事を判断できるような、ビジネスに近いところに行きたいと思い、36歳のときにアスクルに転職したんです。

小関:物足りない部分があったんですね。

秋岡氏:いろいろな経験を積ませていただいて感謝しているんだけど、ITを使って競合よりも優位なお客様サービスを提供したいし、それを実現するために自分でITのソリューションを選びたいし。それだったら日本の会社に行くしかないと思って、アスクルに転職したんです。

小関:アスクルに入られて、どんなお仕事からスタートされたのですか。

秋岡氏:最初は新規事業のチームに入ったんですよ。今の大企業向け間接材購買サービスの「SOLOEL(ソロエル)」の立ち上げでした。その後、中堅・大企業向け一括電子購買サービスの「SOLOEL ARENA(ソロエルアリーナ)」、中小企業向けの「ASKUL」、さらに個人向けの「LOHACO」と、お客様の購買システムであるフロントの仕組みをすべて経験して、そこへコールセンターが入ってきた感じです。

小関:その順番があって、よかったですか?

秋岡氏:そうですね。お客様と接する売り場とかコールセンターって、会社のすべてが映し出されてしまうところなので、とりつくろえないですよね。全部ガラス張りで、嘘がつけないから。そういう意味では、一番よかったかもしれないですね。

小関:秋岡さんの名刺のタイトルって、日本で一番長いんじゃないかと思いますが、具体的にどんなことをされているのですか?

秋岡氏:まぁ一言で言うと、お客様の満足向上のためのテクノロジープラットフォームを企画・構築・運営することと、もうひとつはコールセンターでお客様の生の声をちゃんと受けてPDCAを回していく役割ですね。要は、お客様のサービスを進化させることは全部やっています。

変化するお客様のニーズに対応するための取り組み

小関:では最近の御社のお取り組みについて、教えていただけますか。

秋岡氏:我々は中小企業のお客様に対して、メーカーさんから直接仕入れた商品を届けるモデルで成長してきました。その後、2012年にヤフーさんと業務資本提携をして「LOHACO」を始めてからは、積極的にデジタルマーケティングに取り組んできました。はじめは数字を見られる人も限られていたのですが、最近になってようやくデータに基づいてPDCAを回す文化が定着してきたという感があります。

小関:秋岡さんのタイトルにCDOとありますが、データをどうサービスに生かしているのか、教えてください。

秋岡氏:最初は、ECでのレコメンデーションやプロモーションで、できるだけお客様に最適な1to1をやりたいということで注力してきました。個々のお客様が欲しい情報を集約したメールを送るとか、離脱の兆候がある方にコールセンターからお電話をかけるとか。

最近、力を入れているのはサプライチェーンです。調達がうまくいかないと欠品したり在庫過多になったりしますし、倉庫のオペレーションがうまくいかなければ商品が破損したり、納期通りに出荷できないといった様々な問題が起こりますよね。そこは、お客様のサービスに直結しているところであり、なおかつあまりデータが取れていないところでもあるので、最近はサプライチェーンを急ピッチでデータ化しようとしているところです。

小関:個人向けのサービスを提供するようになって、求められるサービスも変わってきたということですよね。商品を選ぶポイントも異なるでしょうし。

秋岡氏:そうですね。大きな取り組みとしては、124社のメーカーさんと5社のフレンドシップパートナーさんと一緒にやっている「LOHACO ECマーケティングラボ」です。我々が保有する「LOHACO」のデータをすべて公開して、メーカーさんのマーケティング部門の人と、うちのデータ分析の担当者が一緒にデータを見ながら、新商品開発などに取り組んでいます。"お客様の方をしっかりと見る"というのが、うちの強みの一つだと思っているので、メーカーさんと一緒にお客様に対してサービスの付加価値を上げていくというスタンスですね。

小関:「ASKUL」と「LOHACO」で限定販売している商品もたくさんあるみたいですね。

秋岡氏:はい。例えば花王さんの「ビオレu泡ハンドソープ 」とか「リセッシュ除菌EX」は、店頭で目立つのではなく、家でなじむ"ECならではのデザイン"をコンセプトに作られたものです。

小関:このようなマーケティング活動には、秋岡さんのチームはどこまで入るのですか?

秋岡氏:うちのミッションは、そういうことがデジタル的にできる環境を作ってあげることですね。

物流を進化させるテクノロジー

小関:物流の方では、どんな施策をされているのですか。

秋岡氏:これは物流の進化の一つなのですが、物流センターのこれまでのミッションは、在庫をストックして、ピッキングして、梱包して出すということだったのですが、我々はLOHACOの出荷を担う物流センターに「AVC(アスクルバリューセンター)」と名付けて、新たなバリューを創るところに重きを置いているんですよね。そこで生まれたのが、この納品書です。

一人ひとり異なるお客様の行動履歴や購買履歴から、最適な商品をピックアップして、クーポンを印刷したりサンプルを付けたりしているんです。これのいいところは、納品書は昔から付けているものだから、作業工数は増やさずに、お客様への付加価値を上げられているところなんですよ。

小関:確かに、せっかくいい商品だったとしても、最後のお客様に届くところでミスってしまうと、すべてブランドに影響してしまうこともあるでしょうから、リアルな顧客接点という意味での物流は大きな意味がありますよね。

秋岡氏:そうですね。配送のドライバーはラスト1マイルで必ずお客様と接点があるので、そのドライバーのサービスを上げたいんです。もちろんドライバーのマナーもありますが、お客様が欲しい時間にオンタイムで届けられるよう、データを活用したルートのナビゲーションに取り組んでいるところです。

小関:そこまでされるんですか!

秋岡氏:「Happy On Time」というサービスで、まだ対応できているのは東京と大阪の一部ですが、自社で配送しているエリアに関しては、どういう順番で運ぶと、一番効率的かつ時間通りに運べるかというのを計算して、ルートをプランニングするんです。お客様は荷物の受取り時間を1時間単位で指定でき、配送当日に30分単位のお届け時間を通知するほか、お届け10分前にもお知らせしています。それによりHappy On Timeをご利用いただいているお客様の不在率は2%となっています。

あとはコールセンター。チャットボットを使って、コミュニケーターを介さなくても解決できるようなことであれば、チャットでコミュニケーションしてもらうことで、効率化を図っています。

後編では、マーケターがIT部門に仕事の依頼をするときに気をつけたいコミュニケーションの秘訣や、秋岡氏が仕事をする上で大切にされていることなどについて、さらに深いお話を伺っていきます。

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