今回は、マルケト本社ブログの中から、著者Casey Careyの「The Practical Guide to Artificial Intelligence for Marketers(マーケターのためのAI実践ガイド)」を取り上げます(原文はこちら)。

Fearless Marketerのための2019年予測とトレンドの記事では、AI活用の展望について、次のように紹介しました。

"「人工知能(AI)」はデジタルトランスフォーメーションの中核になるでしょう。いまこの時代に成功を収めている企業は、マーケターの能力を強化し、パーソナライズ性を高めるためにAIの力を活用しています。企業はより精緻な行動予測を実現するために、顧客行動のより細かなモニタリングの実施、パーソナライズされたコンテンツの作成、チャットボットなどのテクノロジー活用に取り組んでいます。この種のテクノロジーの進化につれ、結果として、よりシームレス、かつエンドツーエンドのカスタマージャーニーを提供するのに役立つ、パーソナライズド・キャンペーンが実現可能になります。2019年は、AIがよりマーケターに普及、浸透していくことを期待しています。"

AIへの期待が高まる中、AIをマーケティングに活用できないかと考えているマーケターも多いのではないでしょうか。ただ、何から始めたら良いか、よくわからないというケースも多いかと思います。

具体的にマーケティングにおいてAIの活用が特に進んでいるシーンは、大きく分けるとコミュニケーションと、需要予測の2つと言えるでしょう。それぞれ、どのように活用され始めているのか、具体的に見ていきましょう。

コミュニケーション × AI

コミュニケーション領域でのAI活用のメリットは、主にパーソナライゼーションとターゲティング精度の向上です。これを顧客目線と運用者である企業目線で紹介します。

顧客へのメリット

今日、最もAIの活用・導入が進んでいる分野は、コミュニケーションの自動化とパーソナライズです。B2Cで例えるとアマゾンのような『この商品を買った人はこんな商品も買っています』が良い例です。これは、B2BとB2Cを問わず、パターン分析をAIで行い、顧客が必要とする情報を、適切なタイミングと適切なチャネルで提供することでカスタマーエクスペリエンスを向上させるというものです。マルケトのContentAIも、顧客エンゲージメントの改善に向けて、マルチチャネルコンテンツをパーソナライズする人工知能です。

"顧客は説得力のある、自分との関連性が高いエクスペリエンスを望んでいます。一つひとつのコミュニケーションが、自分のニーズを深く理解したものであることを期待しています。AIに機械学習させることで、マーケターは、コンテンツの選択と配信プロセスにおいて潜在顧客により多くの価値を提供することができます。"

"AIは、過去のチャネルパフォーマンスと個客の好みに関する情報に基づき、潜在顧客とエンゲージする最適なタイミングと場所を決定する手助けができます。"

運用する企業へのメリット:「ターゲティング」と「アラート」

ターゲティング

AIは、過去の顧客属性データや行動データに基づき、企業である私たちが求める顧客像を特定することができます。

"AIは、私たちの顧客に対するインサイトを深め、コミュニケーション対象(オーディエンス)の選定とセグメンテーションの改善を手助けします。[...]AIは、ある顧客像に類似するオーディエンス、つまり既にコンバージョンした顧客の特性を持つ個人を予測することができます。過去の行動に基づいて対象顧客を特定するツールがあれば、マーケターは、よりカスタマイズされたエクスペリエンスを潜在顧客に提供できるのです。"

アラート

ターゲティングしたのち、私たちがマーケティングや営業活動を行う際、適切なタイミングでメールを配信したり、広告を打つのを支援するなどのAIの活用方法も進んでいます。実際にマルケトの裏でAIが分析し、スマートキャンペーンの実施条件を自動で変えるなどの機能もありますが、まだ日常業務に取り入れて使用している企業は少ないのが現状です。

一定数以上の施策を定期的に実施していれば、振り返りの分析は可能ですが、毎日のある瞬間に何をすべきかを決定するには不向きです。そこでAIに教師データを与え機械学習させ、最適な相手へ(Right Person)、最適なタイミングで(Right Timing)、最適な内容を(Right Content)、最適な手段で(Right Channel) コミュニケーションするための組み合わせを自動で選定してくれるような仕組みをAIでつくり、社内のマーケティング・営業活動を効率化することができます。

"マーケターは、次に何をすべきか、すべきでないかを絶えず判断する必要があります。しかし、履歴データを活用してその意思決定を自動化する術があるとしたらどうでしょうか。AIを活用し、手動またはルールに基づくシーケンスを自動化すると、効率が向上し、手動プロセスで頻繁に発生するエラーを減らすことができます。多大なコンテンツオプションと、パラメータを使用し、AIはあらゆる組合せをテストすることで、理想型を判断し、時間経過とともに最適化することができます。"

需要予測 × AI

顧客の生涯価値や需要を予測し、マーケティング活動を最適化するためにもAIが活用され始めています。この領域には伸びがあり、2019年以降、日本国内で取り組む企業が増えることが予想されます。

"行動を予測するためにAIというアプローチをとることで、コンバージョンレートや顧客の生涯価値などの重要な数値を予測しながら、よりパーソナライズされたエクスペリエンスを顧客に提供することができます。マルケトContentAI は機械学習を使用して、過去に購買に至った顧客の行動に基づいて、訴求力のあるコンテンツを配信します。特定のオーディエンスにとって最も興味深いであろうと思われる10件のコンテンツをリアルタイムで予測することもできます。顧客がエンゲージする量が増加すればするほどテクノロジーはよりスマートになり、よりカスタマイズされたものになります。"

ただ、AIの導入・活用には次のポイントに注意しましょう。

テクノロジーではなく、戦略を先決させるべし

まず、「AIを活用してみたいから」という理由で、他社で多く採用されているAIソリューションを導入するのは危険です。まず、何をしたいのか、目的と戦略を策定し、それらを満たすテクノロジーを検討導入すべきです。また、テクノロジーそのものにおける専門性はマーケターには求められていません。むしろ、マーケターはAIを活用できる、解決すべき課題を特定するスキルが必要、と筆者は述べています。

"[...]AIに関する技術的専門用語は、コンピュータやデータサイエンスの背景を持たない人の目には脅威的に映るものです。しかし、マーケターは、AIソリューションに使用されるアルゴリズムが何かを知る必要はなく、むしろ理解すべきところは、AIを戦略的に活用する方法と、それがどのようにビジネス成果の向上に役立てられるかです。"

"[...]マーケターは、AIソリューションの裏にあるテクノロジーを理解しようとするのではなく、それらを活用する機会を見つけることに意識を向けるべきです。インサイト獲得や意思決定を促進するために、もしも使用されていないデータがあれば、それこそが効率化に向けて注目すべきポイントであり、AIを活用すべき箇所です。データセットが複雑になればなるほど、意味のある結論に結び付けるのは難しくなります。「このデータを活用するためにはどうしたら良いか?」と考えるシーンがあるならば、そこにAIの活用ができないかぜひ検討してみてください。"

AIの活用にはデータが一定以上必要。蓄積せよ。

そもそも、自動化をしない分析業務においても、十分な量と厳選されたデータパターンのデータセットを用意できなければ、分析業務に移行することはできません。同様に、機械学習AIの活用においても、AIに学ばせるための、いわゆる教師データが必要となります。したがって、現時点でデータが不足している場合は、やりたいこと、やるべきことをまず明確にした上、必要となるデータセットを蓄積し始める必要があります。筆者も、AIの賢さは、与えるデータ量に比例すると主張しています。

"構築したモデルがどんなに優れていても、AIが異なる結果をテストするのに十分な多様性が担保された一定以上のデータ量がなければ、確からしさは得られません。AIとは結局、"人工の知能"です。その知能は、与えたデータの分だけしか賢くなりません。"

また、コミュニケーションの最適化をAIで行う場合も同様で、既存コンテンツの数が限られていれば、AIで最適化するまでもないことは明らかです。

採算が合わないところに投資すべからず

人が介在する場面が多いビジネス形態であるほど、受注規模が大きくなる傾向があることを鑑みると、一見AIの投資対効果が得られるのは人間系の介在が多い事業なのでは、と思われがちです。しかし、販売プロセスの中で、営業のクロージングなどを含めて、人間による対応が最も適しているシーンを、デジタルに置き換えるというのは2019年2月現在では非現実的でしょう。したがって、人が介在しないでも運用可能な部分を効率化・最適化するために、AIを活用するのが得策と言えるでしょう。AIに限ったことではありませんが、投資対効果が得られるという試算結果にならないのであれば、当然導入は避けるべきです。

昨今、AIの進歩に伴い、マーケターは更なる武器を手にしました。ただ、まだ実用レベルでは初期段階にあります。また、デジタルに精通した顧客の企業への期待度も高まっているのも事実で、顧客の状態に合わせてパーソナライズを行うことが当然のように求められています。筆者は、AIを夢物語で終わらせないためには、しっかりと課題と目的を明確にすること、AIを活用して自社が実現できることや費用対効果を正しく評価すること、理解したうえで導入を進めていくことが前提となる、と主張しています。

"AI関連の"誇大広告には、がっかりさせられることも少なくありません。新しいテクノロジーが大袈裟な形で宣伝され、導入後にテクノロジーが過度の期待に応えられなければ、当然私たちは幻滅し、AIに対して懐疑的になります。実際、調査会社ガートナー社は、これを同社の「ハイプ・サイクル」モデルの中の、「幻滅期」と呼んでいます。また、情報漏洩や受取り手に不安を与えるパーソナライゼーションなどという失敗によって、せっかくの潜在顧客を遠ざけてしまう危険性があります。"

以上のトレンドと注意点を、AIという武器の適切な導入・活用判断に活かしていただければと思います。

今回は、「FearlessマーケターのためのAI導入~活用検討ガイド」のブログ記事をご紹介しました。