市場のグローバル化、デジタル技術の進化・普及などを受け、BtoBマーケティングへの注目度がさらなる高まりを見せています。組織全体の意識改革、導入・運用体制の構築、データの収集・活用法といった、さまざまな検討材料が存在するなか、マーケティング戦略を成功に導くポイントはどこにあるのでしょうか。

「Marketing Nation Summit 2018」で行われた当セッションでは、2012年よりBtoBマーケティングの立ち上げと変革に取り組んだKDDIまとめてオフィスの5年間のチャレンジ、取り組みについて、同社取締役副社長の窪田 靖氏、サポート役として伴走したBtoBマーケティング専業エージェンシー・2BC 代表取締役社長の御手洗 友昭氏の2人に語っていただきます。

「顧客を知る」からスタート。施策改善を繰り返し、小さな成功を蓄積

KDDIまとめてオフィスは、2011年2月、法人向け各種通信・ソリューションサービスをワンストップで展開すべく、KDDIの関連会社として設立されました。さらに、スマートデバイス・クラウド普及による市場拡大を受け、同社では顧客ターゲットを、従来の従業員1000名以上の企業から、全国の中小法人にも拡大。マンパワーによる営業スタイルから、BtoBマーケティングへの取り組みが必須となるなか、窪田氏はその責任者に就任します。

「それまでKDDIアメリカ社長時代、デジタルマーケティングの発展を目の当たりにし、多少の勉強はしたものの、ほぼ初心者としてのチャレンジでした」と明かす窪田氏。

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当初、飛び込み営業で訪問可能率が2%という状況を改善すべく、スタッフと3つの施策、自社開催型セミナー、ペイドメディアによるプレゼントキャンペーン、プロダクト展示型のイベント開催に取り組みました。

ところが、受注数はイベントでの7件以外はゼロという結果に。「さすがに青くなりました」と窪田氏。ここから再起に向けた取り組みがスタートします。

まず、そもそもの問題点として、「お客様を知る」ができていなかったという気づきを得て、顧客の本音を引き出すべくデプスインタビューを実施。購入先や情報収集源などについて聞くなか、次の5つのことがわかったと言います。

・適切なタイミングで情報が欲しい

・少額謝礼がついている簡単なアンケートなら答える

・自分で比較検討できるわかりやすい資料が欲しい

・KDDIは知っているが、KDDIまとめてオフィスはよく知らない

・本業貢献がテーマのWebやセミナーに興味がある

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「これらを踏まえ、先の3つの施策を整理してみると、アプローチしていた層が非常に限定的でした。セミナー、イベント、キャンペーンなどに参加するようなサービス検討段階にある層ではなく、もっと母数が大きい『漠然と課題を持っている』『課題解決手段を探している』、しかも『KDDIサービスをよく知らない』層のライトリードの獲得に取り組み、そこからホットリードに誘導していくことが必要という認識を得ました」(窪田氏)

そこから方針をライトリード確保へシフト。まず実施した「少額プレゼントを提供する簡易アンケート」では、数万規模のリードとともにテレマーケティングのネタを獲得します。

さらに、イベントについては展示にプラスして"カフェ型"による集客を実践。ブースの中央にカフェを設置し、コーヒーを無料提供。そこでタブレットを使った簡単なアンケートを実施したところ、来場者が大勢詰めかけ、「前年、2014年春のイベントでは、リード獲得数700だったのが、15年秋はその5倍の3500を獲得。しかも獲得単価は3分の1と成果を上げることができました」(窪田氏)。

次の課題は、ライトリードをいかにホットリードに育成するか。その"つなぎ"役として設置されたのがコンタクトセンター(コールセンター)でした。

架電による誘導が功を奏し、営業部門への送客数は急伸。ところが順風満帆に見えたところで、数カ月後、突如、送客数が急落します。

「調べてみたところ、ライトリードが急増したこともあってか、その前からアポ率が低下傾向にありました。そこで、アポがOKになる場合とNGの場合の要因を調べたところ、電話をかけるコミュニケーターがお客様のことをよく調べて理解している場合は、アポ率が良く、そうじゃないとNGになりやすいことがわかりました」

そこで、アポOKとNGについて分析を徹底し、見込み顧客を再分析。事前足跡調査の分析も加え、総合スコアリングの高い順から優先的に架電を実施します。

すぐに効果は得られたものの、スコア管理が増え続けるなか、マンパワーが自動化できないか。ツールを模索するなか、出会ったのがMAでした。

当初、Marketoではない他社MAを導入し、CRMと連動、運用をスタートしたところ、3カ月ほどで保有リード、アクティブリード、WebのPV数、滞在時間もアップ。「MA導入により、タイミングを把握することの重要性、成果確認を月1度必ずやる、都度スコアを高める仕掛けが必要など、多くの学びも得られました」と窪田氏は言います。

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さらに「データの蓄積・その管理を高度化をしたい」「パーソナライゼーションを実践したい」と、やりたい施策が増加。より高度なMAを探すなか、Marketo導入にいたります。

そこで新たに問題となったのが、機能・性能アップに伴い、これまでMAを担当していた社員だけでは導入・運用が困難というハードルでした。

そこでサポート担当としてタッグを組むことになったのが2BCです。同社社長、御手洗氏はMA導入に際しては、ビジネスゴールと目的を一致させ推進するべきはずが、MA導入自体が目的化してしまうケースが多いと指摘。今回のケースでネックとなっていたのも、「MAをすでに利用されていたベースはありつつも、戦略と業務とシステムが分断された状態を立て直す必要がありました」と振り返ります。

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リード獲得から商談化まで、マーケターとセールスがしっかりタッグを組むことが肝要

この状況を改善するには、戦略を見据えたリーダーシップが必須。窪田氏は陣頭で指揮をとるなか、3つの改革に取り組みます。

1つ目が、「統合パイプライン管理」でした。すべての活動を一連の流れで管理し、フィードバックによりプロセスを最適化していくことがパイプライン管理の基本ですが、全体の状況が共有されておらず、活動が分断。適切なフィードバックループが不在という状態だったと言います。

「獲得した見込み顧客が何件の案件となり、いくらの受注につながったのか。どの活動が成果につながりやすいのか。早期からしっかり体制を構築することで、各工程のデータを集積、分析し、次工程に生かすことが肝要です」(窪田氏)

2つ目が、データ集約・可視化による「データドリブンアプローチ」の実践でした。従来、個別組織ごとにCRM、SFA、Web、メールなどに見込み顧客の属性・行動データなどが点在するなか、施策も分断。

「まずは組織間の連携を見直し、データの共有からスタートしました」(窪田氏)

また、「データは蓄積されるほど、顧客属性、接触情報、売上実績などをかけ合わせることで、より確度の高いターゲットを導き出すことが可能となる。辛抱強く、時間をかけて取り組むことが大事です」と語ります。

データ分析については、2BCがサポート。KDDIの商材、リードタイムなどを勘案し、同時購買・追加購買傾向の分析や、有望顧客をターゲットとするアカウントターゲティングを実践。データ分析・評価に基づいたコンテンツの量産に取り組んだといいます。

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3つ目が「セリングのモデル化」です。この実装についても2BCがサポートする形で、中堅中小企業をいくつかのセグメントで切り、投入リソースに対する生産性を分析した上で、顧客満足度も担保する形でセグメントごとの適切なセリングアプローチを実践していきます。

また、サイト閲覧行動を踏まえた、Marketoによる行動判定、ナーチャリングの自動化、送客、商談化、分析の一覧のシステムにおいては、随時、分析、数字を踏まえて最適化、改善を図っているといいます。

まさにスモールサクセスの積み上げが成功につながった同社。今も果敢にチャレンジを続ける窪田氏は、米国・アリゾナで行なわれたBtoBマーケターのカンファレンスに参加した際のエピソードを公開してくれました。

参加者の約8割が悩みとして、マーケターとセールスの分断について挙げるなか、成功ユーザーは、これまでのようにマーケティングチームが前で送客し、セールスが後ろで受けるというスタイルはもはや時代遅れと指摘したといいます。

そうではなく、「今やマーケターとセールスは、一人のお客様に対し、リード獲得から最後に商談化するまでタッグを組み、状況に合わせて両者が適切にアプローチをし続けていくことが肝要」と窪田氏は語ります。

最後に、

・失敗を恐れて、短期的な成果を求めてはダメで、小さな成功と小さな利益の積み重ねこそが取り組みを拡大していく

・マーケティングをプロジェクトに終わらせない。ビジネスゴールを定め、会社として最初から組織で向き合っていくべき

・エンゲージメントとは不断の人間的な営み。マーケターは誰よりも顧客を知り、寄り添う姿勢を忘れないことが大事

と3点を総括として挙げ、参加者から大きな拍手が沸き起こりました。