部分最適に陥らないために「戦略シート」を使いこなそう!

部分最適に陥らないために「戦略シート」を使いこなそう!

— 競争戦略「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」ウェビナーレポート —

「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」の著者、小川 共和 氏をお迎えして、2021年1月から全2回のウェビナーを開催しました。「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」でご紹介されている内容を中心に、競合に対して優位に立ちアドボケーターを育てていくための競争戦略の立案、そして戦術、施策に落とし込んでいくために不可欠な、戦略シートの作成法をご紹介頂きました。本稿では第2回目となる「戦略シートを作成しよう」の内容をお届けします。

目次

戦略シートはマーケティング全体を俯瞰するための羅針盤であり設計図

前回のウェビナーでは、マーケティング戦略を立てることの重要性について、お話ししました。しかし、「マーケティング戦略が精緻にできあがっていなければ、施策の立案・実行してはいけないのか?」という問いに対する答えは、NOです。

なぜなら、マーケティング戦略には、ターゲット戦略・セグメンテーション戦略・ポジショニング戦略など、数え切れないほど多くの種類があり、すべてを完璧に詰めてから始めようとすると、施策の立案にたどり着くまでに頓挫してしまう可能性が高いからです。

そもそもマーケティング戦略には、中長期的視点でのシナリオを描き、個々の施策立案・実行の方向性を占める「羅針盤」としての役割と、全体のゴールに対して個々の施策をどう位置付けるかという「全体の設計図」としての役割があります。

全体の設計図としてのマーケティング戦略がないまま、個々の施策の立案・実行に終始すると、どうしても部分最適に陥る危険性が高まります。特にデジタルマーケティングは、成果が数字でわかりやすく見える化されているからこそ、目の前のわかりやすい数字だけを追いかけてしまいがちだからです。

すなわち、マーケティング戦略を立てながら、同時にデジタルマーケティングをスモールスタートさせるには、最小限の決め事としてマーケティング戦略をフレームワーク化した「戦略シート」を作成しておくことが肝要なのです。

ここからは、戦略を施策に落とし込むために活用できる3つの戦略シートについて、お話しします。さっそく始めましょう。

「ターゲット戦略」の戦略シート

まずは「ターゲット戦略」の戦略シートです。ターゲット戦略では「どんなニーズ(期待)を持つ人か?」「どんなプロフィール(人物像)の人か?」の2つの要素を規定していきます。

たとえば工場用コンプレッサーで言うと、「どんなニーズ(期待)を持つ人か?→工場の省エネを推進したいと考えている」「どんなプロフィール(人物像)の人か?→中規模メーカーの生産企画部長」といった具合です。

伝統的マスマーケティングにおいては、この2つで十分ですが、デジタルマーケティングの場合、これらに加えて「どんな検索ワードを入れる人か?」も考えなければなりません。

さらに工場用コンプレッサーのようなB2B商材などにおいてエンゲージメント・マーケティングを行う場合には、エンゲージメントの「スタートの状態」「ゴールの状態」も定めておく必要があります。最初に出逢ったときにはどんな状態で、そこからナーチャリングを行った結果、最終的にどんな状態になってほしいのかを規定しておくのです。

ここまでの流れを図解すると、以下のような戦略シートになります。

ターゲット戦略の戦略シート

ここに先ほどの工場用コンプレッサーの例を当てはめると、次の通りになります。

ターゲット戦略の戦略シート作成例

「行程戦略」の戦略シート

「行程戦略」とは、1人の顧客と長期間の関係構築を図る「エンゲージメント・マーケティング」において、全体をいくつかの行程に分けながら、各行程の課題や目標を定め、そのためにどんな施策を打つべきかの基本設計をするものです。

今回は便宜上、リードジェネレーション・リードナーチャリング・クロージング・CRM(既存顧客向け施策)の4つに分けて考えます。

行程戦略はここまでは便宜上4つに分けます

各行程において、以下の図を埋めていきます。各行程のスタート地点の客はどんな心理で、どんな行動をとっているのか。それをゴール地点の心理や行動に持っていくために、どんなコンテンツをどんな手法で届ければいいのか、と考えていくのです。

行程戦略の戦略シート:基本形

実際に書いてみましょう。今回の例では、マーケティングオートメーションを提供しているベンダーを想定しています。

まずはリードジェネレーションから。スタート地点で「商談数を3倍にしろと経営者から指示された。どうしようか...」と考えた客がMAを比較するために「検索を開始」します。ここでのゴールは客に「A社(自社)B社C社の何かが解決してくれるかも。さらに深く検討しよう」と思い、「自社のメール会員登録」をしてもらうことです。そのために「MAの機能・商談拡大効果や自社MAの特徴/実績」のコンテンツを作成し、「リスティング/リターゲティング広告/コンテンツマーケティング」といった手法を使って届けていきます。

行程戦略の戦略シート:リードジェネレーション

このように他の行程についても戦略シートを作成していきましょう。行程の中にはスタート地点からゴール地点までの間に、中間地点を設けたくなることも出てくるはずです。そんなときは、次のように行程をさらに細分化した戦略シートを作成していきます。

行程戦略の戦略シート:行程細分化形

例えばCRMの行程を細分化してみると、こんな戦略シートになります。

行程戦略の戦略シート:CRMの行程細分化

「競争戦略」の戦略シート

「競争戦略」の詳細については、第1回目の記事をご参照ください。いずれの競争戦略をとるにしても、戦略シートは同じものとなります。

ブログマーケティングの失敗要因は戦略の間違いにあった!
-- 競争戦略「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」ウェビナーレポート --

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競争戦略の戦略シートとは、競争相手との比較表です。それぞれの選択要因において、自社と競争相手を客観的に比較しながら、自社の強みをあぶり出していきます。

競争戦略の戦略シート

ここで必ずしも自社を一番左に持っていく必要はありません。B2Bであれば、クライアント企業の課長が経営者の決裁を得るときに作成する資料をイメージしながら、「◎・◯・△・×」などのマークを用いて比較表を埋めてください。

    競争戦略の戦略シートを作成する際のポイントは2つ。
  • 選択要因の選別は、自社の強みが浮き彫りになるよう、戦略的に列挙すること。
  • 評価は客観的かつ公正にすること。手前味噌になっては、絶対にダメです。

次に、競争戦略の中でもよく使われる「差別化戦略」の戦略シートを実際に書いてみます。差別化戦略は、弱者の中でも比較的強い、No.2やNo.3の弱者が採用することの多い戦略です。他の競争相手とは異なる価値を訴求し、その違いを客に理解・評価させることで、競争優位を獲得していきます。

ここで忘れてはならないことは、機能はあくまでも機能であり、客にとっての価値ではないということです。技術志向の強い会社は、どうしても製品の機能に目が向きがちですが、ここで比較すべき選択要因は「機能ではなくお客様にとっての価値」であることを念頭に置かなければなりません。

仮に、こんな戦略シートができたとします。

差別化戦略の戦略シート

自社Wは3番手か4番手。競争相手A・Bという2強がいる市場だと想定してください。こうして戦略シートを書いてみると、自社が選ばれるような圧倒的な強みがないことがわかります。これじゃまずい。新たに「潜在顧客の取り込み可能」という選択要因を付け加えて、差別化をしかけましょう。

差別化戦略の戦略シート

この価値を提供しているのは自社だけなので、圧勝する構造ができました。しかしながら、当然ライバルたちは黙っていません。特に競争相手AとBは潤沢なリソースのある強者ですから、短期間で追随してくる可能性は大いにあります。さらに最悪の場合、強者からの激しい反撃に遭うこともありえます。圧倒的な開発力で新たな強みを潰されるばかりか、もぐらたたきにされて生存が危うくなることさえあるのです。

つまり、競争戦略では、「自社の戦略を立てたら、一度ライバルの立場に立って、どんな動きを見せるのか、その反応を想定した上で、改めて自社の戦略を考えてみる」というスタンスをとることが肝要なのです。

再度自社Wの視点に戻る

差別化戦略が成功するも失敗するも、すべてを決めるのは客です。「違う、違う、と言っているけれど、何が違うのか、よくわからない」「確かに違うかもしれないが、だからいったい何だと言うのか?私にとってはどうでもいいことだ」と思われているようでは、差別化戦略は失敗です。

    お客様に自社の価値を理解して評価してもらうためにできることは、次の3つです。
  • お客様の話を傾聴する。定性調査やソーシャルリスニングによって、客の心理を洞察する
  • 満足した体験者の声を最大限に利用する。満足した客を少数でも丁寧に育てる
  • 権威に助けてもらう。権威ある有識者・メディアを味方につけて発信してもらう

前回もお伝えした通り、マーケティングは3C(Customer・Competitor・Company)間における心理ゲームです。王様であるCustomerに振り向いてもらうために、Competitor(他社)とCompany(自社)が心理戦を繰り広げます。

今回は差別化戦略を取り上げましたが、他の競争戦略でもこのシートは使えます。あなたもぜひ一度、自社の戦略シートを書いてみてください。

いつでも顧客目線を大切に。

本記事のウェビナーのアーカイブ動画をご覧になりたい方は以下よりご覧ください。

戦略から始めるエンゲージメントマーケティング 戦略シート作成編

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