マーケティングの失敗要因は戦略の間違いにあった!

マーケティングの失敗要因は戦略の間違いにあった!

— 競争戦略「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」ウェビナーレポート —

「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」の著者、小川 共和 氏をお迎えして、2021年1月から全2回のウェビナーを開催しました。「戦略から始めるエンゲージメントマーケティング」でご紹介されている内容を中心に、競合に対して優位に立ちアドボケーターを育てていくための競争戦略の立案、そして戦術、施策に落とし込んでいくために不可欠な、戦略シートの作成法をご紹介頂きました。本稿では第1回目となる「競争戦略編」の内容をお届けします。

目次

なぜ今日のマーケティングに競争戦略が必要なのか?

マーケターのみなさんは、日々デジタルマーケティングを実践する中でアクセス解析ツールやMA、CRMなど、さまざまなツールを使いこなしながら、顧客の行動履歴をご覧になっているのではないでしょうか。しかし、これらのツールを駆使しても可視化できないのが「競合企業の存在と動き」です。

当然のことながら、マーケティングをしているのは決して自社だけではありません。自分がどんなに一生懸命に施策を実施しても、自分より強いライバルが現れれば、お客様はそちらを向いてしまいます。マーケティングは決して自社とお客様の関係だけを見ていればいいわけではないのです。ライバルに打ち勝つにはどうすれば良いのかを考えなければ、成果には結びつかないという弱肉強食の世界であることを忘れてはなりません。

マーケティングは3C間の心理ゲーム

実際は、この図のように、王様として表しているお客様に振り向いてもらおうと、多くのライバルたちがアピールを仕掛けています。これはある種の心理ゲームとも言えます。このように、自社に振り向いてもらうために競争戦略が必要なのです。

マーケティングの失敗の80%は、自身の競争力の過大評価に由来する

誰かと戦うときに最初に考えることは、自分が相手よりも強いか弱いかですよね?なぜなら、それによって戦い方が変わってくるからです。これはマーケティングでもまったく同じ。戦い方を決めるために、「自分は強者として戦いに挑むのか、弱者として戦いに挑むのか」を、まず見極めなければなりません。

「マーケティングの失敗の80%は、自身の競争力の過大評価に由来する」と言われています。つまり、本当はなんのアドバンテージも持たない弱者であるにもかかわらず、強者としてマーケティングの戦いに挑んでいることが、最大の失敗要因であるというわけです。

強者の戦略

強者の戦略とは、自らのアドバンテージをフルに使って、全方位・総合力で勝つということ。100点中全科目80点以上取るようなイメージです。ここで言う強者とは、必ずしも売上やシェアがNo.1というわけではありません。技術力・営業力・マーケティング力・資金力など、あらゆる面で他者を圧倒できるのであれば、ゼロスタートで強者の戦略をとることも可能です。強者の代表的な競争戦略には、「マインドシェア戦略」「コストリーダーシップ戦略」「もぐら叩き戦略」の3つがあります。

・マインドシェア戦略
マインドシェアとは、アンケートで「◯◯といえばどの商品を想起しますか?」の問いに最初に答えた商品名の割合のこと。「◯◯といえば、やっぱり◯◯だよね」という存在感の大きさで勝負をする。

・コストリーダーシップ戦略
「特に突出した特徴があるわけではないが、モノがそこそこ良くて安いなら、選ばない理由はない」というもの。ただしスケールメリットが必要なので、一般的に大規模な企業の戦略となる。

・もぐら叩き戦略
「出る杭は打つ」「挑戦者に勢いがつく前にことごとく潰す」戦略。実際に多くの業界で行われている弱肉強食むき出しの戦略と言える。

弱者の戦略

一方、弱者の戦略には2つの選択肢があります。1つ目は"安い、早い、近い"を売りとした「追随戦略」をとる方法。2つ目は自身の強みを先鋭化した「差別化戦略」「ニッチ戦略」「一点突破戦略」で、リソースを集中投下する方法です。強者はほんのひと握りしかいませんから、基本的には弱者のマーケティングをしなければならないということです。

・追随戦略
秀でているものはひとつもないが、価格が安ければ多少は売れる、という戦略。企業が無自覚で行っていることが多い。市場が拡大している間は良いが、「需要<供給」になると途端に窮地に陥る。

・差別化戦略
強者の提供している価値との違いをアピールする。その違いが「新たな価値」として認識・評価されれば、強者を脅かすほどの強いインパクトを与える。

・ニッチ戦略 限られた少数の顧客の中でNo.1もしくはOnly1になることを狙う。大きな成功は得られないが、小さな世界の中では競争相手のいない幸運な状態となる。デジタル時代だからこそ成立するようになった競争戦略。

・一点突破戦略 いくつかの選択要因の中で「これだけは強者よりも、うちが一番」を狙う。バランスは良くないが、評価してくれる顧客はニッチ戦略よりもはるかに多い。ただ商品の機能は二律背反になりがちであるため、技術力が必要であり、マーケティングだけで実現できるものではない。

とはいえ、強者の地位は永久的に安泰というわけではありません。市場環境の変化や顧客心理の移り変わりなどによって、強者の戦略にリスクが生じれば、それは同時に弱者にとってチャンスが生まれることになるわけです。たとえ頭の良いマーケターであっても、自社の商品には愛着があるため、客観視するのは難しいもの。実際に、強者が新しい市場に行ったときに、弱者であることを忘れて失敗するケースが非常に多いことは、覚えておきましょう。

エンゲージメントマーケティングならではの競争戦略を考える

次に、エンゲージメントマーケティングならではの競争戦略について、ご紹介します。エンゲージメントマーケティングとは、潜在顧客から見込み顧客、顧客、ロイヤル顧客/ファン/アンバサダーへと育てていく、ひとりのお客様と長い関係を続けていくマーケティングのことです。この競争戦略で優位に立つポイントは、強者は「すべての競争に参戦し、すべて勝つことを目指す。苦手を克服し、完全制覇を目指す」、弱者は「すべての競争ですべて勝つのは難しいため、勝てる競争を選んで参戦し、リソースの選択と集中を図る」ことです。

エンゲージメントマーケティングでは、それぞれの工程によって異なる競争戦略をとることになります。以下の図をもとに、それぞれの工程で何が起きているのか、見ていきましょう。

エンゲージメントマーケティングならではの競争戦略

【前半第一回戦】解決策間の競争

最初の競争は、直接の競合商品ではなく、他の解決策との競争になります。たとえば、お客様が「◯◯の悩み 解決策」と検索した場合、検索結果の一覧の中に貴社の商品は出てくるでしょうか?まったく異なるカテゴリーの商品や解決策がズラリと並ぶのではありませんか?これらすべてが競争相手となるため、「他の解決策ではなく、うちの商品が属するカテゴリーが提供する解決策を選んでください」と説得しなければならないのです。

【前半第二回戦】有力候補に生き残る競争

競合商品が多すぎる場合、顧客は直感的に(ときに乱暴に)有力候補を選びます。そこで3つの選択肢に残らなければ、比較検討さえされません。強者であれば何もせずとも生き残れるかもしれませんが、それ以外の弱者には厳しい。比較サイトで「◯◯で選ぶならコレ(自社商品)」と紹介してもらえるよう、うまく◯◯を設定できるか否かが勝負どころとなります。

【前半第三回戦】3社間での厳しい比較検討競争

顧客が真剣かつ詳細に比較検討を始めるのは、検討対象が3つ以内に絞られたときです。顧客目線で競合比較表を作成しましょう。自社の良さや強みが浮き彫りになるポイントから、「自社はどこで勝てるのか」を考えながら、評価軸を決めていきます。競合比較表の作成方法や、実際の競争戦略の組み立て方は、第2回のウェビナーレポートでご紹介します。

【後半第一回戦】初期マスター段階での離脱阻止競争

購入した直後は、最も離脱のリスクが高いタイミングです。期待通りの価値を実感できなかったり、うまく使えなくてイライラしたりすると、顧客は簡単に離脱してしまうからです。そのため、購入したばかりの顧客や1回か2回購入しただけの顧客は、「まだ見込み顧客である」と思っておくくらいでちょうど良いでしょう。
逆に、購入した直後は、商品の価値・思想・哲学・世界観を刷り込むには最適なタイミングでもあるので、親切なサポートをするのはもちろんのこと、ときには期待を上回る体験を提供する準備をしておきましょう。

【後半第二回戦】顧客成功に向けた人材獲得・育成競争

ここはいわゆるカスタマーサクセスの段階です。自社商品を使い倒し、購入の動機となった課題解決を支援していきましょう。しかしながら、カスタマーサクセスは顧客のビジネスに深く立ち入らなければならないため、この工程は人材勝負の側面もあります。つまり、人材獲得または人材育成競争であるとも言えます。

【後半第三回戦】アンバサダー育成競争

いよいよ最終戦です。単なる顧客からロイヤル顧客となり、LTVを最大化させるだけではなく、熱烈なファンとして自社の成長をともに促してくれる存在(=新規顧客獲得の最強の宣伝マン)になってもらうのです。自社商品で成功した人が輝いて見えるよう、コミュニティやユーザー会で光を当てましょう。この最後の競争に勝てば、客が客を呼ぶマーケティングエコノミーが完成します。

エンゲージメントマーケティングは、長期間の競争が続きます。特に弱者は弱みの克服に取り組むのではなく、自らの強みを磨くことに集中し、勝てる戦いで勝つことを優先してください。そのためには全体を俯瞰できる設計図を描き、「どこで勝って、どこを捨てるか」を考えるところから始めましょう。

競争戦略を施策に落とし込むには?

ここからは弱者の競争戦略である「ニッチ戦略」を例に、実際に施策立案に落としてみます。

最初にやるべきことであり、最も重要なのは、自社の強みを先鋭化することです。「これだけは他社と違う」ことを探し出してください。それは100人のうち99人に無視されるものであっても構いません。1人が評価してくれれば良いのです。どうしても見つからなければ、創りましょう。

次に、その先鋭化された強みを評価してくれる人を、できるだけ具体的にリアリティを持って想像してみます。できればペルソナ化してみましょう。これがターゲットとなります。

デジタルマーケティングでは、検索エンジンでの検索を想定したキーワードを規定することが肝となります。ペルソナ化した人は、どんな言葉で検索するでしょうか?ペルソナの気持ちになって、実際に検索しそうな言葉を考えます。その際、「キーワードプランナーで検索ボリュームの多いものから重点的に対応する」のは、誤りです。これは強者もしくは追随戦略をとる企業のやり方です。ニッチ戦略は100人のうちの1人を狙う戦略ですから、検索ボリュームが小さくてもトップ表示されること、最低でも1ページ目に表示されることを目指します。対応すべき検索ワードが絞られた分、コンテンツは質・量ともにNo.1を目指すことが大切です。

検索ワードによるターゲット規定

今度は、どの競争に参戦するかを決めます。「【前半第一回戦】解決策間競争」は力のある強者に任せ、パスしましょう。「【前半第二回戦】有力候補に生き残る競争」はどうでしょう?本当にニッチなら競争相手が多数存在することはありませんが、それでも比較サイトでオススメ商品にノミネートされるのに越したことはありません。すでに強みは先鋭化されているのですから、そのユニークな特徴を「◯◯で選ぶならコレ(自社商品)」という形で表現し、それを裏付ける情報を自社サイト内で徹底的に訴求するほか、ピッタリな比較サイトがあれば広告出稿を検討しても良いでしょう。

ターゲットが決まれば、次はコンテンツ企画に入っていきます。ここでポイントとなるのは、「何を伝えるべきか」を考える前に、「ターゲットにどう思って欲しいのか(顧客心理=パーセプション)」を考えるべきであるということです。自社の先鋭化された強みを知った顧客に、どんな評価をしてもらいかが決まった後、100人中1人のペルソナの心に刺さるコンテンツアイデアを考えていきます。

コンテンツとあわせて手法も考えます。特別なニーズの持ち主であるペルソナとの出会いは、Googleの検索エンジンに頼ります。SEOやコンテンツマーケティング、リスティングやターゲティング広告など、手法を検討していきましょう。さらに、貴重な出会いを逃さないよう、MAやCRMツールなどを駆使しながら、長期的に理解を深めるためのコミュニケーションを行なっていきます。

ニッチ戦略をとる弱者のエンゲージメントマーケティングの前半戦では、「【前半第三回戦】3社間での厳しい比較検討競争」に全戦力を集中投下することだけで良いと思います。勝てる戦略に集中しましょう。

ニッチ戦略をとる弱者のエンゲージメント戦略:前半

ニッチ戦略をとる弱者のエンゲージメントマーケティングの後半戦では、最大の資産であるアンバサダーの輩出に注力します。「自社のことを本当に理解して、自社の良さを薦めてくれる人をどれだけ作れるのか」が最終ゴールとなります。少数のリピーターやごく少数のファンにリソースを集中させることが重要です。

ニッチ戦略をとる弱者のエンゲージメント戦略:後半

第2回のウェビナー「競争シート作成編」では、マーケティング戦略を最小限の決め事で行うためのフレームである戦略シートの書き方・使い方についてご紹介します。レポート公開もお待ちください。

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