営業とマーケティングの連携

「コロナの影響で...」という前置きはやめよう。これからの営業パフォーマンスを上げるための視点を語る

2020年以降、新型コロナウイルス感染症の拡大は生活、ビジネスに様々な影響を与えてきました。2022年を迎え、これまでの経験を生かして新しい1年をつくっていかなければなりません。いま、売り手企業の営業、マーケティングには変革が求められています。しかし変革すべき理由を語る時、コロナ禍の影響のみならず様々な因子にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。 今回は、日本マイクロソフト株式会社 第四ビジネスソリューション営業本部 本部長の柳沼慎也氏とアドビ株式会社 執行役員の祖谷考克、そしてモデレーターとして2BC株式会社代表の御手洗友昭氏を招き、お話を伺いました。いずれの対談者も実際にビジネスリーダーとして売上責任を担う立場にあり、日々現場で肌身に感じている声を聞くことができました。

目次

営業パフォーマンスの方程式

まず、今回の鼎談のテーマとして、2BC御手洗氏が次の3点を示しました。

<テーマ>
1. ビジネスの業績はどう変化したか?
2. 現在進んでいる、DX、ビジネスの変革についての考え方
3. 2022年の営業、マーケティング担当者へのメッセージ

1つ目のテーマ「ビジネスの業績はどう変化したか?」については、2021年12月にアドビが実施した「アフターコロナに向けたデジタル戦略に関する調査」の最新調査結果を引用しながら、実情についてディスカッションしました。

まず示したのが、B2Bのビジネスにおいて「コロナ禍以降の業績は横ばい以下」と回答した売り手企業が、デジタルマーケティングツールを導入している売り手企業において約8割、デジタルマーケティングツールを導入していない売り手企業においては約9割であるという結果です。

「アフターコロナに向けたデジタル戦略に関する調査」(2021年9月アドビ調査)より

次に、売り手企業の業績の低迷に影響を及ぼしている実務課題を、課題感の強い順に下記のように整理しました。

(1) 新規商談、営業活動の減少:40%
(2) 既存顧客への深耕営業の減少:25%
(3) (顧客企業の)予算の減少:24%

上記2つの設問は、「新型コロナウイルス感染拡大による業績」、「コロナ禍で直面している課題」を前提とする回答ですが、2BC御手洗氏からは、「コロナ禍の影響が、売り手企業の営業パフォーマンス低迷の主因」として説明されがちな現状への疑問が投げかけられました。

コロナの影響だけが業績低迷の主因と言えるのか?

これは、売り手企業の営業パフォーマンス低迷の事実があったとしても、【「___ 」が課題である】と、次の図に示す方程式のような形で説明ができなければ、十分な理解は得られないのではないかという問いかけです。つまり、実際には、コロナ禍以外にも営業パフォーマンスには様々な影響を及ぼす因子があり、それを直視する必要があることを述べています。

つまるところ

そこで、この方程式に代入するべき因子となる「商談件数」「商談規模」「成約率」と、分母としての「商談期間」が、実際にどのような原因で変化しているのか、柳沼氏、祖谷に迫りました。

さらに、この1つ目のテーマ「ビジネスの業績」の話題を受け、2つ目のテーマ「DX、ビジネスの変革」、3つ目のテーマ「2022年の営業、マーケティング担当者へのメッセージ」についても伺いました。次項より、その内容についてご紹介します。

日本マイクロソフト株式会社 柳沼慎也氏 「現実を見据えて、諦めない心が、成功を導く」

1. ビジネスの業績はどう変化したか?

柳沼氏はまず、コロナ禍が業績低迷の原因と語られがちな、営業パフォーマンスの現状について「そもそもコロナ禍以前から変化が始まっていた」と指摘します。その背景として、インターネットの普及で商環境が変化し、買い手側は自分たちで事前に情報収集を行い、売り手企業に引き合いが来るタイミングが遅くなる傾向があったことを挙げました。

これは方程式の中でいうと「商談件数」に強く影響していると考えられます。コロナ禍はこの状況に拍車をかけた要因の1つと柳沼氏はとらえているとのことです。提案機会の減少や、対面営業回数の低下によるヒアリング不足の発生を招き、これまで以上に売り手企業の変化の必要性が増したのではないかと言います。

また柳沼氏は、「商談状態の見極め」の重要性も指摘しました。世の中でDXの重要性が叫ばれている中で、「とりあえずDXしなければ」と、次のような状態の顧客企業の取り組みに、営業として向き合うケースもあります。

  • プロジェクト化されていない取り組み
  • 予算や目的が明確化されていない取り組み

結果的にこのような状態の商談が増えたとしても、中途で頓挫するケースも多く、成約率を下げるだけだと語りました。

また、営業パフォーマンスを上げるためには、先述の方程式を机上の式とするのではなく、それぞれの因子を意識して、愚直に取り組む必要があると述べています。営業の数字が達成できないと営業担当者がと言うときには、ただ「頑張れ」というのではなく、方程式の因子とそれぞれの数字構造を意識して対話することが重要だと指摘しました。

「こういった因子をデータできちんと把握している企業が多いわけではない。的確に把握している企業は変化への適応性が高い」ことも強調しました。

2. 現在進んでいる、DX、ビジネスの変革についての考え方

次に、2つ目のテーマである「DX、ビジネスの変革」について、柳沼氏はマイクロソフトのカルチャーでもある「グロースマインドセット」という言葉がキーワードとなるという見解を示しました。「グロースマインドセット」とは、常に成長し続けるマインドを持つこと、他者のビジネスの成功に貢献することで成長を意識することで、このマインドを持つことで、マイクロソフト社そのものも様々なトランスフォーメーションに成功し、イノベーションに生じるジレンマも乗り越えたと言います。また、CEOの「C」はカルチャーの「C」であるというのが同社のTOPメッセージでもあり、変革のためには社内にそのためのカルチャーが浸透することの重要性を語りました。

3. 2022年の営業、マーケティング担当者へのメッセージ

柳沼氏は、これからの営業、マーケティング担当が意識すべきこととして、ジェームズ・C・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー 2 - 飛躍の法則」の中で述べられているストックデールの逆説について触れました。これは、ベトナム戦争時に捕虜となったストックデール将軍がどのようにして拷問に耐え生き残ったかのという話で、「楽観主義者は心が折れてしまう」、「淡い期待をせず、最も厳しい事実を直視し、その上で最後には必ず勝つという確信を失ってはならない」という教訓を教えてくれます。決して明るい話題ばかりではない今、現実を正しく受け止めて、備えることが現代を生きるビジネスマンにとって重要なのではないかというアドバイスがありました。

アドビ株式会社 執行役員 祖谷考克 「成功の鍵は実は目の前にある。それが見えていないか、見えていても気づいていないだけだ」

1. ビジネスの業績はどう変化したか?

祖谷もまた、1つ目のテーマである営業パフォーマンスの現状について、「コロナ禍以前から、環境の変化は始まっていた」と柳沼氏と同じ認識を示しました。「お客さまは事前に調査して商談に向かうことが当たり前。商談のスタート地点が変化している。ならば、マーケティング担当も営業担当も変わらなければならない。そこに対応できているか」と問いかけました。

冒頭に述べた調査結果、「コロナ禍以降の業績は横ばい以下」のデジタルツール導入企業は約8割、非導入企業では約9割という結果に関しても、コロナ禍の影響に約1割の差があったことに対して「約1割しか差がないととらえるべきだろう」と指摘。これは、デジタルツールは必要条件であっても十分条件ではないこと、ツールをどのように生かしていくかの方が重要であることの証左だと指摘しました。

顧客企業においても同様で、自社の商材の例でいうとDXに際してデジタルツールの導入が目的化しているケースが散見されるとのこと。こういった顧客企業と向き合うケースでは、商談規模や成約の確度など商談の状態が不安定になる傾向が見られると言います。

このような時代の中で、売り手側は「ただ売ればいいのではなく、どのような価値を提供するかをより意識しなければいけない」、そして「顧客企業も経営パーパスが存在しなければ多くの取り組みはビジネスの成功には至らないだろう」と語りました。

2. 現在進んでいる、DX、ビジネスの変革についての考え方

「DX、ビジネスの変革」については、コロナ禍は外部要因の1つに過ぎないと指摘します。いまや、これからどのように変化していくのか予測が困難な時代であるはずなのに、誰しもが過去の経験に囚われていて、過去の成功体験や、良かったことに執着しがちであり、「過去の良かった時代は、再び来ない」、過去の高度経済成長期やバブル景気が再来すると楽観視してはならないと語ります。このような現実を踏まえた上で、現在のコンフォートゾーンから踏み出すことこそが変革であり、成長を促すと語りました。

3. 2022年の営業、マーケティング担当者へのメッセージ

2022年の心得として祖谷氏は、「成功の鍵は目の前にある」と語りかけました。ただし、成功の鍵が見えていない、気づいていないことも多いと言います。

大切なことは、お客さま目線で考えること。例えば、旅行業界はコロナ禍で大きな影響を受けましたが、そこで「バーチャルツアー」という新しいサービスを提供している企業もあります。そこでは、「リアルな旅行とは異なる需要が生じている。そこに気がつくことができるか。コロナ禍だから、時代が変化しているから仕方がないという発想ではなく、場合によってはデジタルツールも活用して、エビデンスをもとに一歩踏み出すことが大切」であるとのメッセージを語りました。

2BC株式会社 代表取締役 御手洗友昭氏 パラダイムシフト期の到来を前向きに受け入れよう〜まとめにかえて

御手洗氏は、柳沼氏と祖谷の話を踏まえ、「新型コロナウイルスの影響で...」という前置きで今のビジネス環境の変化を語るものではないことが明らかになったことを強調しました。

売り手企業で言えば、顧客企業の悩みや目的がそもそも液状化しており、一見して顧客の状態を捉えにくいからこそ、購買プロセスを仮説立てることなどを踏まえて顧客の状態や商談の状態に正しく向き合い、それを見える化することが重要になってくるだろうと述べました。

デジタルマーケティングやエンタープライズ向けのICTソリューションを提供している今回対話した各社は、システムやツールの導入が顧客のビジネスを強化することを確信しているはずです。しかし、「顧客企業がパーパスに基づいたビジネスゴールの明確化をすること」や、それを「売り手企業が正しくガイドすること」こそが、何より重要だと語られたことに多くの学びがあると強調しました。

おわりに

今回の鼎談を通じて、売り手企業が変わらざるを得ない状況に至らしめた、近年の社会的変化には様々なものが存在していたことが再認識できました。そして、「今日と同じ明日は来ない」ことを認識して、前向きに「変化に適応できる姿勢をつくるパラダイムシフト期の到来を受け入れていきたい」と勇気をもらえる締めくくりを迎えました。企業が向き合う2022年の新たな挑戦も、未来につながる多くのワクワクする機会と言えるでしょう。

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