インタビュー

Marketo Championが語る「経営層や営業から信頼されるマーケターになるには」

MAの活用に限らず、企業のマーケティング活動を本当に価値あるものにするには、経営層や営業をはじめとする他の組織とコラボレートすることが不可欠であり、その架け橋となるのがマーケターの重要な役割のひとつです。とはいえ、みなさんもご存知の通り、組織の壁は一朝一夕で越えられるようなものではなく、壁を越える過程では多くの困難が待ち受けています。

そこで今回は、社内でうまくコラボレーションを生み出しながらマーケティングを成功させた実績のあるMarketo Championの御三方をお招きし、座談会を開催しました。それぞれ社内でどのように結果を生み出し、マーケティングチームに対する信頼を獲得していったのでしょうか。大いに白熱した座談会の模様をお届けします。

<参加者>
グロービス経営大学院 柳田 佳孝 氏 | 2020-2021 Marketo Champion
株式会社トヨコン 浦部 将典 氏 | 2021 Marketo Champion
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 谷風 公一 氏 | 2019 Marketo Champion、2020-2021 Marketo Master(モデレーター)

経営層と営業の関係構築のためにマーケターがやるべきこと

谷風氏:マーケターは孤独な職種ですよね。メルマガの開封率やセミナーの集客数を上げても、それが経営層の見ている数字に直結しているわけではない。我々もそれは理解していますし、経営層も同じだと思う。そんな中で、経営層や営業から信頼を得るために、日頃どのような会話をしていますか?

柳田氏:会話の中心は、お客様のことばかりですね。営業にとってみれば、「マーケは我々のお客様のことを本当に理解できているの?」ということが気になるでしょうし、経営層も「マーケは市場や顧客を正しく理解しているのか?」が気になるはず。だから、ちゃんとお客様のことをわかっていると知ってもらう意味でも、お客様に関する対話をすることは、とても大切だと考えています。

より具体的にいえば、コロナ禍にともなって、グロービスのお客様にも変化が見られたときに、「将来に対する不安を口にするお客様が増えたという話を営業から聞くようになってきたから、『未来予測する力や考える力をつけるには』という方向でコンテンツをつくれば、営業の役に立ちそう?」と営業に投げかけてみる。このように、"マーケと一緒に仕事をすると営業にとってうれしいことしかない"状況をたくさんつくっていくと、必然的に営業からの信頼は高まってきます。

それに、経営層は「営業とマーケの関係がうまくいっているか」を気にしているものですよね。営業から「マーケのおかげで営業がうまくいっている」という声が自然と上がる状態にしておくことで、経営層からのマーケに対する評価も上がっていくと思います。

谷風氏:とはいえ、ふだんマーケターがお客様と接する機会はありませんよね?僕らが対象としているお客様は営業に比べると膨大なので、どうしても接し方は浅くなるように思うのですが。柳田さんはどうやってお客様のことを理解しているのですか?

柳田氏:グロービスの場合、ポジションが上がれば上がるほど、顧客接点が増えていく仕組みになっています。例えば、学校の教壇に立ってクラスを担当したり、セミナーに登壇するといった機会を通して、多くのお客様との直接的な接点を持つことができます。そのときに学生やグロービスに興味を持ってくださった見込顧客の皆さまと直接お話しして、情報を集めています。

谷風氏:そうした現場で拾った生の声を、社内で共有する仕組みがあるのですか?

柳田氏:あります。お客様の声は粒度や重要度に応じてシステムに残したり、ライトなものは都度Slackのチャンネルで共有しています。それに対して他の人も書き込んで、議論が巻き起こることも多いです。網羅的にお客様の声を集めて、その中から活かせそうなものがあれば施策につなげることは、日常的に行っています。

谷風氏:なるほど。そうやって社内でお客様の声に関心を持つ仕組みをつくっておくことは大事ですね。

柳田氏:一方で、他のチームと協業する上では、業務理解とシステムの理解も非常に大事だと思っています。たとえばメールマーケティングの施策を考える際に、「営業がふだんどんなタイミングでどんなメールを送っているのか、それはどのような考えに基づくものなのか、どんなシステムからどのような抽出条件・タイミングで送っているのか」を知らなければ、効果的な施策は生み出せませんよね。基本といえば基本ですが、信頼関係を築く上では欠かせないことだと考えています。

谷風氏:浦部さんは、日頃から経営層や営業とどのような会話をしていますか?

浦部氏:それぞれの部署や経営層の中ではお客様の話をしているとは思うのですが、全体で話すときにはどうしても自社視点で「どう効率化を図るか」とか「どうデジタルを活用するか」といった話に終始しがちです。自社視点で営業が語るのに対し、マーケが顧客視点で語るので、なかなか両者の主張が交わらない。そんなときに「自社視点でも顧客視点でも、向かっているところは同じなんだよ」とつなげてあげるのが、自分の役割だと考えています。

気をつけているのは、「こうした方がいい」とか「なぜこうしないのか」という言い方をしないこと。営業の意見に合わせながらも、うまく顧客視点を組み込んで、「この人と話すと未来が具体的に見えるようになるな」と思ってもらえるようにしています。具体的には、必ず2つの道を提示します。「みなさんが行きたい道はこっちだけど、このまま行くと行き止まりになるかもしれません。実はもうひとつ、こちらにも道はあるのですが、どちらを選びますか?」といった感じで、選択権を与えることでうまく誘導しながら信頼関係を築いていきました。

谷風氏:もはや意識改革ですね! 「こうだと思う」を押し付けるのではなく、選択肢を示して相手に選んでもらうのは、とても大事だと思います。浦部さんがおひとりでやられているんですか?

浦部氏:そうですね。週に1度くらいのペースで他部署の会議体にオブザーバーとして参加させてもらい、質問を受けたりアドバイスをしたりしています。

柳田氏:私もかつては同じようなことをかなり実施していました。Marketo Engageを導入してから2〜3年は、各地のキャンパスの営業と毎週膝詰めでミーティングをしました。一緒にコンテンツを考えながら少しずつ形にしていくことで、信頼関係と数字を地道に積み上げていましたね。私の場合、呼ばれたというよりは自分から設定していました。「東京で成果が出ているから、大阪でもやってみませんか?」といった感じで。

谷風氏:そうやって小さく始めて成功体験を重ねていくのは大事ですよね。浦部さんはオブザーバーとして顔パスで入れるようになるまで、どれくらいかかりましたか?

浦部氏:2〜3年はかかりました。最初は自分から行って未来を語る中で、少しずつ「結構知識ある」「いろんなアイデアが出てくる」と思ってもらえるようにしていきました。するとある時期から自分で行かなくても、相手から声をかけてくるようになるんです。「ちょっとアイデアください」って。

谷風氏:お二人とも、経営層や営業に対して積極的に発言するし、ご自身のオピニオンもしっかり持っている。そんなお二人でも他部署との関係構築には2〜3年かかるということがよくわかりました。

信頼関係を作る「何か」の編み出し方

谷風氏:お二人とも、頻繁に「こういうやり方はどうでしょう?」と周りの方に提案していますよね。クールな提案って、ふだんから様々な知識やネタをたくさん吸収していないと、サッと出てこないと思います。お二人は、ふだんから知識やネタをどのように仕入れていますか?

柳田氏:世の中で流行っているベストプラクティスはもちろん、自社と一見関係なさそうな「How」なども吸収して、エバーノートにネタを貯めています。また、Marketo Engageの他社ユーザーから参考になる事例を聞いたら、忘れないうちに素早く試す、など、貯めたネタを腐らせないような工夫をしています。

谷風氏:世の中には山のようにアイデアがあります。それらが、本当に自社の商いやマーケティング活動にフィットしているのか、どう判断しますか?

柳田氏:最終的に企画を通す上では優先度や期待効果などのロジックは当然作りますが、最初にビビッときた段階で、今抱えている課題感とフィットしているかどうかで決めます。例えば他社のMarketoユーザーから「顧客登録したばかりの人に5日連続でメール送る。連続メールは五月蠅がられると思われがちだが、そうではない。逆に顧客との関係性が一気にホットになる」と聞いた時「これはうちの会社にあっている」とビビッときたので、すぐに実施してみました。結果、聞いたとおりの成果がでました。

浦部氏:私もエバーノートを愛用していて、いまや2,000トピックほどあります。情報は、ビジネス本、YouTube、TikTok、漫画、アニメなど、幅広に抑えています。何が流行っていて、なぜ流行っているのか、を紐解き、こういうプロセス・理論で、流行る・買う・見るんだな、を俯瞰してみています。その中から、自社事業に置き換えていけそうなものは絵を作っていくことを常にするようにしています。

谷風氏:一見遠そうに見える分野の出来事でも大量にインプットしてるんですね。確かに、浦部さんのビジネス(物流改善、梱包材)ならお客様が多種多様ですから、様々な流行や購買行動を幅広に抑えるのは、大変でしょうけど重要ですね。また、そうした情報をそのまま流用するのではなく、そこから社内が納得できる見せ方や言語へ翻訳して自社のビジネスや様々な活動に落とし込むのも大事ですね。

柳田氏:「翻訳」の話で、グロービスにも良い例があります。「Marketoで抽出した学生に、履修登録や各種手続きに関するご案内を事務局が電話で行う」という業務を推進する際、「電話営業のようで違和感がある」と社内で抵抗がありました。そこで、架電すること自体を「パーフェクト・パーソナライズ(PP)」と命名し、ブランド化しました。「データドリブンで、適切なタイミングでPPして顧客体験価値を高める」という言い方に変えることで、今や社内では「今からPPします」「PPしたらお客様に喜んでいただけました」という会話が当たり前に行われるようになりました。

信頼獲得に成果は不可欠、マーケティングの結果を示すには

谷風氏:お二人とも経営層や営業と信頼関係を築くために、自らいろいろと動いて来られたということですが、一方で、実際のマーケティングの成果が伴わないと、不十分なのでは、とも思います。経営層や営業へのマーケティング成果の見せ方を教えてください。

柳田氏:定量と定性で成果を見せていく、ファクトをつくっていくことに尽きるかな、と。目的や相手、あるいは施策の種類によって、そのバランスは調整する必要がありますけどね。

対経営層でも対営業でも大事なポイントはあまり変わらないと考えています。ある意味、経営層の方がシンプルかもしれません。定量で効果を見せて、十分に投資対効果が出ていると説明できれば、企画を通したり、ツールの利用を継続したりすることはできると思います。一方、営業と仕事を一緒に進める上で大事なのは、定性の方。どんなに数字で成果が上がっていても、営業がマーケと一緒にやることでうまくいっている実感を持てないと、一緒に仕事を進めるのは難しい。だから定量的にも効果が出ていると説明できる状態は常に担保しつつ、営業からの評価を見える化する活動も同時に続けていくことが大切だと考えています。例えば、マーケと営業が共同で進めている施策の結果生まれた「営業のうれしい声」事例集をつくって営業や経営層に共有する、といったような取り組みも地道に行っています。

谷風氏:ちなみにグロービスの場合、投資対効果はどれくらいの粒度で見ていますか?

柳田氏:キャンペーンやツールによって変わってきますが、少なくとも定量化できる領域であれば、一般の会社とアプローチはあまり変わらないと思います。例えば、広告キャンペーンならひとり当たりの獲得単価(CPA)の上限を決めているので、キャンペーン単位で評価します。他方、Marketo Engageは導入費用やランニング費用がかかるので、Marketo Engage経由で体験クラスに申し込んだ人がどれくらいいて、それをふだんから基準にしているCPAと照らし合わせて十分にペイしているか、といったような計算をしています。

谷風氏:Marketo Engage導入1年目からペイできていましたか?

柳田氏:はい、1年目から十分ペイできていましたよ。Marketo Engageを導入するまではメールの一斉配信しかできていなかったので、「お客様の検討段階に応じてメールを出し分けられるようにしたら、コンバージョンがこれだけ生まれました」というのは、早い段階で積み上がっていきました。

谷風氏:"お客様の検討段階に応じて"というのはMarketo Engageを使ったことのない人にはあまりピンと来ないと思うのですが、どうやってお客様の状態をピックアップする仕組みを構築されたのですか?

柳田氏:最終的にはもともと管理していたファネルをベースにMarketo Engageのライフサイクルモデルに当てはめて設定しました。当時はスクラッチでつくった社内システムから抽出したお客様の情報を1テーブルにまとめて、Marketo Engageにバッチ処理で投げていました。「このカラムがこうなっていたら、この人はMQLね」といった感じでマッピングしながら、シナリオをつくってエンゲージメントプログラムを走らせていました。

谷風氏:ふだんキャンペーンやメールをつくるときに、どんなことに気をつけていますか?

柳田氏:グロービスにはMarketo Engageを毎日触る人が80人以上います。大量のキャンペーンが常に走っているので、「命名規則を徹底しましょう」といった運用上の細かいルールを設けています。また「コンテンツをつくりっぱなしにするのではなく、その後の検証をちゃんとやりましょう」「定期的にすべてのキャンペーンを棚卸しして、メールが多くなり過ぎていないか、最適なご案内をお客様にできているかをちゃんと整理しましょう」といったことは常に行っています。コンテンツを量産するばかりではなく、最適化する努力をしなければいけないなと思っています。

谷風氏:浦部さんは、経営層と営業に成果を示すために日頃どのような取り組みをされていますか?

浦部氏:経営層は結果主義なので、その過程でどんなに社内が盛り上がっていても、まったく興味がありません。逆に、営業は「大変だったけど、やり切ってよかった」というのが判断基準になる。

具体的な施策でいうと、コロナ禍で始めたウェビナーですね。体験を仕掛けるのが私の役割だと思っているので、社内で一緒にやってくれそうな人にターゲットを絞って、「ウェビナーやりませんか?」と話を持ちかけました。その相手が、カメラの前で話したこともなければ、何を話していいのかわからないという人だったので、台本・資料・撮影機材など、必要なものはすべてこちらで用意しました。

1年くらいウェビナーを続けてみると、1億円くらいの商機を生み出せたんです。一緒にやった人は「ラッキー!ありがとね」という感じでしたが、それを見ている他の営業としては、当然「自分もやりたい!」となる。今では企画や資料づくりは営業にお任せして、マーケは撮影と配信をサポートするだけになっています。

Marketo Engageの活用に関しても同様で、だんだんと営業が率先してコンテンツをつくってくれるようになったので、今はマーケで内容のチェックをするだけになっています。これまで5年くらいかけて関係を構築してきたことで、部門横断でコンテンツをつくれるようになりましたね。

谷風氏:営業が生み出すコンテンツには迫力がありますよね。ふだんお客様と直接接している分、マーケティングが主体となってつくるコンテンツよりも生々しいというか。営業のコンテンツ作りに、マーケとして何か工夫されていることはありますか?

浦部氏:最初の頃は、売りたい気持ちが溢れすぎた"売り込みメール"でした。それを「私ならこうつくりますけど、どうでしょう?」と改良して返す。ここでも2択を用意して、「あなたにこのメールが届くとしたら、どちらがいいですか?」と選んでもらうんです。そうやって営業が考えた企画は活かしつつも、少しずつ見せ方を覚えてもらいました。

谷風氏:なるほど。今日お二人のお話を伺って、いかに日頃から経営層や営業との関係構築に尽力されているかがよくわかりました。ただそのアプローチの仕方は柳田さんと浦部さんでは少し違っていて、柳田さんは自ら様々な情報やアイデアを発信して周囲を巻き込みながら、具体的な成果に落とし込むのに対し、浦部さんは、相手の想いや意見を引き出したうえで示唆を与える活動を地道に積み重ねて、仕掛け人としてのポジションを確立していった、と思いました。いずれにせよ、いきなり今のような状態になったわけではなくて、信頼を勝ち得るまでには2〜3年の月日がかかったというのは、日々、孤軍奮闘されているマーケターのみなさんにとって、大きな勇気になったのではないでしょうか。

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