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再現性を重視したテクノロジースタックで組織力の強化を目指す

事業フェーズの変化にともない、社内のテクノロジースタックの見直しを迫られる企業は少なくありません。スタートアップを立ち上げた当初は、"個の力"によって成長できていたところから、事業の拡大とともに組織が大きくなり、"組織力"による成長が求められるようになるからです。

Adobe Marketo Engageのユーザー向けイベント「MUG Day Online」に登壇した、株式会社スマートドライブもそんな企業の一つ。2013年に創業し、ビッグデータを活用したモビリティサービスを提供してきた同社では、組織力を発揮できるテクノロジースタックをどのように構築していったのでしょうか。

「再現性を重要視したシステム・オペレーション・デザイン-レベニューチームのインフラとしてのテクノロジースタック-」と題したセッションの模様をお届けします。

目次

再現性のあるシステムとは

現在、同社 CEO補佐 事業開発統括 兼 CMOを務める石野 真吾氏は、「組織力を強化し、組織として成長できる環境を整えるためにも、再現性を重要視した」と語ります。その理由として、次の3つを挙げました。

  • これまでは獲得効率を重視して、負荷が少なく成果が見込みやすい施策を行ってきたが、一気にアクセルを踏んで、マーケットの拡大を狙っていきたいため。
  • マーケット拡大にともない、市場を面でとらえるために、全方位で施策を強化していくため。
  • 施策や人員が増加しても成果をけん引し続けられる組織力と、再現性のある仕組みが必要だったため。

そこで、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスを擁するレベニュー組織だけでなく、デザインやセールスオペレーション(Sales Ops)など全社の協力を得てプロジェクトを発足されました。

前職でもAdobe Marketo Engageのユーザーであり、初代Adobe Marketo Engage Champion(2016年) や、当時グローバルが展開するRevvie Awards(2017年)を受賞した経歴を持つ石野氏は、「Adobe Marketo Engageについて知れば知るほど、複雑な設定をしてしまいがちである」と言います。しかし、それではAdobe Marketo Engage活用が属人的なものになってしまうため、Adobe Marketo Engageのポテンシャルをマーケティングチーム全体で最大限活かすために、再現性のあるシステムの設計/構築を決めました。再現性のあるシステム設計/構築において次の3つの点に気をつけたと明かします。

1. 常時ボトルネックを把握できる環境にすること。
→ライフサイクルモデルは必要最低限のシンプルなものに。
→どのチームが対応するのかを明確に区分する。
→即時反映が必要なものはSalesforceのフローボタンを活用し、それ以外はAdobe Marketo Engageでバッチ処理をする。

2. 売上への貢献/投資対効果を可視化できるようにすること。
→SalesforceとAdobe Marketo Engageの項目を精査し、日々利用する用語(CV、MQL、SQLなど)を再定義。定義が曖昧な場合、振り返りも曖昧になるため、明確かつシンプルにする。
→データの重複があると正しく計測できないため、アドビのオートマージサービスを活用し、レコードの重複は徹底的に排除。常にAdobe Marketo Engageでリードを作成することで、メールアドレスユニークになるよう管理する。
→施策ごとに簡易に振り返られるよう属性データを1レコードに蓄積。チャネルや流入経路ごとに成果を定量化できるシステム構成にする。

3. 複雑性を排除し、中長期的にメンテナンス可能にすること。
→テクニカルな設定は極力避け、インハウスで修正できる環境を構築する。
→極力、独自開発をせず、標準連携機能を利用する。
→設計/構築した人が今後他の役割になることを想定する。

「こうして再現性を意識したシステムを設計/構築することで、すべてのKPIをデイリーで確認し、メンバーと共有できるようになりました」(石野氏)

再現性のあるオペレーション設計とは

次に、マーケティングオペレーションの立場でAdobe Marketo Engageの運用や、様々なイベント企画/運営に携わる同社の岡 桃子氏より、「再現性のあるオペレーション設計」について、お話がありました。

STEP 1:これまでの施策の棚卸とプログラムテンプレートの再整備

webのコンテンツやオンデマンド動画、セミナー、展示会、ナーチャリングメールなど、各施策にどんな役割があり、どんな効果があるのか、アセットをしっかりと棚卸して、シンプルに再構成していきます。

ポイントは、極力、個別対応をせずに運用できるよう、テンプレート化を意識すること。その際、最も重視したのが「すべての可変要素をマイトークン化すること」だと岡氏は言います。可変要素とは、例えばセミナーであれば「タイトル」や「日付」、「ダウンロード資料のURL」、「画像」など。マイトークン化することで、アセットにはほぼノータッチで運用できる体制を構築されました。

STEP 2:プログラムメンバーカスタムフィールド(PMCF)の活用

以前はセミナーごとにアンケートを作成していたところから、アンケートのテンプレート化も行われました。その際、PMCFを活用することで、Salesforceの活動履歴と連携してアンケート結果をタイムリーに記録できるようになり、インサイドセールスが架電をする際にも、Salesforceの中で瞬時に確認できる状態を作ることができたと言います。

また、Zoomのウェビナー機能とAdobe Marketo Engageを連携させたことで、セミナーの申し込みから視聴URLの案内、リマインドメールの送付、アンケートの案内など、ウェビナーで必要な作業工数を大幅に削減することができ、施策を早く多く回せるようになったそうです。

STEP 3:属人化していたAdobe Marketo Engageの構造をマニュアル化

STEP 1と2を進めると同時に、マニュアルを作成。属人化しがちだったAdobe Marketo Engageの操作を誰でも把握できるようにされました。

岡氏は、こうした再現性のあるオペレーションを構築したメリットとして、次の3つを挙げます。

  • 各種プログラムの設計にかかっていた時間が大きく減少。
  • シンプルにテンプレート化したことで、リリース時の確認項目が減少するとともに、ヒューマンエラーの発生も削減。
  • 新しい施策に使える時間が増え、チームとして実行できる施策数が大幅に増加した。

「プログラムのテンプレート化とマイトークンの活用を徹底することで、生産性の向上と誰でも活用できる環境の構築を実現することができました」(岡氏)

再現性のあるデザインとは

続いて、同社 デザイナーの谷口 春奈氏から、「再現性のあるデザイン」の実現に向けて、ブランディングに沿ったテンプレートデザインに関するお話がありました。

再現性のあるデザインはブランディング観点でも非常に重要なため、お客様の目に触れるLPやメールを統一し、「これはSmartDriveだ」と認識していただくためのチェックに時間を要していました。

「以前は、ランディングページやメールなどを新規で作成する際に、マーケティングチームからデザインチームに毎回依頼をもらって、デザインのチェックをしていた」と語る谷口氏。しかし、このやり方では「1つのコンテンツを作るのに毎回時間がかかってしまう」「構成の変更によってコードを変更するとランディングページが崩れてしまう」「毎回、最終確認に時間がかかってしまう」といった課題があったと言います。

ブランディングに配慮しつつも、新しいコンテンツをクイックに展開できる方法はないか。再現性のあるデザインにするために、谷口氏は次の3つのステップで進めていきました。

STEP 1:マイトークンで差し替え可能なテンプレートを構築

マイトークンで差し替え可能なテンプレートにすることは、マーケティング側でソースを手入力せずに済むだけでなく、デザイン側で都度確認が不要となるメリットがあります。

STEP 2:活用可能性のある画像素材もデザインスタジオに完備

「無料相談を予約」「資料ダウンロード」「今すぐ視聴する」といったボタンの画像素材をあらかじめデザインスタジオに完備しておくことで、マーケティングチームが必要に応じて素材を活用し、配信できるようになります。

STEP 3:メールテンプレートも現場で構成を変えられるようモジュール化

毎回同じ形式で良いメールはマイトークンの差し替えだけで済むものの、都度コンテンツが変わるようなメールでも要素をモジュール化してテンプレートを作成。そうすることで、マーケティングチームが要素を入れ替えたとしても、デザイン品質を保ったメールを配信できるようになります。

「マーケティング現場の利便性とデザインの両立を図るために、最初の構築コストはかかってしまうものの、一度テンプレートをしっかり作ってしまえば、その後の運用はかなり楽になるはずです。テンプレートを作る際には、マーケティングチームがどんな使い方をしているのかを理解して、実際の運用に沿ったひと工夫をしてあげることが大切だと思います」(谷口氏)

テクノロジーは手段であり、誰もが使えるべきインフラ

最後に、石野氏は、再現性を重要視したシステム、オペレーション、デザインのインフラ整備によって得られた効果として、「投資対効果の検証とクイックな投資判断」「成果の可視化とチームの動きの連動」「オペレーションコストの削減と本来の仕事への集中」を挙げました。

また、「これらを実現できた背景には、今回登壇した3名以外にも、社内外で協力してくれた人たちがたくさんいて、One Teamとしてプロジェクトを推進できたことが大きい」と語ります。

「テクノロジーは手段であり、インフラとして誰もが使えるべき。再現性のあるシンプルな設計にすると同時に、テクノロジーに関する必要最低限の勉強はみんながすべきだと考えている」と石野氏は締めくくりました。

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