先の10月13日、弊社主催で開催された「MARKETING NATION SUMMIT 2017」。熱気あふれる各会場のなかでも、Marketoを活用し、高い成果を収めた実例として、注目を集めたのが日商エレクトロニクスのセッションです。

同社は、大手総合商社・双日グループの一員として、主にシリコンバレーから最先端のIT関連製品を輸入し、国内で展開しています。

では、IT商社としての立ち位置からいかに国内で製品の認知度を上げ、新規顧客を発掘するのか。

そのためのツールとして、2014年からMarketoを導入し、デジタルマーケティングに取り組んでいるコアメンバーが、今回ご登壇いただいた同社ITプラットフォーム事業本部 営業推進部 第一課課長の近藤 智基氏、ビジネスサポート部 コミュニケーションデザイン課 エキスパートの藤村 智史氏です。

セッションのタイトルは「高単価商品で新たな顧客を創出。IT商社の顧客視点のデジタルマーケティングの実践とABMへの挑戦」。米国から導入したデスクトップ仮想化基盤「Nutanix(ニュータニックス)」を国内展開していく上で、実施したマーケティング施策、今後のアカウントベースドマーケティング(ABM)へのチャレンジについても語っていただきました。

アポ率が1%から19%以上にアップ。案件化率も45%、受注率30%を実現

「Nutanix」とは、各端末で個別に稼働させていたOSやアプリケーション、データなどをサーバ上の仮想化基盤に統合し、集中管理を行う仕組み。社内のPCをサーバーで集中管理することで、コスト削減やセキュリティ強化、生産性向上を臨めるのが特徴です。

しかし、米国のベンチャー企業が手掛ける新製品ゆえの不安感、高価格帯といった要因から、「イベントやWebマーケティングを実施しても、見込みリードがなかなか獲得できない。さらにリード管理の仕組みもないまま、埋没してしまう。営業に渡しても案件化できるのは数件という状況が続いていました」と、近藤氏は明かします。

その解決策として、2014年にMarketoとSalesforceを導入。マーケティングと新規顧客開拓を担当する近藤氏、プロモーション、デジタル活用推進を担当する藤村氏の二人三脚で、15年秋から本格的な運用がスタート。わずか1年弱の運用期間で、16年の案件創出規模は23億円突破という高い成果を上げます。

「同プロジェクトにより、社内で『社長賞』を獲得するなど、マーケティングへの注目度アップも果たすことができました」と近藤氏は語ります。

では、なぜそこまでに高い成果を挙げるに至ったのか。近藤氏が挙げたポイントは、

1 最終的な売上にコミットする

2 顧客本位の価値あるコンテンツを提供する

の2つです。

まず1つ目のポイントに関しては、マーケティングというと、リード獲得数やアクティブ率の上昇といった観点からKPIを設定しがち。しかし同社では、目標設定値を売上にシフトし、「売上目標から逆算して、リード数、コール数、商談数のKPIを設定し、リードナーチャリング、商談化率、受注率・単価アップに取り組みました」(近藤氏)

さらにリード獲得、ナーチャリングだけでなく、商談化までを近藤氏が率いる営業推進部で担当。最後の営業担当がクロージングしやすい体制を整備したことも、確実な成果につながったといいます。

詳しく体制、役割分担を見ていくと、営業推進部では「デマンドジェン」「インサイド」「ハイタッチ」の3つのチームに分かれ、デマンドジェンはリード獲得から育成まで担当。

リードが、初期の「無認知」の状態から「対面で製品を検討したい」レベルにまで育成されたら、インサイドに渡され、アポ獲得まで担当。アポを獲得した状態で、今度はハイタッチにパスされ、商談化。ここで初めて案件として営業に渡され、クロージングまで持っていくことになります。

また、「それぞれのチームが、一歩先のKPIを見て、ミッションを達成していることもポイントです」(近藤氏)

例えばデマンドジェンは、リード数だけでなく、次のインサイドが担うアポイント数(アポイント率)向上も自身のKPIとして設定。

同様にインサイドは、チームが担うアポイント率向上に加え商談化率、ハイタッチも、営業のミッションとなる案件化率向上をゴールに設定しています。

「そのためにデマンドジェンチームは、コンテンツの内容に徹底してこだわり、個人名を出した上でメルマガやメールを送信するなど、パーソナライズされたメッセージを提供。インサイドチームは営業経験のある社員で構成し、製品紹介よりもお客様の課題解決に注力する。ハイタッチチームはBANT(Budget<予算>、Authority<決裁権>、Needs<必要性>、Timeframe<導入時期>)情報などもヒアリングし、確度の高い案件を営業に渡すようにしています」と近藤氏。

こうして3チームが一歩先のゴールを見据え、しっかりとタッグを組むことで、アポ率は従来の1%から、19%以上にアップ。案件化率も45%、受注率30%と高い数字をあげるに至ったといいます。

KPIダッシュボードで、メンバー全員がリード総数から売上推移までチェック

では、いかに社員全員が一歩先のKPIを意識しながら、確実に数値を上げていくか。秘訣は、同社ならではの"KPIの視覚化"にありました。続いて、藤村氏が登壇し、その仕組みについて解説します。

同社では、Marketo、Salesforce、さらにフィールドセールスサイドではeセールスマネージャー、と3つのツールを連携して使っています。

MarketoではWebフォームやメディア、イベント、名刺情報などを通じて獲得したリードの管理、行動履歴の把握、Salesforceではアポイントの管理、商談管理を行うなど、それぞれ役割が異なりますが、ポイントは「すべてのデータはSalesforceに集約すること」と藤村氏。

さらに、「それらのデータをもとにMotionBoardを活用し、KPIダッシュボードとして全ての数値をチェックできるよう、ビジュアル化を実現しています」(藤村氏)。こうして、すべてのチームメンバーがリード総数から、そのフェーズの推移、さらに商談実績、売上、粗利の推移をボード内で一覧可能。

「一歩先の結果、数値を見ながら、チーム間のボトルネックを確認し、施策に生かしていくことで、最終的な売上にコミットする組織を実現しています」と、藤村氏は語ります。

コンテンツごとの新規リード獲得数をチェックし、内容をブラッシュアップ

続いて、2つ目のポイントとなる「顧客本位の価値あるコンテンツの提供する」について、近藤氏が解説します。近藤氏が挙げる、コンテンツ作成のキモは次の4つ。

  • Who 誰に渡すのか。市場&キーパーソン
  • What どんな情報が求められているのか
  • How どんな方法で情報を獲得しているのか
  • When いつその情報が必要なのか

これらに基づき、同社では「製品の検討に関わる人」「時間軸」の2つの柱から購買プロセスを細かくセグメントした上で、顧客の状況に合わせた「コミュニケーション図」を作成。コンテンツ制作に生かしています。

たとえば顧客の状況が、無認知の状態から、無関心→関心・興味→非対面での検討というレベルに入ってきたら、「製品ソリューションの情報だけでなく、より詳しい価格情報や競合情報、キャンペーン情報などへのニーズが高まってきます」と近藤氏。

近藤氏によると、従来、業界の慣習として製品価格を表に出すのはタブーとされてきたとか。しかし、同社では、業界の常識にこだわることなく、「見積もりツール」や既存環境のコストや予算を入力してもらう「TCO計算ツール」を用意しています。

こうした情報は顧客にとっても秘匿性の高いものですが、「価値の高い情報には、価値の高い情報を返してもらえるもの。顧客が必要としている情報が届くことで、アポ率上昇も実現します」(近藤氏)

では、こうした顧客本位のコンテンツを、どのようにタイミングを合わせ、提供しているのか。ここで藤村氏が表示したのが、「マーケティングブロック図」です。

「まず、Marketoにリードが入ってきたら、ウェルカムメールを送信。これに対して、クリックするか否か、あるいはイベントなどの申し込みを実践するかのアクション、そのフェーズに合わせ、用意しているコンテンツを出し分けしていきます」と藤村氏。

このように顧客行動を基点に、適切な顧客に、タイミングを合わせ、適切なコンテンツを送ることを徹底。

さらに真に価値あるコンテンツを提供し続ける上で、コンテンツの定量的な評価も実践しています。

「MarketoとMotionBoardを組み合わせたダッシュボードで、製品や各コンテンツごとに新規獲得リード数、URLごとのページビューなどが一覧可能。その結果をもとに、コンテンツのブラッシュアップを実践しています」(藤村氏)

ABMは営業としっかり連携し、顧客をファンにすることからスタート

最後に、同社が2017年から強化しているABMへの取り組みについても紹介していきましょう。

近藤氏は、売上にコミットしていく上で、新規顧客獲得とともに、既存エンドユーザーの深堀りも重要なテーマとなると指摘。重点顧客にフォーカスしたABMへの取り組みの強化により、他の部署への横展開、さらにクロスセル、アップセルの実現を目標に掲げています。

では、ABMを実践していく上で、重要なポイントは何か。近藤氏は、「顧客をファンにすることから始めるべし」と話す。

「従来のマーケティングのファネルは、"認知→関心→検討→購入"でゴールとなります。しかし、ABMでは、それに加える新たなファネルとして、"ターゲット→ファン→共有→拡散"のフローを意識し、施策を実践していくことが大事だと考えています」と語ります。

そのために必要不可欠なのが、実際に一対一で顧客に相対する営業担当との連携です。「一番、お客様のことを分かっているフィールドセールスの人間の知恵を、リードの獲得、育成段階から反映していくことで、高い効果が期待できる」と近藤氏は指摘。

コンテンツ制作においても、営業担当と連携。顧客に合わせた内容のカスタマイズを自ら実践してもらうほか、あらかじめ用意したメールからGoogle SpreadSheetで適切なものを指定してもらうなど、細かくチューニングを実践しているとか。

さらに、フェーズをクリアしたリードに対しては、営業担当者にアラートメールを送信する仕組みも整備しています。

加えて、顧客のニーズに応じて、他部署とも連携し、他のソリューションについても触れるなど、ひと手間を加えたコンテンツを制作。拡散効果を狙うべく、転送しやすい内容にも注力しているといいます。

こうした工夫によって、今年スタートしたばかりのABMの取り組みにおいても、営業が1カ月にコンタクトできる数が60件から600件と10倍にも大幅増加。「メールクリック率も2%から10%へ、休眠名刺からのアポイント依頼、案件化の創出にもつながっています」(近藤氏)

ABMを実施する上では、ツールの連携にも一工夫を加えています。

藤村氏が挙げるシステム上の重要なポイントは3つ。「1つ目が個人と企業のデータ分離して管理すること。2つ目が個人と企業に正しいデータを紐付けること。3つ目として、個人と企業の関係を正しく管理すること。この3つを徹底することが重要です」(藤村氏)。

よって、個人データはMarketo、企業データはSalesforceに集約。そこに外部データベースツールのuSonarを連携させ、正式な企業名、業種、売上などの属性データをキャッチ。

名刺情報の管理として、Sansanも活用し、企業情報のクレンジングと営業とのコラボレーションの円滑化を図っています。

まさに考え抜かれた綿密な施策、取り組みによって、高い成果を挙げている同社。今後のABMへの取り組みによって、さらなる飛躍が期待できそうです。

日商エレクトロニクスの講演資料はこちらからダウンロードいただけます。講演動画もございますので、ぜひご覧ください。

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