THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」で行われたパネルディスカッション「これからのMAの選び方と活用方法」の模様をお届けします。本セッションでは、Marketoをご利用中の3社が登壇。各社は数多くのマーケティングオートメーション(MA)の中から、なぜMarketoを選び、どのように活用されているのでしょうか。

<モデレーターの紹介>

株式会社宣伝会議
月刊『宣伝会議』編集長 谷口 優氏

2002年12月に月刊『環境ビジネス』副編集長就任。その後、月刊『編集会議』編集長、月刊『宣伝会議』副編集長を経て、2007年10月より月刊『宣伝会議』編集長。2014年4月マーケティング研究室立ち上げに伴い、室長に就任。2014年11月、季刊『100万社のマーケティング』創刊。2015年1月より『宣伝会議』編集長と兼務。

<パネリストの紹介>

株式会社IDOM(旧社名: 株式会社ガリバーインターナショナル)
デジタルコミュニケーションセクション セクションリーダー 中澤 伸也氏

家電量販店のソフマップ、ゴルフポータルのGDO(ゴルフダイジェストオンライン)にてマーケティング責任者、グローバル・マーケティングベンダーのExperianでのJAPAN-CMOを経て、約2年前からIDOMにジョイン。デジタルコミュニケーション セクションを率い、IDOMのデジタルマーケティングの改革を推進中。

富士フイルム株式会社
e戦略推進室 マーケティンググループ統括 一色 昭典氏

2004 年頃から写真専門店活性化のコンサルタント業務に従事。需要創造活動に努める。2011 年にライフサイエンス事業部門へ異動し、Webグループを統括。EC 事業を再構築する。2013年よりe戦略推進室へ異動し、全社 Web 活用における戦略構築と企画運営、デジタルマーケティング推進業務総括、イメージング製品のECサイト構築/運営ほか、欧州・中国の事業支援を中心にグローバルなデジタルマーケティング推進に注力中。

株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部 Air事業ユニット カスタマーエクスペリエンスチーム リーダー 遠田 望氏

2009年より、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)に入社。POSやバックエンドのシステムを管轄するIT部門にて、代官山蔦屋書店をはじめとした大型店舗のIT企画を担当し、書籍検索端末、レストランのメニュー、試聴機といった店内施設のiPad化などを推進。2014年より、リクルートライフスタイルにて「Airレジ」のカスタマーサポートチームを担当。現在は、カスタマーエクスペリエンス(CX)チームにて、ユーザーとのコミュニケーション全般のマネジメントに従事している。

各社が目指すマーケティングとは?

谷口:まずは、それぞれのマーケティング活動における課題と理想・目標について伺いたいと思います。

株式会社宣伝会議
月刊『宣伝会議』編集長 谷口 優氏

中澤:IDOMが扱っている中古車という商材は、購買サイクルが7年と長いので、CRMが効かず、新規顧客獲得が中心になっています。デジタルマーケティングには昔から力を入れていて、年間予算は約数十億円。ほとんどの施策はやり尽くしている感があり、リーチの拡大も限界に近づいている状態です。

そんな中で今、私たちが力を入れているのは、リーチの拡大から"コミュニケーションの質"へとマーケティングを転換していくところです。具体的には、ユーザーとのコミュニケーションの深さを面積で測ろうという取り組みでして、縦軸に「検討度の深さ」・横軸に「エンゲージメント」を取り、この面積をいかに拡大させていくのかという課題に向き合っています。その際に使うのが、「MA」と「営業も含めた人」の2つ。この組み合わせが重要なので、そこをテーマに研究している状況です。

当然ながら、コミュニケーションの質を図るには、どう指標化するかという問題が発生します。どうしてもアナログの状態では図れないので、いかにデジタルに持ち込んで、デジタル上で素早くお客様の行動データやチャットのテキストマイニングによって可視化するかが課題です。ただ、最終的にタッチダウンさせるときには、人間の高いコミュニケーション能力が不可欠なので、アナログとデジタルを行き来しながら行っています。

株式会社IDOM (旧社名: 株式会社ガリバーインターナショナル)
デジタルコミュニケーションセクション セクションリーダー 中澤 伸也氏

一色:当社はプロダクトアウトの意識が強い企業でした。当社の高い技術力から開発された商品であれば売れるはずだと。事実、当時はヒット商品も多くありました。しかし、消費者自身が欲しいものが分からない時代の中で、市場に受け入れられる商品・サービスを開発するには、市場の声に耳を傾け、insightを探り、我社の技術力を駆使して作っていかなければなりません。そのためにデジタルを活用して、お客様の行動から声なき声を拾うというのが、我々のチームが目指す究極のマーケティングです。

我々の主力商品であるフォトブックは、認知率100%とコモディティ化しています。ただ、0歳から6歳の子どものいるご家庭におけるフォトブックの作成率は約50%。残り半分のお客様に買っていただく努力はしつつも、すでにフォトブックを必要として我々と接点を持っていただいているお客様とのエンゲージメントを強化し、顧客生涯価値(LTV)を高めていくのか、あるいはSNS等でお友達に薦めていただくのか、という長期的な関係づくりに注力しています。そうしたリテンション強化のためにMAは不可欠であり、活用しています。

富士フイルム株式会社
e戦略推進室 マーケティンググループ統括 一色 昭典氏

遠田:MAしかり、多くのマーケティングツールが出てきている中で、弊社では日々様々なツールを使って施策を回しているのですが、どれも導入前と導入後で比べると、劇的に良い結果が出て「このツール、いいね」となるんです。ただ、それは部分最適でしかなく、自社のマーケティング全体の健康状態はわからないことが多いです。施策単体では良くても、時系列で見ると、実はそんなによくないこともあります。なので、いろいろな施策を複合的に評価できるアーキテクチャーは重要だなと。我々もまだそこはちゃんとできていないので、これから作っていかなければいけないと思っているところです。

株式会社リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部 Air事業ユニット カスタマーエクスペリエンスチーム リーダー 遠田 望氏

なぜMarketoの導入に至ったのか

谷口:次に、MA選びで最も重視したポイントを教えてください。

遠田:単純に、やりたいことができるかどうかというのは、大前提としてあるのですが、現在の自社体制の中でどこまで活用できるかというのは重視しました。導入前から、誰に何をやらせるのか、バイネームでイメージしながら選定しました。いろいろな機能を使いたくなっても、そこはあまり背伸びせず、自分たちの現状の体制の中で安全に運用を回せて、やりたいことをやれるのを最重視しましたね。

一色:当社では、グローバルに対応しており、BtoB・BtoCの両方で同じプラットフォームを使える、将来、内製化できる可能性があるというのが大前提としてありましたので、選択肢としてはかなり絞られていきました。導入ポイントは、「1.目的を明確にしておく」「2.どこを自動化するのか決めておく」「3.誰が運用するのか決めておく」の3つだと思います。Howに走らずKGIを明確にして、自動化して空いた時間に何ができるのかを計算しておき、マーケティングファネル全体がわかる人が運用する、というのが重要だと思います。

中澤:基本的にはお二人と同じですが、「1.スモールスタートできること」「2.自走できるかどうか」「3.DMPの機能を内包しているのか外に持つのか」の3つを重視しました。1つめのスモールスタートは、小さいところから始めて、シナリオにチューニングをかけながらアジャイルで広げていく必要があるので、コンパクトな運用ができないと難しいためです。2つめの自走については、自社で運用できるものでなければスピードが落ちるという理由です。3つめのDMPは、Marketoは得意ではありませんが、その代わりにAPI連携が優れていて、外部システムと手軽に連携できます。システムのグランドデザインの観点から、どういう方向を目指すのか、というのがMAの選定においては重要になると感じています。

谷口:今はマーケティング部門だけで完結するような活動も少ないですし、データやシステム、社内のいろいろな人たちや部門と連携していくことがあると思います。このあたりについて、みなさんツールを選ぶ際に、どんな観点を気にされましたか?

遠田:クラウドサービスを使う最大のメリットは、APIが提供され、自社のデータとすぐに繋げるところだと思います。それに加え、いつでもサービスを切り離せるというポイントは、ちゃんと見ておいた方がいい。マーケティング戦略は、どんなに先を見据えて描こうとしても、市場が変わっていく中で、今の施策では効かなくなるときが必ず来るはずです。そのときに、マーケティングツールを切り離して、別のものにリプレイスできるかどうかというのは、非常に重要だと考えています。

一色:世の中の変化に、どれだけフレキシブルに対応できるか、ということですよね。その点、Marketoはユーザー会を中心に、開発のメンバーがいち早くキャッチアップできる仕組みがあるので、そうしたスピード感は大切だと思います。

中澤:遠田さんの"切り離せることを想定しておいた方がいい"というお話は、まさにその通りだと思います。好みの問題もあると思いますが、なんでもできる統合型のマーケティングプラットフォームが向いているところもあれば、逆にいろいろなASPをチョイスしたい場合は、連携力に優れていて、疎結合でできるだけ分離して入れ替えられるようなアーキテクチャーの方が、うまくいく。どちらがいいという話ではないと思いますが、僕の場合は後者の方が好きだからMarketoを使っています。

谷口:それは、中澤さんのリテラシーが高いからではありませんか?

中澤:むしろ、統合的な戦略を大きく描いて、確実にドライブさせる自信がないんですね。その時々で、マーケティング戦略的に重視するテクノロジーが変わってくるので、そこに強い企業をセレクトしていく必要があります。統合型で「これなら勝てる!」と思えるものが見つかっていないからだとも言えるかもしれませんね。

これからのマーケティング人材に求められるもの

谷口:最後に、人材育成については、どのようにお考えですか?

遠田:"MAに強い人"をチームに入れる意味は、あまりないと思っています。それよりも、マーケターとしての素地、戦略立案ができる人を育てた方が良いです。MAに限って言えば、導入するために社内の体制を変えることまでは必要とされていません。現状のメンバーだけでどこまでできるのかを考えて、少しずつ体制を整えていけば良いと思います。それよりも営業や開発など、連携が必要な部門とは早めにコミュニケーションをとり、巻き込み型で進めていくと良いのではないでしょうか。そういった意味で、横のコミュニケーションは重要ですね。

一色:MA導入で最初に最も効果が出るのは、効率性だと思います。誰でもできる業務はMAに任せられ効率化できる反面、MAをどう使いこなすのかを考える人が必要になってきます。思うのは、MAをマーケター育成のための教育ツールとして導入するのもアリなのではないかと。何を売りたい・顧客にどうなって欲しいといった思いを前提とした戦略さえあれば、MAを使いこなせる人材に育成できるのではないかと思います。

中澤:人材の問題は、今、一番悩んでいるところですね。正直、求める能力は、コミュニケーションをデザインできるかどうか、というたった1つだけ。テクノロジーに関する知識は後からインプットすればいいので。大事なのは、ちゃんと営業ができるかどうかです。「今日これを話したから、次はこれを話そう」とか、「このタイミングでこのメールを送らなきゃ」といった営業のコミュニケーションを組み立てられる人であれば、MAは使いこなせるはずです。

最後に、谷口氏は「マーケティング活動のステージも課題も三者三様で、それぞれに合ったツール選びしていらっしゃるということがわかりました。やりたいことを実現するには、まず自社に合ったツール選びが重要ですね。」と結び、セッションを終えました。

本セッションの講演動画はこちらからご覧いただけます。

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