10月13日に行われた「THE MARKETING NATION SUMMIT 2017」。多彩なセッションの中から、今回はパネルディスカッション「営業とマーケティングの連携~組織のあり方からインサイドセールス、ABMまで」の模様をお届けします。

<モデレーター紹介>

株式会社日経BP
ITproマーケティング担当 松本 敏明氏

1995年に日経BP社に入社後、日経ネットビジネス、日経コミュニケーションなどに在籍し、現在は ITproマーケティングを担当。BtoBに特化したマーケティング情報を毎営業日に更新し、庭山一郎氏の著書『究極のBtoBマーケティング ABM(アカウントベースドマーケティング)』(日経BP社)の編集にも携わる。

<パネリスト紹介>

株式会社HDE
インサイドセールス&デジタルマーケティング部 部長 水谷 博明氏

クラウドセキュリティサービス「HDE One」を提供するHDE社に勤務。セールス10年、マーケティング10年の経歴を持ち、セールスマインドを持ったデジタルマーケターとしてインサイドセールス部門を率いながら、営業とマーケティングの橋渡しを行う。

株式会社i-plug
Co-Founder 取締役 CMO 田中 伸明氏

グロービス社で法人営業を担当した後、大学院の同窓生とともに立ち上げたi-plug社にて、逆求人型就活サイト「OfferBox(オファーボックス)」を提供している。3年前からマーケティング活動を始め、学生の登録者数が5,500人(2016年度卒)から65,000人(2018年度初)へと急増。2017年9月末現在3,000社を超える企業が利用するサービスへと成長している。

KDDI株式会社
ソリューションマーケティング部 部長 中東 孝夫氏

消費財メーカーの宣伝部にてテレビCMやブランドマネジメントを経験後、BtoBのマーケターとして外資系IT企業にて広告やイベントなどを担当。2001年からリードジェネレーションに携わり、顧客DBの構築や、インサイドセールスを含むBtoBマーケティングの立ち上げを経験。2016年8月よりKDDIにおいて法人マーケティング部門を率いる。

I:Inside Sales(インサイドセールス)

松本氏:本日のテーマは、営業とマーケティングの連携で必須の用語の頭文字である「IOD」。IODとは、このセッションで取り上げる三つのキーワードの頭文字をつなげた『造語』で、多くの企業が取り組んでいることです。それぞれ何を示すのか明らかにしながら、話を進めたいと思います。最初の「I」はインサイドセールス。今、まさにマーケティングと営業の境界線にある、この機能を取り入れる企業が日本でも増えています。「営業の部署にあるのかマーケティングの部署にあるのか」「社内でやるのか外部に委託するのか」「スーパーバイザー(インサイドセールスを束ねる人)は誰なのか」という3つの論点について、3社の考え方の違いを聞いていきましょう。

株式会社日経BP
ITproマーケティング担当 松本 敏明氏

水谷:弊社の場合、インサイドセールスを立ち上げた理由は、インバウンドのマーケティングで得られるリードが極端に少なく、基本的にアウトバウンド(テレアポ)を中心とした組織体系になっていたという背景があります。営業というのは、すぐに案件化できなければ、リードを捨ててしまう生き物です。せっかく個人情報も入っているのに、捨てられたリードがどんどん溜まってしまう。これを活用しなければまずいという課題を解決するために、Marketoの導入とインサイドセールスの立ち上げを3年前に行いました。

インサイドセールスの主なミッションは、当然テレアポです。新規のアポイントだけでなく、訪問後のナーチャリングフェーズでのアポイントを取り、フィールドセールスにデリバリーします。もう一つ重要なのが、フィールドセールスへステップアップするための教育機関としての役割です。そのため、我々のインサイドセールスはフィールドセールスと1対1でペアを組んでおり、スーパーバイザーは存在しません。

株式会社HDE
インサイドセールス&デジタルマーケティング部 部長 水谷 博明氏

田中:そもそも弊社のターゲットである新卒採用をしている企業は、日本に30,000?35,000社しかないため、各社に2人ずつ担当者がいたとしても、アプローチする対象は60,000人?多くても80,000人ほどしかいない計算になります。だからこそ「いかにまた会いたいと思ってもらえるか」をとても大事にしているというのが、弊社のBtoBマーケティングの特徴です。

インサイドセールスはもともと営業傘下に置いていましたが、今はマーケティング傘下に持ってきて、ナーチャリングプロセスの最後をインサイドセールスが担うイメージです。なかなかメールマーケティングだけでは状態がわからなかったり、ナーチャリングしきれていなかったりするお客様がいるので、スコアを見ながらインサイドセールスがコミュニケーションを行う体制です。営業へのデリバリーは、お客様の状態に合わせて各自で判断するため、弊社もスーパーバイザーはいません。

株式会社i-plug
Co-Founder 取締役 CMO 田中 伸明氏

中東:ABMをやろうとしている企業全般に言えることですが、基本的にBtoBは非常に顧客が少ない。500人以上の企業は10,000社もないという狭い世界です。そうなると、少なくとも全社当たっていくのが大前提であり、到達率が大事になってきます。3回電話をかけて、お客様が電話に出てくれる確率が72%。さらにECPR:Effective Cost Per Reach(1到達あたりの有効到達コスト)を計算すると5,000円?6,000円なので、デジタルマーケティングよりもインサイドセールスの方が安い計算になる。だからうちではインサイドセールスを重要視しています。

KDDI株式会社
ソリューションマーケティング部 部長 中東 孝夫氏

松本:中東さんの考えるABMとは?

中東:一言でいえば、マーケティングリソースの傾斜配分です。儲かるところにマーケティングリソースを適切に配分しましょうと。あくまでも私の経験ですが、インサイドセールスを社内で突き詰めようとすると、ICT環境の整備や採用、教育といった悩ましい問題がたくさんあるので、今のところ外注一択だと考えています。

松本:それを聞いて、インサイドセールス部隊を内製化されている水谷さんは、どう思いますか?

水谷:実はこれまで3年間、内製化してきましたが、いずれフィールドセールスに人を渡さなければなりませんし、常に採用がうまくいくわけでもないので、人的リソースを内製化だけではまかなえなくなってきています。そこで、内製化でリカバリーできないところを外注でお願いして、インサイドセールスのメンバーが減ったら外注で補填できるよう、ちょうど今期から内製化と外注のハイブリッド型でやろうとしているところなんです。

松本:田中さんのところは、どうですか?

田中:弊社では営業傘下にあったインサイドセールスをマーケティング傘下に持ってきてから、水谷さんのところのようなハイブリッド型にしていたのですが、今はすべて内製化に戻しました。お客様に適切な対応で価値ある情報を提供しようとすると、外注の質では目指したいレベルに到達できなかったからです。今後はアウトソーサーとの連携を想定しながら、アウトソーサーを育てられるくらいのナレッジを蓄積しようと、教育ナレッジを積み上げているところですね。

O:Organization(組織のあり方)

松本:インサイドセールスの機能を生かすも殺すも、会社としての組織づくりにかかっていると思います。それぞれ、どのようにお考えですか?

田中:組織づくりは永遠の課題ですね。弊社のサービスは成功報酬30万円という大手に比べると非常に価格が安いので、なかなか利益を生み出すのが難しい。

ローコストオペレーションで、極めて高い生産性の組織を作ることが前提としてあるので、数字を見ながら愚直に改善を重ねていくしかありません。組織づくりの前にビジネスプロセスの設計を徹底的に行い、すべての指標を定量的なものにして改善しています。お客様に適切なタイミングで適切な情報を届けるために、SFDCを中心に据えながら、自社サービスのデータベースとMarketoのデータベースで動きのあるものをチャットワークに流して、デジタルマーケティング・インサイドセールス・営業の3つのチームがそれをもとにコミュニケーションをとっています。

中東:組織づくりのために、組織のミッションを定義して、それを図解するのが大変でした。あとはコミュニケーションの量にすごく気をつけています。穴あきバケツにリードを放り込んでも仕方がないので、穴を塞ぐための施策をするのがマーケティングのミッションだと定め、購買プロセスを明らかにして、漏れている箇所を探していきました。ただ、それだけでは絵に描いた餅になってしまいますので、組織ミッションを浸透させる必要があります。信頼関係を構築し、聞く耳を持ってもらって言葉や背景がわかって初めてコミュニケーションが成立するので、1on1のミーティングを部署の全員とやったり、報告を月次から週次に変えたりして、とにかく話を聞いて話をするところに、時間を割くようにしています。

水谷:インサイドセールスとデジタルマーケティングが強化されたことによって、会社の資産であるデータの質と量がかなり担保できるようになりました。加えて、弊社の場合はインサイドセールスがフィールドセールスの教育機関なので、教育カリキュラムを作る過程で、人を育てるノウハウも蓄積されました。ボトムアップで会社全体が強い組織となり、結果的に売上の最大化につながっていると思います。組織体制としては、今はインサイドセールスがデジタルマーケティング寄りにあるのですが、来年からはフィールドセールスの方に持って行こうと思っています。フィールドセールスはどうしてもデータに弱く、"データの入力なんて面倒"という人間が多いので、インサイドセールスと組むことでデータの重要性を理解してもらい、データの入力を自然と行える風土を作ることで、さらにデータが溜まっていく仕組みづくりをしようと考えています。

D:Data Management(データマネジメント)

松本:データにはいろんな種類がありますが、今日は顧客データの話を中心にしたいと思います。中東さん、いかがですか?

中東:今日一番お伝えしたいのは、「Demand Center=Omni Channel」ということです。リードをつくる仕掛けとして、いろんなチャネルがありますが、それらをシングルカスタマービューで見て、どこにいても一人ひとりを識別できる状態にしなければなりません。結局、何のためにデータを持つのかというと、改善するためです。数値化されないものは改善されませんので、改善のPDCAを回すためにはデータマネジメントが絶対に必要です。

水谷:弊社が溜めているデータは3種類あって、「1. 一般的な企業情報(従業員数・業種など購入できるデータ)」「2.マーケティングデータ(MAを使って誰がどういう動きをしているのか蓄積したもの)」「3.セールス活動データ(フィールドセールスの活動履歴)」。この中で我々の一番の資産は3つめだと考えています。これをデータベース化するために1年半かかりましたが、これがあるからこそ高い精度のナーチャリングを行うことができると考えています。

田中:弊社がこだわっているのは、データからお客様のペルソナを具体的に描くことなので、マーケティングチームのミッションとKPIを次のように変えました。

ミッション:(以前)アポの供給数→(今)商談のパイプラインの管理・営業の支援 KPI:(以前)アポ供給数→(今)全社で生み出した商談設置数

我々が商談のパイプラインをマネジメントするんだという意識を持つということです。営業は自分やチームの目標達成のために頑張ってくれていますが、我々はもう少し広いスコープを持って、"全社の目的を達成するためには、どこのパイプラインが弱いのか"を特定していく必要があると考えたからです。

これによって、営業やインサイドセールスとのコミュニケーションが増えてきていますし、"自分がどれだけアポをとるか"という発想から、"営業と連携してどうやって商談を最大化するか"という考えになってきているので、「ここで滞留しているお客様がこれだけいるなら、Marketoから営業担当者の名前でアポをとるメールを送りましょうよ」といった会話がどんどん生まれているので、すごくいい傾向だと思っています。

松本氏は今回の総括として、「各社それぞれ考え方が違いましたが、自社のIODを突き詰めた結果として、今ここまでたどり着いているのだと思います。みなさんも今日の話をヒントにしながら、自社のIODについて考えていただければ」と語り、パネルディスカッションを終えました。

本パネルディスカッションの講演資料はこちらからダウンロードいただけます。講演動画もございますので、ぜひご覧ください。

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