今回は、マルケト本社ブログの中から、著者Vicki Scheeleの「Insights on How to Achieve the Greatest Marketing Impact(マーケティング効果最大化の達成法への洞察)」を取り上げます(原文はこちら)。

Fearless Marketerのための2019年予測とトレンド」でも紹介した通り、「マーケティング測定と収益アトリビューション」は、マーケターが2019年に継続的に注目すべきポイントです。今後もマーケターは、自分の仕事が収益を生んでいるのかを自問し、組織に対する説明責任を果たす必要があります。これについて、著者Scheele氏は次のように述べています。

"マーケティング施策には、高い成果を出すもの、マーケティング部門のリソースが多く必要なもの、多くの営業リソースを必要とするもの、目的が明確な施策、継続的に実施するのが当たり前になっている施策などがあります。しかし、一体どのマーケティング施策が最も効果があるのかについては、組織内でも意見が分かれています。その結果、施策を絞り込むことが困難になっています。"

マーケティングの効果測定」は、ロンドンで開催されたマルケトイベントMarketing Nation Engageにおいても最優先テーマとして取り上げられました。本記事では、世界のマーケティングリーダーが効果検証のどこで頭を悩ませているのか、そして各テーマにおいてどんな対策ができるかを紹介します。

アトリビューション:マーケティング施策の収益への帰結

みなさんはマーケティングの施策貢献度をどのように測定していますか?
リードジェネレーション施策で、何件リード創出でき、そのリードから何件・いくらの受注につながったかどうか、シングルポイントビューの測定をしていませんか?

これは評価基準の一つではありますが、実際には、B2Bの商談の創出には複数の施策が貢献しているため、施策ごとの貢献度分析を精緻に行うことよりも、全体を可視化することが何よりも重要です。

ここでのアトリビューション分析とは「コンバージョンに至ったアクションだけでなく、コンバージョンに至るまでの全ての接触メディア・経路の貢献度を測ることで、仮説検証の精度を上げる取り組み」のことを指し、基本的には次の5類型が存在します。

image4.jpgクリックで大きく表示されます
(参考資料:マルケト マーケティング入門「アトリビューション分析の概要と分析手法の具体例」)

このうちのどれが「良い」モデルなのかを見極めることは簡単ではないと筆者は考えます。

"...モデル化は困難です。ファーストタッチやラストタッチアトリビューションモデルの考え方は至ってシンプルですが、偏った判断につながる可能性があります。例として、ラストタッチモデルでは、課題認識や情報収集フェーズの施策の優先度を下げ、比較検討や、意思決定フェーズでのユーザーの検索行動に対応する施策に多大な費用を投入してしまう恐れがあります。"

一方で、3~5のマルチタッチアトリビューションモデルでは、すべての接触を評価対象とし、より長い商談サイクルに対し、よりバランスのとれた見方を可能にします。ただし、各ステージにどの程度の重みがあるかを判断することが求められるため、ファーストタッチやラストタッチのように単純にはいかないのが難点です。ただ、どのケースも一度比重を含めたモデリングさえしてしまえば、プログラム化し簡単に更新レポートを得ることができます。1~3のモデルであれば、マルケトの「プログラムアナライザー」という機能を使用し、施策の費用対効果も明らかにできるので、リードジェネレーション施策に偏ることなく、データドリブンな予算配分ができます。

記以外にも、商談・受注から一定期間遡って発生した全接触をインフルエンスキャンペーンとし、一商談に対して、最も貢献したと定義できる接触の一つを主キャンペーンソースとする判定手法も特にB2B領域においては用いられています。いずれのアプローチも一長一短あるため、マーケティング施策の量・種類・頻度、さらには商材やビジネス形態によって変わる顧客の購買検討プロセスと平均商談期間に最も適したアトリビューションモデルを設計する必要があります。まずは、それらの要素を加味し、最適と思われるモデルを仮説立てて、効果検証を実施してみることです。その結果を受けて必要な改善を行うようにしましょう。一つ注意点として、将来に異なるモデリングに修正する際に必要となりそうなデータは完全消去せずに保管しておくことをお勧めします。

マーケターにとって最も重要なのは、設計したアトリビューションモデルに基づき、マーケティングの効果検証を行い、組織に対する説明責任を果たすことであると筆者は語ります。これができないと、プロフィットセンターとして認知してもらえず、予算を増やす必要があっても説得力に欠け、承認されないなどということにつながりかねないためです。

"マーケティング施策の収益への貢献度を明確にできることは、リーダー層や、マーケティング責任者と会話をするのに、非常に重要なスキルです。"

KPI

image4.jpgクリックで大きく表示されます

KGIの構成要素がPIであり、その中でも鍵となるものをKPIと呼ぶことは、みなさんご存知のとおりかと思います。しかし、その鍵となるPIが10個も存在するケースもあります。そういった場合には、実はあまり重要ではないPIがKPIとして設定されてしまっている可能性を疑いましょう。そうした状況における課題の一つは、各担当者がたとえ共通のKGI(例えば受注)を見ていても、それぞれのKPIが実質的に異なってしまう点です。これではチームが一丸となってゴールに向かうことは難しくなります。リソースが有限である以上、あれもこれも重要指標として追うことはできません。チームが一丸となってゴールに向き合うためにはゴールに対する各担当のベクトルをうまく噛み合わせ、成功のための指標を絞り、組織としてのKGIへの貢献度を実質的に上げていくことが必要です。パフォーマンスを測る指標はたくさんありますが、KGIを因数分解し、どこがボトルネックになるかを見極めてKPIを設計するようにしましょう。

"主要KPIは何か、それらKPIに貢献する要因は何かを把握することが重要です。"
"マーケターが直面するもう1つの課題は、どのようにKPIを継続的に最適化するかですが、これについては、注意深くKPIを追いかけることが対策の1つです。KPIがきちんと目標値に向かって推移していれば、正しい方向に進んでいる、ということになります。"

チャネル

近年、顧客へのアプローチ手法がデジタルに置き換わりつつあるという説もありますが、実際の各社調査では、顧客は購買検討のフェーズにかかわらず、ウェブサイトだけでなく、テレビなどのマスメディア、パンフレットなどの紙媒体等も参考にしているという結果が出ています。このようなマルチチャネル・プレゼンスの必要性に応えるため、ほとんどの企業がデジタル、イベント、オフライン、営業などの複数チャネルを組み合わせてマーケティング活動を実施しています。デジタルチャネルにおける効果測定は最も簡単に行えますが、これらマルチチャネルにおけるパフォーマンスをシングルカスタマービュー(統合された顧客ビュー)で測定することは課題になっています。中には広報やブランディングのように、測定が難しいものもありますが、両者においても「売上げこそがKGIである」という認識を持つことが重要です。それらを含める全チャネルを統合的に効果測定することで、どのマーケティングミックスがどのように貢献したのかを把握できます。

"マーケティング活動はさまざまなチャネルにまたがっており、それ自体も課題になります。営業およびマーケティングチャネル全体を通じて、各チャネルには異なる役割があり、その意図も異なるので、エンゲージメントレベルを測定する、「不変的な手法」というものは存在しないためです。そこでアトリビューションが効果を発揮します。各チャネルのどのステップで、どのように収益に貢献しているかを把握することにより、各チャネルに適切なリソースを割り当てることができます。うまくいっていないことを証明できない施策は、打ち切ることもできないということも、ぜひ覚えておいてください。逆にどのチャネルで価値を生み出せているかを証明できれば、更なる予算とリソースをそこへ投入できる、ということです。"

レポーティングとROI

長い販売プロセスや、マルチタッチが発生する販売プロセスにおいては、一度だけレポーティングをするだけでは不十分で、長期的な測定を行う必要があります。マーケティングのROIを測定し、収益観点で成果を語ることは必ずしも容易なことではありません。組織内での考え方を変えるために他の部署を説得し、適切な指標を適切な担当者に設定するなど、マーケターに求められる役割は多岐にわたります。マーケターは常に過去の基準を超え続けることが仕事の一つであるとよく言われますが、効果測定の手法についても同じことが言えると筆者は考えています。

"現時点では、マーケティング活動の効果を証明できる段階に達していない企業が多いのが実態です。主要指標カテゴリの選定は比較的容易ですが、それを構成する指標の定義に苦労しています。また、ベンチマークの設定で悩んでいる企業も多く存在しています。この場合、まずは全員がシンプルな測定基準での共通認識を持つようにすることが望ましいでしょう。その次に、各商材の目標を設定し、測定基準と適合させましょう。これらの土台が整って初めて、成約に至った、かつマーケティング活動の影響を受けた営業訪問許諾への貢献度を測定することができるのです。言い換えると、これにより、マーケティング投資費用対効果(ROMI)の測定に取り組むことができるということになります。"

結論

そして著者はこう締めくくります。

"これまで以上に多くのマーケティングチャネルや施策を自由に使えるようになったことで、マーケターにはさらなる決断力が求められています。最も影響力のある施策を証明するためには、マーケティングミックスの要素を相互評価できないといけません。さらに、測定が収益観点で行われることが、最も重要なポイントです。それによって、ビジネスにおけるマーケティングの価値を証明し、マーケティングへの認識を改善し、さらには将来の予算申請内容を正当化できるためです。"

多くの国内企業でマーケティングへの取組みが拡大し、マーケティングへの期待が高まっていることに議論の余地はありませんが、マーケティングに対する期待や測定方法が不明瞭な状態に陥っている企業も少なくありません。マーケティング成熟度や実行レベルが高い組織においても、「成果指標の設計」「効果検証」は常に大きな課題であり、かつ、継続的な改善が求められるポイントでもあります。

今回はマーケティング投資の効果を最大化するための課題とこれからについて紹介いたしました。