これはよく引用している数値ですが、顧客体験の向上を通じて顧客関係の維持と拡大に取り組んでいるマーケティングリーダーはわずか13%しかいません。しかし今、私たちはEngagement Economyという、あらゆる人とモノがつながるデジタル世界で生活しています。この新しい時代では、顧客の維持は獲得よりも急速に重要になってきています。

そのため、Engagement Economyでは、顧客が低コストで切り替え可能なビジネスモデルが多く見られます。たとえば、ライドシェアリングアプリや銀行の選択肢を見てください。LyftとUberは、顧客の関心とブランドへの親近感を得るために常に競争しています。一方、Bank of AmericaとWells Fargoは、適切なオファーがあれば、消費者はほとんど悩むことなくまったく新しい金融機関に乗り換えるということは分かっています。規模は大きくなりますが、同じ枠組みがB2Bの世界にも当てはまります。企業は長期的な契約を最小限に抑えながら、クラウドベースのアプリケーションに切り替えることができます。

リテンションマーケティングは時代遅れ

ではマーケターとしては何ができるでしょうか?賢いブランドなら、Engagement Economyで競争するには、顧客と関係を築く方法を見直す必要があることを分かっているはずです。まずは「リテンションマーケティング」という言葉を忘れる必要があります。これは完全に誤っている名称です。そうではなく、リテンションは、顧客ライフサイクル全体でスマートマーケティングを実施した結果得られるものと考える必要があります。

マーケティングは、まずはアクイジション: 獲得(ほとんどのマーケターの方にはおそらく馴染みのある活動でしょう)から着手します。ただし、そこからアドプション、クロスセル、アドボカシーを採り入れていくのが賢明な方法です。

マーケティングリーダーは、今日そして今後も成功を収めるには、人員とプログラム資金を配分し、ライフサイクルの各ステージで戦略的にマーケティングを実施する必要があります。それでは詳しく見ていきましょう。

今こそアドプションマーケティングを実施するとき

顧客が製品やサービスを購入した後、マーケターは次の2つの大きな誤りを犯しがちです。

  • 製品やサービスの追加のためのマーケティングをすぐに実施する
  • 新規顧客へのマーケティングを完全にやめる

どちらも、顧客第一に考えることを忘れたブランドで見られる典型的な誤りです。

この2つの極端な行動の中間を上手く取るのが、アドプションマーケティングです。これは、顧客が成功するように引き続き顧客へのマーケティングを行うとともに、価値の創出と提供を継続することです。まずは、顧客一人ひとりが、購入した商品から最大限の価値を得られるようにします。

どうすればそれが可能でしょうか?顧客が購入した各ソリューション/製品/機能の導入の現状把握から始めましょう。テクノロジーを使えばこれは簡単に行えます。たとえば、カスタマーサクセスソフトウェア、CRM、マーケティングプラットフォームから得られるインサイトを利用できます。それに基づいて、直接的なコミュニケーション、カスタマーコミュニティ、教育プログラム、マーケティングナーチャリングなどのプログラムを策定したうえで、パーソナライズしたヒント、ベストプラクティス、ケーススタディを提供して、価値を最大限に高めましょう。

これは顧客にメリットがあるだけではなく、賢いビジネス手法でもあります。顧客にとって貴社製品が不可欠のものになるほど、競合の製品に切り替える可能性が低くなります。さらに、新しい顧客を獲得するよりも既存顧客を維持する方が、はるかにコストを抑えることができます。

何らかの形でアドプションマーケティングを実施しなければ、別の製品であれサービスの更新であれ、他のものを販売しようとしても無駄に終わるでしょう。

クロスセルが重要性を増す

顧客のアドプションが完全に終わったら(顧客が満足したら)、そこではじめて製品やサービスの追加販売を考え始めることができるようになります。クロスセルマーケティングは、新機能や新製品を発表するときにだけ検討するべきものではありません。アクイジションと同様、カスタマージャーニーに欠かせない部分であり、専用のリソース(人材と予算)が必要です。Engagement Economyでは、クロスセルはさらに重要性を増すことになります。顧客が複数の製品を導入すると、リテンションが高まるためです。

根本的には、クロスセルマーケティングは行動マーケティングに根ざしています。製品やサービスを使って顧客が何をしているか把握し、業務の効率を高めるには他に何が必要か知り、さらなる価値をもたらす補完的な製品やサービスを提供することで関係を築く必要があります。

この好例が、企業価値数十億ドル、企業向けセキュリティソフトウェアベンダーのKaspersky Labです(マルケトの顧客です)。Kasperskyでは、ライフサイクルの各ステージの全顧客の状態を導入状況に基づいて把握するために、顧客ロイヤリティを数値化しています。このスコアを使用し、クロスセルとアップセルのチャンスを評価して、最適な顧客に最高のタイミングで接触して、新製品やサービスを提案しています。その結果、クロスセルによる収益と顧客維持の向上を達成しています。

アドボカシー--顧客の「好き」を「大好き」に

さて、顧客が製品を上手く導入したとしましょう。満足度の高い顧客はブランドのアドボケートになる可能性があります。

ブランドアドボケートを割り出す2つの重要な基準は次のとおりです。

  • 顧客ロイヤリティとアドボカシーを区別する。ブランドのアドボケートにならずとも、ブランドに忠誠心を持つことはありえます。また、航空会社、ケーブルテレビ事業者、ソフトウェアプロバイダーなど、「ロックイン」によるロイヤリティの場合もあります。
  • 最大の利益が得られる顧客と最高のブランド アドボケートとの間に強い相関関係があると想定しない。ブランドに対する情熱を示すために度を超した行動をとるようなブランドアドボケートが、大きなお金を落としてくれるとは限りません。ただし、他の方法で大きな価値を提供してくれます。

平均的な企業では、アドボケートの候補者は非常に少数です。私はこれをインターネットのコンテンツ消費に当てはまる「1パーセントルール」のように考えています。顧客基盤が既に確立しているブランド、または顧客基盤が急成長中のブランドでは、顧客の90%が静観者であり、9%がファン、1%が熱心な愛好家です。

自分では発言しない静観者も、ブランドの製品やサービスを利用します。企業としては、こうした人々が製品について本当のところ、どう思っているかは、ブランドへのエンゲージメントが低いため、ほとんど分かりません。このような顧客は、貴社製品から他社製品に切り替える可能性が最も高い顧客です。またこうした顧客からは、あまり大きな価値を得ることができないでしょう。新製品やサービスを販売することが困難なためです。

次にファンです。この9%の人々は、通常、製品を利用して満足していますが、貴社のアドボケートになる見込みはほとんどありません。より信頼度の高い収益源として、ブランドに価値を提供してくれますが、アドボケートになりうる(アドボケートにするべき)人たちであり、まだ潜在的な可能性を持っています。

大切なのは、ファンを最後の1%の、熱心な愛好家の顧客グループに転換することです。愛好家はブランドアドボケートのいわば、スター軍団です。製品を利用して満足しているだけでなく、そのことを周囲に宣伝する用意があり、また顧客紹介から各メディアのオンラインレビューの機会まで、アドボカシー活動に関わってくれます。Yelpのようなレビューサイトが大きな重要性を持つ時代では、ブランドを賞賛する顧客は、企業にとってきわめて貴重です。ファンの顧客を1%でも愛好家のカテゴリに移すことができれば、アドボケートが100%増加することになります。

生涯にわたる顧客

顧客をその生涯にわたり維持することは重要ですが、その場合、カスタマージャーニーのすべてのステージで顧客との関係を、顧客が最も好むやり方で維持する必要があります。Engagement Economyでは、顧客マーケティングに適切な方法でアプローチすることで、長期的な関係を築き、顧客の心をつかむ競争に勝利するチャンスが得られます。

この投稿の元記事はMarTech Todayで公開されている「The New Customer Marketing Lifecycle in the Engagement Economy(Engagement Economyにおける新しい顧客マーケティングライフサイクル)」です。