ゼロから始めるデジタルマーケティングを成功させる秘訣とは? ゼロから始めるデジタルマーケティングを成功させる秘訣とは?

ゼロから始めるデジタルマーケティングを成功させる秘訣とは?

2020年12月8日〜10日に開催されたONE Marketing社主宰のオンラインカンファレンス「Go-To-Market 2020」の中から、本稿では「デジタルマーケティング先駆者の苦悩に学ぶ。知っておくべき、壁の乗り越え方」の模様をお届けします。登壇者は2020 Marketo Masterに輝いたMarketo Engageのユーザー代表のお三方です。モデレーターはアドビ株式会社 DXマーケティング本部 マーケティングマネージャー 松井 真理子が務めました。

デジタルマーケティング導入のきっかけ

松井:デジタルマーケティングの必要性を感じながらも、なかなか導入に踏み切れない方も多くいらっしゃるかと思います。みなさんは、デジタルマーケティングの導入にあたって、当時どのようなきっかけがあったのか、教えてください。

石井氏:当時、社内にいくつかの課題があると感じていました。「ジェネレーション→ナーチャリング→クオリフィケーション/ネゴシエーション」という販売プロセスがある中で、それぞれの部門が単体で動いていました。連携が取れていなかったのです。

まず、ジェネレーションのところでは、展示会でリードを集めてExcelで営業に渡すだけ。そこに対して、初回のアプローチをしたかどうかしか追いかけられていませんでした。

次に、ナーチャリングでは、本来ならプロセスが進むにつれて顧客の興味・関心度を引き上げて行かなければならないのですが、その意識を持てていなかった。顧客を育成するという連続性を持った考え方ができておらず、単発の施策を行うだけになっていました。

最後のクオリフィケーション/ネゴシエーションを担当する営業部門では、リードに対して実際にアプローチするかしないかは、個人の判断に任されていたので、ステージ管理の仕方がそれぞれ異なっており、包括的に把握することが困難でした。

そこでテクノロジーを導入して、データを集めて可視化することで、施策の効果が発揮されるような仕組みづくりを徐々に進めていきました。最初は、営業情報のデジタル化を図るべく、2016年にkintoneを導入して案件管理ができるようにしてから、2018年にMAを以前使っていたものからMarketo Engageに切り替えて、顧客の興味・関心度を把握できるようにしました。2019年には社内でSlackが導入されたので、ホットリードやMQLの通知をMarketo EngageからSlackに飛ばして、インサイドセールスがすぐに架電できる体制を整えました。

日高氏:私がMarketo Engageを最初に導入したPCメーカーのときの話をすると、当時のマーケティング施策といえば、不特定多数への広告宣伝を中心としたアプローチでした。しかし、B2Bでは単純に広告を見せて顧客を待っているだけではやってこない、B2B特有の商習慣に対応したアプローチが必要と気が付き始めたのです。

  • 顧客が特定されており、個別に対応する必要がある
  • 購入者(意思決定者)がユーザーと必ずしも合致しない
  • どのタイミングでリードから顧客に変わるかわからない
  • 購入が決まると、一件あたりの金額が大きい
  • 継続的な取引関係につながる

実はMarketo Engageの導入にはONE Marketingさんに入っていただいたのですが、私がB2Bマーケティングについて検索したときにONE MarketingさんのWebサイトに辿り着き、そこで資料ダウンロードしたら、インサイドセールスからお電話をいただいて、セミナーを受講しました。その後、ナーチャリングメールが届くようになり、興味・関心が高まったところで社長からご連絡いただいて、どんどん私たちのエンゲージメントが高まっていき、最終購買(導入コンサルティングの契約)に至りました。

この一連の体験こそ、まさにB2Bマーケティング。これをどう自社に置き換えていくかという発想で、以下の図のような仕組みを整えていきました。

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谷風氏:2018年4月に、経営者から「うちのマーケと営業が、このままだとちょっと心配だ」と相談を受けたところから始まりました。「まず『昔のお客様にアポを入れて』と言っても後回しにされてしまって、休眠顧客の掘り起こしができていない。忙しいのはわかるけど、新規メインの営業に依存していると、オリンピックが終わった2020年以降に不況を迎えたら、やばい気がする」と。そこで営業にヒアリングしてみると、「いや、とにかく今が大事だ」と。見事に経営者と現場との間にギャップがあることがわかり、マーケ・営業改革プロジェクトがスタートすることになりました。

まずマーケ・営業の関係者と経営陣を集めて、合宿形式で「あるべき姿」について8時間くらい議論。そこで合意が取れたのが、次の3点です。

  • ケンブリッジ・ファンにしか売らない。改革の意思がない人には、金を積まれても売らない。
  • 売り物(顧客に提供する価値)は「プロジェクトの成功」であって、コンサルティングでもファシリテーションでもない。
  • 私たちのミッションは「改革の意思の醸成」であり、「ファンを何年もリテンションし続ける」こと。

こうして「あるべき姿」を定義すると、今とのギャップを洗い出せるようになり、そこから具体的な将来の組織・業務を次のように策定していきました。

  • 顧客をファンの度合いに応じた「生簀」で管理する(セグメンテーション)
  • 匿名リードのうちからコンテンツ回遊を促し、ファン層に育てていく
  • ある程度ファンになったら、商談が出そうか(改革の芽はあるか)、効率的に引き出していく
  • 改革の芽が出たら、フィールドセールスが醸成していく
  • 改革の芽が出なくても休眠しても、数年間にわたって継続的に追い続ける

この太字の部分を人間がやるのは大変です。一番大変なのは、「数年間にわたって継続的に追い続ける」ところ。人間は忘れてしまうので、定期的にドアノックするために、コンテンツを届ける仕組みを入れるべきだと、デジタルマーケティングを始めることにしました。

デジタルマーケティング導入時の苦労

松井:では次にデジタルマーケティング導入時の苦労について伺いたいと思います。

石井氏:MAの導入に関しては、Marketo Engageの前に別のツールを使っていたので、そんなにゴタゴタはしませんでした。ただ、全体のプロセスに沿って徐々に役割を広げていきたいと考えていたので、マーケティング部だけでは完結できず、プロセスをどう切り分けて、他部門とどう連携をとっていくかを考えるのに、すごく苦労しました。

具体的には、ジェネレーションとナーチャリングでMAを入れても、結局その先のインサイドセールスやフィールドセールスが動いてくれなければ意味がない。彼らが何を考えているのかをしっかりと理解したうえで、ジェネレーションやナーチャリングをしなければいけません。他部門の業務を深く理解するのがまず大変でした。また、「それならこういうテクノロジーを入れてデータをためたほうがいい」という提案を理解してもらうのも苦労しました。ちゃんと根拠を提示して価値をわかってもらえれば他部門の人も動いてくれるようになるので、めんどくさがらずにちゃんとコミュニケーションをとることが大事だと思います。

谷風氏:私たちの場合、組織間のコミュニケーションについては導入前にすべて終わっていたのですが、導入の進め方を決めるのに最初は苦労しました。Marketo Engageにはレベル1〜4のMaturity Curve(習熟度)というのがあります。私たちがやりたかったのはレベル4の「顧客の成長プロセスを長期的にカバーする仕組みを作れる」ところ。これができるからMarketo Engageを選んだのです。しかし、Marketo Engageの導入コンサルの方に提示されたのは、「3ヶ月でレベル1の単発メールが打てるようになりましょう」でした。

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ベンダーとしては、レベル1から始めて小さな成功体験を重ねながら、徐々にレベルアップさせていくというのは、至極当然の論理。しかし、私たちが実現したいのはメールを打つことではない。「こういう仕組みで業務を回すための設定方法を教えてくれ」と。初期のすり合わせと導入スケジュールの策定に、非常に苦労しました。ここで苦労したおかげで、3ヶ月で僕たちが望む形に行き着いたので、していい苦労だったと思います。

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日高氏:先ほどお話しした通り、私は自信が体感したB2Bマーケティングを実装したいという発想で進めていきましたが、統合的な顧客基盤を構築するためには、MAの領域・SFAの領域・サポートの領域も含めて、まとめていく必要があります。だからこそ、ゼロからのデジタルマーケティング導入には、幅広い知識とやり抜く体力が求められると思います。最終的に、組織で同じ目標を持ち、どの領域の人も同じデータを見られるようにすることが大切。目指すゴールの絵を描き、形にしていくところに苦労しました。

松井:お三方とも全体を見ていらっしゃいますが、組織に一人は全体像を把握している人がいたほうがいいですよね。海外だとマーケティングオペレーションズという専門職があるのですが、日本では浸透していない職種なので、システム連携の話にも踏み込んで他部門との調整を自ら率先してやっていけるマーケターが必要になってくると思います。

デジタルマーケティング導入後に乗り越えるべき壁

松井:では最後のテーマです。導入後に乗り越えるべき壁について、お話しいただけますか。

谷風氏:最初に組織の壁を乗り越えて、導入後ベンダーとの壁も乗り越えて、もう何も壁はないだろうと思ったら、あったという話です。デジタルマーケティングの真骨頂はテクノロジースタックだと感じています。自社のやりたいことに合わせたテクノロジーを選定し、それらをつなぎ、より効率的で効果的なマーケティングをすることが大事。

Marketo EngageとSalesforceをつないだときに、ある問題が起こりました。Marketo Engageからデータを送り、本来ならSalesforceの値が変わる想定だったのに、変わらない。それぞれのベンダーに問い合わせるも、どちらに原因があるのかわからず、課題が宙に浮いてしまいました。しかし放置するわけにもいかず、同じような壁にぶつかったユーザーを探し、解決策を教えてもらうことで乗り越えることができました。様々なテクノロジーをつなげばつなぐほど、つなぎ目のところで問題が出やすいので、自分たちだけに起きている現象だと思わずに、日本中、世界中のユーザーの知恵を借りて乗り越えることが大切だと思います。

石井氏:おそらく導入後にもいろいろな壁が出てくると思うのですが、今だからこそ言えることとして、次の3つを挙げておきます。

・コントロールできる範囲の整理と調整
自分のコントロールできる範囲を理解した上で調整すると、どこと何を調整しなければいけないのかが明確になる。

・短期と長期のビジョンを作っておく
最終的な理想像に向けて進んでいくことがとても大事。ただそればかりだと成果が見えず、途中で止まってしまうことがあるので、長期と短期のビジョンをあらかじめ作り、それを周りに伝えておくことが大切。

・組織やツール単体で考えるのではなく施策トータルでプロセスを意識する
それぞれの組織が個々に施策を打つのではなく、プロセスを包括的に見て、打つべき施策を考えることで、連続性を持ってお客様に影響を与えていくことができる。

日高氏:まずは、「リードがどう創出されて、そこからどう受注までつながっていき、その後どうなっていくのか」というマーケティングファネルの全体像を理解し、それぞれ誰が担当しているのかを、みんなで同じように理解することです。そうでないと、「リードの獲得数」や「メールの開封率」といったマーケティング施策単体の結果をゴールとして見てしまいがちになるんですよね。でも本来、マーケターが見るべき数字は、マーケティング施策が受注に寄与した結果であるはず。「ちゃんと売上に貢献できるマーケティング施策ができているのか」を考えなければいけません。そのためにはゴールをみんなで理解して、そこから逆算して施策に落とし込む必要があります。これができていないと、組織の間に壁ができてしまい、乗り越えられないまま終わってしまうので。

松井:みなさん、ありがとうございました。私も長年デジタルマーケティングに携わっていて思うのが、自社の商材で何かを変えようとしているお客様のことを忘れてはいけないということです。変化し続けるお客様の状況を常に考えながら、マーケティングをしていただきたい。「デジタルマーケティング=ツール導入」としてしまうと、ツールの導入に必死になるがあまり、お客様を置き去りにしてしまいがちなので、ぜひお客様に提供できる価値を念頭に置きながら、デジタルマーケティングに取り組んでいただければと思います。

<登壇者紹介>

さくらインターネット株式会社 インサイドセールスグループマネージャー 石井 浩氏
2012年さくらインターネット入社。企画部、営業企画室でデータ環境の整備など経験後、マーケティングぶに異動。MAツールの切り替えや組織間の協力体制構築などを実施。2019年5月よりインサイドセールスグループに異動し、リード獲得から案件化の仕組みづくり、セールス領域へのテクノロジーの導入を進めセールスオートメーションを構築中。2019年度 Marketo Champion受賞、2020年度 Marketo Master受賞。

ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 谷風 公一氏
「プロジェクトを成功させるのが得意」なコンサルティングファーム、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズで、コンサルタント/ファシリテーターとして、数々の企業変革、DX推進のプロジェクトに参画。2019年、社内でマーケティングにスイッチ。自社のマーケ・営業組織を改革、デジタルマーケティングを導入。そのままマーケ責任者に。2019年Marketo Champion、2020年Marketo Masterを受賞。

株式会社エイトレッド マーケティング部 部長 日高 康成氏
金融のデータ分析を3年、青山の有名美容室の創業サポートから店舗運営を10年経験。同時期に海外からのインテリア商品輸入とEC運営を行う。2016年よりVAIO株式会社に入社しEC責任者からMA/SFAを担当し、2018年Marketo Champion受賞。その後アドビ株式会社(Marketo)に入社し、マーケティングとプリセールスを担当。2020年1月からはエイトレッドのマーケティング部長として、B2Bマーケティングを中心に、広報業務を担当。メーカーでのマーケティング、MAベンダーでの経験を活かし、レベニューモデルを構築した結果、2020年Marketo Masterを再度受賞。

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