株式会社エヌ・ティ・ティ・データ(略称 NTTデータ)人事本部 人事統括部 採用担当 部長 髭 直樹様をお招きして、お届けしている「Fearless Marketer」。

前編に続き、後編では、育成担当から採用担当に異動された髭様の考える、これからの採用マーケティングのあり方について、弊社 タレントエンゲージメント&オペレーション ディレクターの千葉 修司と、担当営業であり髭様の大学の後輩である大根 慎也が、お話を伺いました。

一人ひとりと向き合うことで新入社員は成長する

千葉:2年間の育成担当を経て、昨年7月に採用チームに異動されたそうですが、その当時はどんな想いでいらっしゃいましたか?

髭氏:育成の中で新人研修を担当していたときに、一人ひとりの社員をしっかりと見ることの大切さを学んでいたんですね。400人の新入社員は、個性も入社の動機もみんなバラバラなので、新入社員という1つの塊で見るのはやめようと思ったんです。

彼らと2ヶ月間研修所にいる中で、全員の顔と名前を覚えて、一人ひとりの人間性を理解しようと努めました。食堂で「相席よろしいでしょうか」と声をかけたり、「常に見ているよ」というメッセージが伝わるよう、セッションの最初に前に出て、目的や意義を語ると同時に、注意すべきことや期待していることを伝えたり、自分が行けないときは手紙を書いて代読してもらったりして。

彼らも個人として見てもらえていることがわかると、取り組む姿勢が変わるんですよね。NTTデータに入ってくる人たちは、みんな根っこに熱いものを持っています。それが学生生活の間に、余計な脂身で覆われてしまっていたとしても、人事の熱量で溶かしてやれば、あとは自分たちで刺激しあって、すごく成長できると信じていたんです。

そうした経験があったので、採用に来たときに考えたのは、OB訪問や面接といった"点"で評価するのではなく、一連の採用プロセスを線で捉えて、就活を通じた育成ができるのではないかということでした。

うちの会社に育成と採用を両方やっている人があまりいないので、そんな風に、採用と育成をシームレスに考えられたのは、良かったと思っています。

デジタル×アナログで実現する採用マーケティングとは

千葉:そんなときに大根さんと再会して、候補者一人ひとりとのコミュニケーション、リレーションづくりを強化するためにMarketoを導入していただいたというわけですね。

大根:「採用って、マーケティングだと思っているんだよね」とおっしゃっていたので、「マーケティングをしっかり進めるために、マーケティングオートメーションというソリューションがありますよ」とご紹介したら、「まさに、それだね!」という話になったんですよね。

髭氏:そうそう。人事部に異動になったときに、「採用は、うちの中で唯一のBtoCの仕事だよな」と思いながら、一人ひとりの学生と接点を持っていく中で、彼らには、まだまだ十分な情報提供ができていないと思っていたんです。

去年から学生に向けて伝えているキーワードに"自己実現"があって、「自己実現のためにNTTデータというフィールドを活用してもらいたい」と話しているのですが、実際のところ就活の中で得られる情報は限定的です。自己実現するためにNTTデータが最適なのかを判断する材料を、こちらから十分に渡しきれていないというのが現状で。もっと学生の視野を広げられるような、能動的な情報発信がしたいと、常々感じていました。

そのためには、学生一人ひとりの興味・関心に寄り添うことがとても大事なんですね。AIに興味があるとか、社会貢献がしたいとか、学生のやりたいことが無限にあるのと同じように、NTTデータにはそれに応えられるだけの幅広いフィールドやキャリアパスがあるということを、どうすれば伝えていけるのか。

また、ITの仕事はわかりづらいので、メディアでもてはやされているキラキラした結果に至るまでの泥臭い努力を知ってもらうために、OB訪問やリアルイベントなどのコンテンツに足を運んでもらうためには、どうやって情報を届ければいいのか。

それに、就活はとても期間が長いし、全員が同じタイミングで立ち上がって終わるわけでもないので、これまでのように、こちらのタイミングで一斉に情報発信していても、そのタイミングでNTTデータに興味がない学生には、リーチできないというジレンマもあった。

だからこそ、Marketoでオンラインとオフラインの接点を融合しながら、学生の気持ちに寄り添った長期的な関係構築をしていきたいと考えました。

千葉:従来の企業主導による採用活動から、学生に主眼を置いた情報提供やコミュニケーションをされていきたいということですね。実際にMarketoを導入されてみて、いかがでしたか?

髭氏:今は、インターンに応募してくれた学生に、もっと会社を理解してもらうために、10月から3月にかけて、事業やプロジェクトの内容、働いている社員や会社の制度などを、順を追って紹介していくプロセスを考えながら、実際に情報提供を始めているところです。

Marketoを使うことで、彼らにどれくらいアプローチできているのか、データを取れるようになったことが、大きな進歩だと思っています。

大切にしているのは、自分自身がなるべく現場に出て、多くの学生に直接会うことです。Marketoでデジタルを強化したからこそ、アナログも大切にしていきたい。デジタルで接点のある学生をアナログに誘導することで、デジタルだけでは伝えきれない情報を伝え、入社後のイメージが湧くような取り組みも強化していきたいと考えています。

数字から得られる気づきを改善につなげる

千葉:Marketoによって可視化が進んだことで、何か新たな気づきはありましたか?

髭氏:昨年までのインターンシップは「新規ビジネスを考える」というテーマで実施していたのですが、今年から内容をガラッと変えて、育成をテーマに、私と課長が4日間の講師として入り、リアルなNTTデータの仕事を体験してもらった上で、「会社に入ったらこんなことが求められるよ」というフィードバックを行いました。

すると、学生から90%を超える満足の声が上がり、我々としても非常に手応えを感じていたんです。「これはエンゲージメントが上がったぞ」と。

千葉:人事はアンケート結果で成否を判断しますからね。

髭氏:ところが、後日、彼らにMarketoからメールを送ってみたところ、メールの開封はしてもクリックしてくれない人が多くいて、「え、そんなものなの?」と拍子抜けしてしまいました。

なんとなくインターンの満足度が高かったら、うちにエントリーしてくれると思っていたのに、蓋を開けてみると、そうではないことが明らかになった。このギャップを捉えられたことは、大きな意味があったと思います。

千葉:これまで見えなかった事実の発見は、その後の打ち手を考える上で、大いに発展性を感じます。

髭氏:このように、数字から気づきを得て、仮説を立て、チューニングしていく、というサイクルを回し続けることが大切ですよね。

千葉:まさに、その通りだと思います。今後は、この取り組みを中途採用にも生かしていきたいということですが、具体的にどんなところにMarketoを生かせそうだとお考えですか?

髭氏:新卒には、新卒採用のプロセスの中で、会社の情報をたくさんもらえる特権があると思います。また、うちはこれまで中途採用にそれほど力を入れて来なかったのですが、今年から中途採用をもっと拡大していきたいと方向転換をしているため、いろいろなやり方を模索しているところです。

Marketoと相性がいいと思っているのは、リファラル採用のところですね。NTTデータの社員から紹介してもらった人に対して情報発信をすることで、実際に採用面接を受けてみるところまで引き上げることができないかと考えています。

千葉:新卒採用では何万人というデータが集まると思いますが、実際に採用されるのは、そのうちの300~400人だけですよね。しかし、残りの多くの方たちは、将来の中途採用の候補者、あるいはお客様になり得るわけです。

そう考えると、新卒採用を起点に、個人と会社の間に接点が生まれ、そこから本当に長いお付き合いが始まることになる。マーケティング的に言えば、ナーチャリングができる環境が整うはずです。そこにMarketoが一番価値を発揮できるのではないかと思うんですね。

髭氏:なるほど。素晴らしいヒントをいただきました。

千葉:本日は誠にありがとうございました。

取材日2018年11月30日