これからのマーケティングのあり方やマーケターが目指すべき姿について斬り込む連載企画「Fearless Marketer」。今回は株式会社ニューズピックス 取締役CCO 佐々木 紀彦様をお招きし、弊社マーケティング本部長の小関 貴志と同社のMarketo活用を支援するソリューションコンサルタントの石野 真吾がお話を伺いました。

佐々木様といえば「東洋経済オンライン」編集長として、同サイトをビジネス誌系サイトNo.1へと導いた立役者。そんな敏腕編集長の佐々木様が、ニューズピックス社として分社化される前のユーザベース社に執行役員としてジョインされたのは2014年7月のことでした。

そこから約5年の月日が経ち、佐々木様は今、コンテンツを取り巻く環境をどのように捉えていらっしゃるのでしょうか。NewsPicksのコンテンツが多くのビジネスマンに愛される秘訣を探りました。

前後編でお届けします。

オリジナルコンテンツの時代がやってきた

小関:まずは佐々木様がユーザベース社(現ニューズピックス社)にジョインされた背景を教えていただけますか。

佐々木氏: マーケティングの世界でも、今はコンテンツの時代だと言われているように、世の中にインパクトを与えるためには、"強いコンテンツ"と"巧みな流通"が欠かせません。どちらか一方だけではダメなんです。

NewsPicksは約5年前にできたサービスですが、立ち上がってすぐの頃はキュレーションコンテンツとコメント、つまり"巧みな流通"は先にできていたので、そこにオリジナルの"強いコンテンツ"を付け加えるべくジョインしました。

小関:オリジナルというのは外せないポイントなんですね。

佐々木氏:そうです。プラットフォーム(キュレーションメディア)・コメント(ソーシャルメディア)・コンテンツ(オウンドメディア)の3つのトライアングルがうまく機能しているところがNewsPicksの強みだと思っています。

例えば、今日、私が履いているこのズボン。エストネーションのオリジナル商品なのですが、このように最近ではセレクトショップが作る自社商品のクオリティが、ものすごく上がっていると思うんですね。セレクトショップはキュレーションメディアの最たるものですが、「自分たちのセンスを体現するためには、自分たちで手足を動かさなければ、自分たちが思い描く本当に良いものは作れない」という感覚が、あらゆる産業で広がっているんだろう、と見ています。

人を惹きつけるのはドゥーアーのコンテンツだ

小関:私どものお客様にも、マーケティングに活用するコンテンツの作り方についてお悩みの企業担当者様が数多くいらっしゃるのですが、佐々木様がお考えになる"人を惹きつけるコンテンツ"とは、どのようなものでしょうか。

佐々木氏:一番面白いのはドゥーアー(自ら実行する人)のコンテンツだと思っています。昔は、実行する人と語る人は別でしたが、今は自分が現場でプレイしていないと、新しい情報が入ってこないし、みなさんが驚くような知見を得ることもできなくなっていると思うんですね。だからこそ、ドゥーアーとして最前線にいながら発信することが重要なのではないかと考えています。

ドゥーアーの例として真っ先に思いつくのが、NewsPicks Book編集長で幻冬社 編集者の箕輪 厚介さん。面白い人を見つけては、その人と話したことをリアリティーショーのようにTwitterに流したり、人から学んだことをすぐに発信したり。最前線で走りながら発信しているから、絶対に面白いんですよ。

小関:ドゥーアーの言葉には、説得力があるということですね。

佐々木氏:そうなんですよ。今はプレイヤーの時代だから。ビジネススクールの教授のように語るだけのタイプはあまり重宝されないし、そういう人のコンテンツは弱いので、結果としてウケないんですよね。

とはいえドゥーアーとして実践するだけでもダメで、ちゃんと抽象化したり理論化したりする力も必要だとは思います。

小関:アメリカと日本のミドルマネジメント層を比較したときに、「再現性をもって話ができるか」あるいは「コーチャーになれるか」という点において、日本がアメリカを見習うべきところは多々あるなと思っているのですが、そういった抽象化したり理論化したりするために欠かせない"言葉にする能力"はどのように身につければ良いのでしょうか。

佐々木氏:オウンドメディアのように外部に発信する機会があれば、言語化は進みますよね。本を書く、講演する、学校で授業を持つ、もしくは部下や他部署の方にわかりやすく説明する、というのでも良いと思います。要は、ツーカーで分かり合えない人とコミュニケーションをとることが、言語化のために一番役に立つはずです。

ブランドを印象付ける3つのもの

小関:NewsPicksは確固たるブランドができていると思いますが、ブランディングについてはどのようにお考えですか?

佐々木氏:創業者とプロダクトとコミュニティ、この3つで印象が決まると思っています。まず、うちは創業者が3人いて、それぞれ良いキャラクターを持ったナイスガイなんですね。そして、プロダクトはNewsPicksのUI・UXやオリジナルコンテンツを指しますが、ユーザーの方にお会いすると、「あのコンテンツ読みましたよ」とか「このUI使いやすいですね」といったプロダクトの話をされるので、そういったところがNewsPicksというブランドの印象を決めると思っています。最後のコミュニティは、NewsPicksに集っている人たちが意識高い系っぽいということで、そのようなイメージを持たれているようです。実際は意識高い系と言われるようなお高い感じではなく、誠実な方が多いと思うんですけどね。

小関:本当にNewsPicksは良質で素晴らしいコミュニティですよね。

佐々木氏:そうですね。コミュニティだけを見ると男子校だと言われるくらい女性が目立たないのですが、ご来社された方からは「女性がイキイキと自由に働いていて、全然イメージと違いますね」と言われるので、男ばかりの会社だと誤解されているのは変えていったほうが良いと個人的には思っているのですが。

小関:御社の創業者の方々は、それぞれタイプが違うからこそ、すべての方から愛される会社になっているように感じますが、いかがでしょうか?

佐々木氏:それは一理あるかもしれないですね。それぞれ嫌われるタイプではないと思いますが、確かにタイプは異なるので、いろいろな顔を持っているというのが一つの強みになっていると思います。

逆に、私ははっきり物を言うので好き嫌いが分かれるタイプなんですよね。だから私だけが目立ちすぎるのは、あまり良くない。ブランドを形作るのは創業者だという話をしましたが、一人が象徴になってしまうと、ブレが大きくなってしまうのかもしれません。

小関:等身大でブランドを体現することで自然と熱狂的なお客様が集まって、コミュニティが形成されていくと言うことですね。

佐々木氏:そうですね。創業者の顔は見えたほうが良いけれど、その人のキャラクターが強烈すぎて、ユーザーの入り込む余白がないという状況は避けるべきなのではないでしょうか。

次の後編では、ROIだけでは測れないリアルな空間やブランド広告の価値などについて、さらに詳しくご紹介していきます。

取材日:2018年11月13日