これからのマーケティングのあり方やマーケターが目指すべき姿について斬り込む連載企画「Fearless Marketer」。今回は株式会社ニューズピックス 取締役事業開発担当 坂本 大典様をお招きし、弊社マーケティング本部長の小関 貴志がお話を伺いました。

前後編でお届けします。

コンサルティングファームを辞めてユーザベースにジョインした理由

小関:坂本様のご経歴について教えていただけますか。

坂本氏:2008年、ユーザベースの創業時から学生インターンで働き始めました。卒業後、外資系コンサルティング会社に入社したものの、創業者の梅田に誘われ、3ヶ月で再びユーザベースで働くことになりました。最初は何でもやりましたね。会社の電話番から始まり、カスタマーサポートチームの立ち上げや、営業や商品企画も担当しました。それから5年ほどが経ってNewsPicksを立ち上げることになり、最初は梅田と僕のタッグで始めて、今に至ります。

小関:すごいですね。

坂本氏:できあがった大きな組織をマネジメントするのは、あまり得意じゃないんです。新しく何かを作ったり、数値のコミットを求められたりするときに、最後までやり切るというのが、僕の役割ですね。

小関:学生インターンのときは、なぜユーザベース様をお選びになったのですか?

坂本氏:当時はリーマンショックの直前で、優秀な学生は外資系銀行や外資系コンサルティング会社に入ってMBAを取る、というのが王道でした。ホリエモンショックによってベンチャー企業に対する風当たりが強くなり、安定感の強い大手企業への就職が好まれていました。僕も外資系コンサルティング会社に内定をもらっていて、そこに行こうと決めていたのですが、学生時代登録していたメールマガジンでユーザベースの創業を知りました。その中で社長が戦略系コンサルティングファーム出身だと知り、「どうしてコンサルティングファームに行った人が起業という道をあえて選んだのだろうか?」と気になって話を聞いてみたくなり、オフィスに行ったのがきっかけです。

小関:実際に入ってみて、いかがでしたか?

坂本氏:SPEEDAがリリースされる前だったので、最初はプロダクトもなく、雑用ばかりでした。僕は京都にある同志社大学に通いながら、東京のオフィスに住み込みで働いていたので、ずっと創業者達の隣にいて、彼らがやらなければいけない雑務をすべて巻き取っていたんです。

小関:それでも楽しかったから、新卒で入社した外資系コンサルティング会社を辞めて、ユーザベースに戻って来られたんですよね?

坂本氏:そうですね。新野さん(現、経営顧問)の家族がカレーを作ってオフィスに持ってきてくれたのを、米だけ炊いてみんなで食べるといった部活のような空気感が好きでした。それに、同志社大学からコンサルティング会社に就職する人はあまりいなかったのですが、東京に来たらコンサルティング会社で働いている人なんて、いっぱいいるじゃないですか。全然レアじゃない。「レアなほうが市場価値は高い」という知人からのアドバイスもあって、「どうせならレアなことをやるか」という思いもあったんですね。コンサルティング会社に22歳で入る人はそれほど多くなく、同期はみんな26〜27歳だったので、「数年ベンチャーで働いて失敗したとしても、同じスタートに戻るだけだから別に良いかな」という気持ちもありました。

小関:それでは現在のお仕事について、教えていただけますか。

坂本氏:今のNewsPicksは売上の約半分が広告事業で成り立っているのですが、その広告営業を担うチームと、プロピッカーのコミュニティを管理するチーム、そしてプラットフォームとしていろいろなメディアとのコラボレーションを行うメディアリレーションのチームの統括もしています。

中でも、僕のファーストプライオリティは"事業計画をしっかりと達成する組織を作ること"です。その上で、"企業・メディア・ユーザー、それぞれと接点を持ちながら、NewsPicksというプラットフォームを強くしていく"のが、もう1つの大事なミッションです。

NewsPicksをデファクトスタンダードにするために

小関:今後のビジネスの展開について、お聞かせいただけますか。

坂本氏:一番大事にしているのは、NewsPicksをデファクトスタンダードにすることですね。今のNewsPicksは"あったらいいな"という存在でしかない、というのが僕の認識です。そうではなく、NewsPicksがビジネスパーソンの生活に欠かせない、"なくてはならない"世界を作らなければならない。そのためには、まだまだすべてにおいて足りていないんです。

それを実現していくためのアイデアはたくさんあって、例えば法人に社内版NewsPicksを導入してもらうことがその1つです。大企業で働く人は、外の世界を見るよりも、社内に興味を持つんですね。第一弾として丸紅さんにご利用いただいていますが、丸紅さんでは会社から貸与されるスマートフォンにデフォルトでNewsPicksが入っています。そこには一般向けのニュースだけでなく、社内向けの"ここでしか見られない"コンテンツもどんどん入れています。そうすることで、業務として見ざるを得ない状態を作っていきたいと思っています。

今、これだけ情報が溢れている中でニュースを取捨選択していく時に、自分がそのニュースに強い興味があるかどうかだけではなく、誰がそのニュースを取り上げているのかという観点でも選んでいるように思います。「あの人が薦めているなら見よう」とか、「この人が面白いと言っているから、きっと面白いはずだ」といったようなNewsPicksの構造を、企業内のコミュニケーションにも適用できるようにしていこうと考えています。

小関:非常に面白いですね。

坂本氏:あとはNewsPicksでコメントしているピッカーの方々の価値も高めていかなければいけません。今のピッカーの方々は善意の気持ちで多くのコメントをしてくれていますが、それだけでは自分の仕事が忙しかったらどうしても後回しになってしまうんですね。動機として弱い。NewsPicksで発信することで、普段接する機会がないような他業界の有識者と繋がれる、もしくはNewsPicksの活動を通して自己発信が増えることで仕事も増えるなど、コメントをすることがピッカーの方々のメリットに繋がるような世界観にしていきたいんです。

小関:様々な角度からデファクトスタンダードを目指されていくということなんですね。

ロジカルでイノベーティブな人材を育てたい

小関:NewsPicksをデファクトスタンダードに育てていく上で、現状どのような課題があるとお考えですか?

坂本氏:NewsPicksには"プラットフォームとしての価値"と"メディアとしての価値"がありますが、この2つはマネタイズの性質がものすごく違うなと感じていて。プラットフォームは、論理的に考えながら"なくてはならない存在"になるために必要な施策を1つずつ実行していくことが重要ですが、メディアは、ひたすら新しいサプライズを届けて、進化し続けることが求められる。

小関:そうですよね。

坂本氏:そうすると、メディア色の強いNewsPicksの広告ビジネスのチームと、社内版NewsPicksの導入を進めるために新たにスタートしたプラットフォーム色の強いNewsPicks for Businessというチームは、同じ営業でも求められるスキルセットやマインドが異なる。それによって、チームの作り方がまったく異なるんですよね。そこは僕もいろいろ考えながら模索しているところです。

小関:チームの作り方によって、採用も変わってきますよね。

坂本氏:そうなんです。だから難しい。僕の個人的な価値観でいうと、「言われたことだけをやれば良い」という働き方はワクワクしない。僕の理想としては、どのクライアント先でも「その組織課題なら、こういう方法で解決できます」と多角的、かつ論理的に提案ができることに加え、課題解決をサポートさせていただくうえでイノベーティブに話せる人間になってほしいんです。なので、お客様のためになるのであれば、前例がなくても、どんどん新たなアイデアを考え、提案していってほしいと思っています。みんながそうなってくれたら、優秀な人が集まる、すごく良い会社になるのではないかという期待があって。まだどうなるかわかりませんが、今はそこを目指してチャレンジをしているところです。

小関:ロジカルとイノベーティブの両方の側面を持った人材を育てていきたいということですね。

坂本氏:そうですね。僕がここまで育ってきた10年間で一番良かったと思っているのは、常に新しいことを好き勝手にやり続けて来られたことです。それを経験したから今の自分があると考えたときに、効率を求めてどんどん業務を細分化していくのは、違うのではないかなと思ってしまって。いろいろな経験を積める場を提供して、アップサイドをいくらでも狙える状態にしてあげたいと考えています。

次の後編では、坂本様が組織作りにおいて大切にされている、人とテクノロジーの組み合わせに関する価値観や、お客様との向き合い方について、詳しくご紹介します。

取材日:2018年11月13日