株式会社IDOM デジタルコミュニケーションセクション オムニメディアマーケティングユニットの目黒 友氏と、株式会社グーフ CEO/Co-Founder 岡本 幸憲氏をお迎えした「Fearless Marketer」は、前後編でお届けしています。

前編に続き、後編では、デジタルと連携することで広がる紙メディアの可能性について、弊社 パートナー・アライアンス部の白井 義孝を交えて、語り合っていただきました。

データで繋がった先にある未来のカスタマーエクスペリエンス

白井:前編でIDOMさんの取り組みをご紹介いただきましたが、岡本さんはこの施策のどんなところがすごいと思われたのですか?

岡本氏:まずひとつは、一方的なプッシュに終始しがちなマーケティングコミュニケーションの中で、お客様の暮らしが豊かになる気づきを与えられている点です。ローンの完済まであと半年もあると思っていたのに、今すぐに車を乗り換えた方がおトクだなんて、ワクワクするじゃないですか。

加えて、自動車という商品の特徴として、行動喚起をすれば、即決で購買に結びつくものではありません。お客様のニーズを満たす在庫の確保や、オプションに応える営業さんのフォローアップなどが必要ですから、かなり高いレベルで準備をしておかなければ、普通は怖くてこんな施策はできないと思うんです。IDOMさんのブランド力とNo.1の買取実績があってこそ。なかなか他では真似できない施策だと感じました。

目黒氏:車の常識の一つに、資産価値は目減りしている分の方が大きいと思い込まれているので、まさか今すぐローンが全額返済できるとは思っていませんからね。多くのお客様は、「今、売るとマイナスになる」と誤解されています。実際には、相場が目減りしない車種もあるので、とあるタイミングで査定額がローンの残債額を超えるポイントがあるんです。

白井:一般的に車のライフサイクルは7年だと言われていますが、これが縮まる可能性があるということですよね。マーケティングによって、ビジネスモデルが変わりそうです。カスタマーエクスペリエンスの観点では、デジタルとアナログを繋ぐことに対して、どんな可能性を感じていらっしゃいますか?

目黒氏:今やってみたいのは、企業都合にツールを限定せず、あらゆるツールを使ってお客様と繋がることです。さらに、その先では、店舗でお客様を1to1でお迎えできる状態にしたいと考えています。

例えば、今はお客様がWebで車を探して、弊社のサイトで在庫を見た後に、ガリバーの店舗に来ていただいていますが、店頭で接客する店員は、お客様がWebで何をご覧になって来ているのか、わかっていません。これはすごい機会損失です。

あらかじめデータを把握した上でお迎えすることができれば、それだけでも接客の質は、大きく向上すると思います。データを使ってリアルな営業とからみ合わせた新しい営業スタイルが生み出せると思うんですね。

岡本氏:大事なことですよね。せっかくお客様がWebの体験を経て来店されているのに、真っさらな状態に戻してしまっているのは、もったいない。

今回のDMのような施策を通じて、お客様との関係性を長期的に積み重ねていくことができれば、実現不可能な話ではないと思いますが。今は残債額を提示しているだけですが、お客様の趣味・嗜好やライフスタイルなど、他のデータも掛け合わせてパーソナライズすることで、「あなたにご提案する車はこれです」と指定するところまでいけたら、面白いですよね。

お客様が欲しい方法で情報を届けたい

白井:そうした"データで接客を変えたい"という発想は、現場での営業経験が生きているのでしょうか。

目黒氏:そうだと思います。お客様と対面しているとよくわかるのですが、お客様にとって、Webと店舗、デジタルとリアルというのは、何の境目もなくて、当たり前のようにシームレスに動かれているんですよね。アパレル業界では、店舗でウィンドウショッピングをしてWebで購入すると言われていますが、同じことが車でも起こり得ると思っていて。むしろ、僕らが認識できていないだけで、すでに起こっているのかもしれません。

僕は常々、お客様が欲しいと思える手法でお届けすることが大切だと思っているので、goofさんの「Print of Things」によってDMというアナログなものがデジタルと変わらないスピード感で送れるようになったというのは、すごく可能性を感じています。

岡本氏:もはや営業ではなくコンシェルジュだよね。車を絡めた生活そのものに対するサービスをグループ全体で提供されているIDOMさんだからこそ、今回のDMのようなお客様の生活を豊かにするオファーはとてもマッチしていると思う。

ビジネスモデルとしては、これまで7年間は完全にコールドな状態でお客様との関係が途切れてしまっていたところから、ゆるいリレーションシップを保ち続けることで、IDOMさんからの働きかけをきっかけにライフサイクルを縮めることができるかもしれないでしょう?

今は、高齢化やカーシェアリングの台頭などによって、ただでさえ新車が売れない時代。あと数年すると、中古車のストックも減少傾向になると思うんですよね。そうなったときに、少ないパイの中で乗りたい人と乗りたい車をマッチングできるようなエコシステムを作れるところに、IDOMさんのアドバンテージがあるわけで。

そのためには、やっぱり媒体・コミュニケーション・データが必要で、その第一歩となるきっかけを目黒さんが作ったというのは、本当に素晴らしいことだと思います。

紙だからこそ、伝わるもの

白井:岡本さんは、紙にどんな可能性が秘められていると思われますか?

岡本氏:紙は安くありません。しかし、丁寧さは間違いなく表現できる。ゴミ箱に入れたくなるような紙さえ送らなければ、そこに込められたお客様を大切にする想いは、必ず伝わるはずなんです。

世の中には、すぐゴミ箱に捨てたくなる紙が、あまりにも多すぎます。僕は、そんな紙を送るのは、さっさとやめた方がいいと思っていますが、紙を捨てられないマーケターさんはたくさんいます。ブランドの存在を知らしめるためならば、一度送れば十分。"あなたにとって、こんないいことがありますよ"というメッセージを丁寧に伝えることができないのであれば、紙は送らないという英断もマーケターには求められると思います。

丁寧さを表現する上であれば、質感・保存性・情報伝達能力という点において、まだまだ紙媒体は効力を発揮すると思います。また、デジタルにはない特性として、紙には匂いを付けることができます。人間の五感の中で、臭覚は脳に一番突き刺さる感覚です。記憶性が最も高いんですね。

こうしたリアルな媒体でしか表現できない非日常の体験を取り入れるからこそ、日々のデジタルのコミュニケーションが生きてくる。昔の印刷は、プッシュで「僕たちこういうことをやっているから、来なよ。安いよ!」と、ばら撒いていたと思いますが、これからはWebの行動履歴や来店履歴などのデータをMAで可視化しながら、新たな発想でカスタマーエクスペリエンスを組み立てられるところに、紙の可能性は十分に残されていると考えています。

目黒氏:今回、MarketoでDMが使えるようになったのは、CRMプラットフォームとして発展していく上で、すごく大きな一歩だと思っています。

事業会社としては、リアル店舗を持っている以上、デジタルだけ、もしくはアナログだけに閉じる意味はありません。それよりも、お客様に目を向けて、お客様が本当に求めているコミュニケーションを追求することが、あるべき姿だと思っていますので、"Marketoならデジタルもアナログも両方使えます"というのは、事業の可能性を広げてくれる、とても素晴らしいことですね。

これまでもメールの出し分けなどによって、オファー内容の1to1はありましたが、"リーチ手法の1to1"って、なかったのではないかと思うんです。今までは技術的にできなかったけれど、ようやくそれを実現できる環境が整ってきたわけです。お客様によって、好きな受け取り方は必ずあるはずなので、その視点を大切にしながら、次の施策もオムニチャネルで挑戦したいと思っています。

すべてはお客様のために

白井:目黒さんの組織について伺いたいのですが、チームメンバーの育成について、どんなことを心がけていらっしゃいますか?

目黒氏:上司の中澤を尊敬していて、「お客様の様子を常に映像化して、これをもらったらどう思うのかを想像してみなさい」という中澤の教えをそのまま部下に落とすようにしているのと、中澤も僕も、スペシャリストを育てたいという思いが強いので「自分が楽しいと思ったことを突き詰めて」と伝えていますね。僕が関わる人には、自分が楽しいと思うことを突き詰めることで、その人の得意領域で活躍してほしいと思っています。

組織体制としては、僕の下には営業・分析・環境構築の3つの専門家がいます。環境構築とは、施策を実行するにあたって、実際のオペレーションに落とし込む役割ですね。今はそれぞれ1人ずつ配置していて、そのうちの営業の専門家は営業部隊のマネージャーなので、その下に営業部隊がごっそり紐付いているイメージです。それらを総括的に見ていく僕の役割は、「コミュニケーションの全体設計だ」と中澤からもよく言われています。

岡本氏:マーケと営業がつながっているのが、大きいんだよなぁ。今までは、メールという小さなシナリオサイクルだけでコミュニケーションしているケースが多かったけれど、リアル媒体が入って新しいアトリビューションを生み出すようになれば、シナリオサイクルが非常に大きなものになってきますよね。そうなると、必然的に営業との連携が、今よりもっと重要になってくる。

デジタル・アナログを問わず、フルメディアの行動データを評価できるようになった瞬間に、本当の意味でカスタマードリブンでのコミュニケーションが実現できる世界に辿り着けるのだと思っています。

これまで日本では既成概念やリテラシーによって、紙は紙、デジタルはデジタル、と分断されてきましたが、これからは目黒君のようにFearlessに自ら体感して、実際にやってみるマーケターによって、次にどんな発想が生まれてくるのか、非常に楽しみです。

白井:最後に、目黒さんからもメッセージをお願いします。

目黒氏:やはり僕が主軸に置きたいのは、"お客様がどうなったら気持ちがいいのか"ということであり、そのために最新のテクノロジーを使ってできる最適なコミュニケーションを作っていくことが、僕のやるべきことだと思っています。

そこに対して、中には社内の理解を得られないこともあるかもしれません。しかし、社内の理解を得られないということは、その時点ですでにお客様視点ではないのかもしれませんよね。本当にそれがお客様にとっていいことなら、誰よりもお客様のことを考えてきた人たちなら理解できるはずだからです。

社内の理解を得られないときに僕ら若手がやるべきは、"自分の考えていることが、本当にお客様のためになっているのか"ということをもう一度振り返ることであり、なっていなければなるようにすればいいし、なっているならもっと突き詰めて、"新しいテクノロジーを使ったら、こんなことができるんじゃないか?"といった自由な発想で、できることすべてにチャレンジしてみることが大切ではないかと考えています。

白井:本日はどうもありがとうございました。

取材日:2018年11月13日