富士フイルム株式会社 e戦略推進室 室長の板橋 祐一氏と、株式会社ビズリーチ 人事本部 採用マーケティング室 マネージャーの冨里 晋平氏と、freee株式会社 法人事業戦略部の嶋田 真弓氏をお迎えしてお届けしている「Fearless Marketer」。

前編に続き、後編では、サミットで感じた日本とアメリカの違いや、キャリアに対する考え方などについて、弊社マーケティング本部長の小関 貴志がお話を伺いました。

アメリカの強さは、どこにある?

小関:板橋さんは、これまでも海外には、よく出張で行かれていたんですよね?

板橋氏:そうですね。私はこの会社に長く勤めているので、いろいろな国に知り合いがいるんですよ。日本人の駐在員はもちろんだけど、ローカルで長く働いている人も多いので。「あいつが来るなら話を聞いてやるか」みたいな関係性はできています。結局、人間同士なのでね。

冨里氏:グローバルでも、そういうことがあるんですね。すごいなぁ。

小関:現地で冨里さんと嶋田さんは情報交換をされたというお話がありましたが、板橋さんも他の競合に当たるような企業と情報交換をされることはあるのですか?

板橋氏:そうですね。同じエンタープライズで立場が近い人とは、たいてい悩みは同じなので。サミットでもPanasonicのStephenとは、グローバル展開するときのポイントなどについて、共通の課題として結構話しましたよ。

小関:冨里さんは、アメリカと日本で課題が似ているなと思ったところはありましたか?

冨里氏:使い方に関しては、ほとんど変わらないですよね。同じ画面を世界中の方が使っているので、やっていることは同じだなと。とはいえ、浸透させるというか、組織内でMarketoを文化にするのは、向こうの方がうまいなと感じました。

嶋田氏:Marketoって、利用にフェーズがありますよね。1通のメールを送るとか、セミナーをやるっていうのは、たぶんどこでもすぐにできると思うのですが、そこから一歩進んで定量的にデータを取れるようにしたいと思ったら、一度立ち戻って細かい初期設定をやらなければいけない。でもそれって、施策を実行して軌道に乗ってからなので、必要になるのは、ちょっと後なんです。日本はアメリカよりも遅れているので、いずれ同じ思考に至るはずなのですが、まだそこまで到達している会社が少ないんだろうなという印象です。

小関:逆に、根本的に違うなと思ったところは?

冨里氏:女性マーケターが多いですよね。日本のイベントでは、登壇される型はほとんど男性ですが。

板橋氏:うちの会社がM&Aをした会社のマーケティングのトップは、女性であるケースが非常に多いです。海外のマーケティングのトップやキーマンは、ほとんど女性ですね。

小関:弊社もそうです。グローバルのマーケティングミーティングをすると、女性ばかりです。嶋田さんは、他にも日米の違いで気になったことはありましたか?

嶋田氏:私が驚いたのは、セッションが終わった後の質問の列の長さです。会場から積極的に質問されるのも印象的で。登壇者の代わりに「うちではこうしてるよ」と答える人までいましたよね(笑)

冨里氏:あのアクティブな感じは、すごくいいですよね。みんなが何かを得ようと真剣に参加していて、"とりあえず聞いて終わり"とか"学んで終わり"ではなく、"みんなでその場を良くしよう"という雰囲気に満たされていました。

小関:日本とは違って、高いお金を払って来てくださっているというのはありますけどね。

板橋氏:そうそう。何よりも僕が最初に驚いたのは、今回のサミットの参加費が1800ドルだということです。それに加えて、交通費や宿泊代もかかるのに、「本当に6000人も集まるのか?」「どんな人が来るんだろう?」と思いました。

だからこそ、確かにみんな真剣なんですよね。"払ったからには、何か持って帰るぞ!"という気迫があって。アメリカでは、卒業するまでに20万ドルもかかる大学に、みんな借金してでも通いますから、将来のリターンを見越して自分に投資する文化があるんでしょう。それがアメリカの強さになっている。

自分のキャリアに責任を持つということ

小関:サミットに参加してみて、マーケティングに対する考え方は変わりましたか?

嶋田氏:私は、自分が知っているのに使っていない機能を、向こうでは真剣に取り組まれていることを知って、もっとできることはあるはずだと痛感しましたし、フィアレスにチャレンジできていなかったことを反省しました。

冨里氏:確かに。Marketoに投資している分、もっと使い倒さないといけないですね。

嶋田氏:"聞いて終わり""知って満足"ではなく、その次に、実際にやるっていうことが大切なんだろうな。

冨里氏:そこだと思うんです。海外のマーケターの方は、実行することにこだわっていますよね。やってみることで、いろいろな失敗をしたり、学びを得たりしているんだろうな。

小関:実際にやっている施策は一般的なことかもしれないけれど、そこに到達するまでの過程を、再現性のある形で表現することに長けているということも感じますね。

冨里氏:あぁ、なるほど。確かに特別なことをやっている感覚はほとんどなくて、1から積み上げている段の高さが違うなという印象でした。

板橋氏:やっていることは同じでも、それを論理立てて説明する力は、アメリカ人の方が上ですよね。日本企業では、同じ会社に長くいる人が多いから、「何も言わなくても、上はちゃんと自分の仕事を見ていてくれるだろう」という甘えがあるので、自分のやっていることをアピールする習慣が弱いですよね。だからビズリーチさんは、そこを補強することを生業にされているわけで。

冨里氏:そうですね。キャリアのレジュメをご登録いただいても、その量が少ないことは珍しくないです。もしかすると日本人は、自分自身のキャリアに、自分で責任を持つという文化がまだ浸透していないのかもしれませんね。

いつまでもFearlessなチャレンジを

小関:嶋田さんと冨里さん、若手のおふたりから、上の世代の方に対するリクエストはありますか?

嶋田氏:先ほどサミットのチケットが高いという話がありましたが、現地に行かなければ理解できないことがたくさんあるんですよね。現場がアピールしてバジェットをもらうべきだとしても、そのアクションが実を結ばない人も、日本には多くいるはずで。上の世代の方に、現地で体感する大切さに理解を示してもらえたら、アメリカと日本、世界と日本の障壁もなくなり、日本でもマーケティングに関するディスカッションが、もっと活発にできるようになるのになと思いました。

冨里氏:そうですね。僕は去年、完全に自費で行ったこともあり、社内で率先してMarketoを使って、Marketo Championにも選んでいただいて、社内外でプレゼンスが上がったなと思っていたら、「今年もサミットに行きます」と言ったときに、初めて会社が半額負担してくれると言ってもらえたんですね。それは嬉しかったです。ただ、本当は上司と一緒に行けばよかったと、すごく思いました。違うレイヤーの人間が一緒に同じ体験をすることで、この後の流れが速くなると思うんですね。次回はそうしたいですし、上の方には、現場と同じ体験を共有する機会を、もっと作ってもらえたらいいなと思います。

小関:こんな声を聞いて、板橋さん、いかがですか?

板橋氏:今回、行ってみて、その価値がわかったので、僕は「どんどん行けよ」と言うようにしているんですよ。僕らは1800ドル払う人たちと競争していかなければいけないんだから。

僕がいつも言っているのは、日本はアメリカに4年遅れていると。アメリカでは新しいことに取り組んで、1年で結果を出し、それをアメリカ国内で発表されるのが、その1年後。英語がわかる人たちは、そこで「そうか、俺もやってみよう」と取りかかることができるので、2年遅れくらいで追いつける。だけど、それが日本語に翻訳されるのを待っていたら、そこからさらに1〜2年はかかるわけで、日本で始める頃にはすでに4年も遅れているわけですよ。デジタルマーケティングの世界で、2年も遅れるのは致命的ですよね。

せめて英語ができるようになって、そのギャップを2年縮める。さらに現地に行って、生の情報を仕入れれば、1年のギャップで済むんです。そうしなければ競争についていけないのだから、どんどん行けばいい。でも、僕がそう言うと、若手は尻込みするんですよね。「誰か1人行っていいよ」と言っても、なかなか手を挙げる人は少ないですね。結果を気にして無邪気に「行きたい」とは言いにくいのですかね。

ただ、間違いなく言えるのは、言葉ができないと話にならないので、英語だけはできるようになって欲しいと、常々思っています。

冨里氏:最後に1つ伺いたいのですが、サミットに登壇されてから、社内外で変わったことはありましたか?

板橋氏:変わりましたね。アメリカで開催されるマルケトさんのクローズなイベントなので、その中でプレゼンしたからと言って、日本で話題になることはないだろうと、たかをくくっていました。しかし、帰ってきたら「アメリカで講演したんだって?」といろいろな人から声をかけられて、思わぬ反響で驚きました(笑)どうやら、僕の講演について書かれたネットの記事が、社内のイントラネットに載ったようなんですね。おかげさまで、その後も国内でもいろいろな講演依頼が舞い込んできていて、月1くらいで登壇していますが、改めて人前で話すようになって、プレゼンの勉強をしなおしているところです。

僕自身、若いつもりでいますが、58歳で定年まで1年半なんですよ。ここまで来ると、「あと1〜2年静かに過ごせればいい」と思っている同級生も少なからずいますが、僕はそうじゃない。もっと成長したいし、もっともっといろいろな仕事ができるようになりたい。勉強したいことも、やりたいことも、まだまだたくさんあります。

小関:素晴らしいですね。今日はみなさん、どうもありがとうございました。

取材日2018年9月11日