これからのマーケティングのあり方やマーケターが目指すべき姿について斬り込む連載企画「Fearless Marketer」。今回は特別編として、今春サンフランシスコで開催された「The Marketing Nation Summit 2018(以下、サミット)」にご参加いただいた3名のみなさんと、弊社 マーケティング本部長の小関 貴志の対談をお届けします。

ご登場いただくのは、サミットにて「Digitize or Die, Innovating in Marketing for Surviving in Disruptive Times」と題し、日本人初のスピーカーとして、英語で約40分の講演を行なっていただいた富士フイルム株式会社 e戦略推進室 室長の板橋 祐一氏と、昨年度のMarketo Championを受賞された、株式会社ビズリーチ 人事本部 採用マーケティング室 マネージャーの冨里 晋平氏と、freee株式会社 法人事業戦略部の嶋田 真弓氏です。

それぞれサミットを通じて、何を感じ、どんな想いを持ち帰って来られたのでしょうか。改めて振り返っていただきました。

マーケティングについて語り明かしたサンフランシスコの思い出

小関:嶋田さんは初めてサミットにご参加いただきましたが、参加されていかがでしたか?

嶋田氏:私はMarketo Championとして連れて行っていただいたのですが、他のみなさんは目的があっていらっしゃっているので、熱気がすごかったですね。日本からは何名くらい参加されていたのですか?

小関:今年はゴールデンウィークと重なったにも関わらず、40名くらいにご参加いただきました。冨里さんは2回目のご参加でしたが、いかがでしたか?

冨里氏:ものすごく面白かったです。今回はハルケト(HRKETO:Marketoの人材業界に特化した分科会)のメンバーや弊社のエンジニアと一緒にホテルに泊まったのですが、みんなで寝食を共にしながら、ずっとマーケティングの話をしている1週間だったので、大人の修学旅行みたいな感じでしたね。

Marketoを使い始めてユーザー会に出たときに、「自社のサービスが好きで、マーケティングのことをこんなに真剣に考えている人たちが、社外にはこんなにたくさんいたんだ!」と知って嬉しかったのですが、サミットではそんな人たちがさらに6000人もいることを肌で感じられて、とても感動しました。

小関:冨里さんと嶋田さんは現地でもご一緒されていたそうですが、夜はどんなお話をされていたんですか?

嶋田氏:昼間のセッションで聞いたエッセンスを酒の肴にして、「自分の会社ではこうしてるよ」とか「これは日本でもやってるよね」とか...。

冨里氏:例えば、あるセッションのなかで「メールの開封率が10%以下だったら、スパムとして認識されていると判断して、それ以上は送りません」といったルールが徹底しているという話があったので、「そこまではできていないね」とか「そこからきちんとしていかないといけないよね」といった議論をした記憶があります。

日本人初の登壇者、富士フイルムの板橋氏

小関:板橋さんは、これまでに海外の様々なカンファレンスにも参加されていらっしゃるんですよね?

板橋氏:写真業界の展示会には行っていますが、こうしたIT系のカンファレンスは初めてです。日本人初のスピーカーだったということを現地に入ってから知って、驚きました。これまでにも、私以外にいくらでもいただろうと思って、軽いノリで行っていたので(笑)

冨里氏:どういう経緯で、ご登壇されることになったのですか?

小関:Marketoの活用は海外の方が進んでいるとはいえ、まだ明確な回答が見つかっていない領域が、グローバル展開なんですね。富士フイルムさんは、「センターオブエクセレンス」という1つの型をもとにグローバル展開されているので、これは海外のお客様にも大きな学びを得ていただけるのではないかと思ってお願いした次第です。

嶋田氏:日本発のセンターオブエクセレンスって聞いたことがないんですけど、なぜ始めることになったのですか?

板橋氏:グローバル企業における東京本社の果たすべき役割として、ガバナンスというのがあるんですね。2000年くらいにグループ経営や連結会計に関する法律が整備されてきたのと同じ頃に、いわゆるデジタル化の波がやってきた。我々としても、フイルムのビジネスから変わらなければいけないというときに、グローバル経営を強化しようという動きが経営の各所で活発になり、"東京本社が発信源となって、全世界で統合してシナジーを追求していこう"という流れが生まれました。

その中で、2005年くらいまでは各国でバラバラに行なっていたマーケティングを統合して、世界中のどこから富士フイルムのWebサイトにアクセスしても、同じ顧客体験を提供できるようにしようと、ここ10年間ほど取り組んでいて、さらにマーケティングで使用するツールに関しても、同様にガバナンスを効かせることでシナジーを生み出していこうという考えが背景にあります。

"ナレッジをシェアすることで、取り組みのレベルやスピードを上げられる"というのが、僕らのようなグローバル企業の強みの1つですから。簡単ではないけれど、僕らの強みを生かして戦っていくためには、当然やるべきことですからね。

冨里氏:簡単じゃないだろうなということだけは想像できます。

嶋田氏:自社だけで使っていても大変なのに。

冨里氏:全世界でマーケティングチームには何名くらいいらっしゃるのですか?

板橋氏:現地法人の規模が小さいところは、現地法人の1部門として担当者が何人かいますし、アメリカやドイツのように現地法人そのものが大きいところでは、各事業部にマーケティングチームがありますので、合算するとどれくらいでしょうかね。

日本の場合は、事業部の中にマーケティング機能を持った人たちはいたものの、僕らの組織ができた2010年頃までは、全体を包括的にマネージする組織はありませんでした。しかし、デジタルマーケティングをやるには、それでは厳しいなと。マーケティングそのものが専門分野なのに、その上にデジタルとなると、かなりの専門性が必要で、これを事業部独自でナレッジを貯めていくのは大変ですよね。だから、まずは全社的にナレッジを集約して貯めていき、そこから展開していくことを目的として、僕らの組織ができたわけです。

冨里氏:国によって考え方も違うでしょうから、一筋縄ではいきませんよね。

板橋氏:国によってもそうだし、うちの事業分野は印刷・写真だけじゃなく、医療や産業機材など、いろいろなことをやっていますので、BtoBかBtoCかといった違いもあります。特に医療は、国ごとに規制があるので、マーケティングをする上で、神経を使うところではありますね。

マーケターに英語は必要?

小関:板橋さんにはサミットで英語による素晴らしいスピーチをしていただきましたが、嶋田さんと冨里さんのおふたりは、英語はお得意なんですか?

嶋田氏:いえ、なんとなく言っていることはわかりますが、細かいニュアンスまでは難しいですね。

冨里氏:去年、パネルディスカッションに参加したら、全然わからなくて失敗したので、今年はスライドがあるセッションを選びました。目からの情報もあれば、まだ理解できるかなと。

嶋田氏:その話を聞いていたので、ついていけないと時間がもったいないと思い、データの構成の話とか、どうすればトリガーキャンペーンがきれいに動くかといった、より実践的な内容を選んで参加しました。

冨里氏:サミットのセッションに参加していて思ったのは、自分に足りないのは、シンプルに英語だけだなということですね。やっている取り組みの内容とかレベルは同じだから、コミュニケーションさえ取れるようになれば、きっとアメリカでも通用するのだろうと。逆に、英語ができないだけで、日本が低く見られているのではないかということは、すごく感じました。今回、板橋さんが初の日本人としてご登壇されましたが、本当はもっと話せる人がいっぱいいるはずだと思うんですよね。日本人はアピールが足りなくて、損をしているのではないかと。

小関:板橋さんは留学経験はないと伺いましたが、英語はどうやって学ばれたのですか?

板橋氏:もともと研究員で会社に入って、10年くらい経ってからビジネス側に来たのですが、当時はTOEICで500点くらい。ほとんどできませんでした。でも外国人の前で自分の開発した技術のプレゼンをしなければならなかったので、こんなことでは仕事にならんと思って、真剣に勉強しました。

とはいえ、どこか学校に通ったとかではなく、仕事以外の時間はひたすらFar East Network(現American Forces Network)を聞いて、駅のキオスクで買ったUSA TODAY(現在、新聞紙は日本未販売)を読んでいました。当時はオイルビジネスをしていましたので、駐在員がいないところに1人で海外出張に行く機会も多く、生きていくために使っているうちに、だんだんわかるようになっていきました。僕が話す英語は、基本的に口真似です。文法は、かなりいい加減。それでも、なんとかなっています。

小関:やはり現地で最先端の情報に触れることで、得られるものは大きいですよね。マーケティングの高度化を目指すときには、ある程度の英語力が必要になるということでしょうか。その上で、御三方が持ち帰ってこられたエッセンスを、ぜひもっと教えてください。

次の後編では、サミットで感じた日本とアメリカの違いや、キャリアに対する考え方などについて、さらに熱く語っていただきます。

取材日2018年9月11日