2017年4月12日、日経カンファレンスルームで開催された日経産業新聞フォーラム「マーケティングインパクト2017 エンゲージメントエコノミー時代の新成長戦略」(主催:日本経済新聞社、特別協賛:マルケト、協賛:アクセンチュア、富士通)は、 約200名の来場者が詰めかけ、満員御礼の熱気に包まれました。

エンゲージメントエコノミーの最新潮流と実践事例について、さまざまな知見、議論が共有された本カンファレンス。今回は、コニカミノルタ代表執行役社長 山名 昌衛氏の特別講演の内容をご紹介します。

コニカミノルタ株式会社
代表執行役社長 山名 昌衛氏

コニカミノルタは、カメラ、写真フィルム、精密機器大手の旧コニカ、旧ミノルタが経営統合し、03年に誕生しました。

両社がカメラ、写真用フィルムで創業以来培ってきたテクノロジーをコアに、複合機をメインとする情報機器事業ほか、ヘルスケア、産業用材料・機器事業などをグローバルに展開しています。

デジタルカンパニーにトランスフォームしなければ生き残れないという"危機感"

さらに、今、同社が注力しているのが、独自の技術に最先端のテクノロジーを組み合わせ、幅広いソリューションを提供するデジタルカンパニーへの変革です。

連結売上は1兆円を超え、世界150か国にセールス・サービス体制を展開するグローバルカンパニーながら、現状に甘んじないデジタルイノベーターとして新たな領域へのチャレンジを推進する山名氏。そこには企業トップとしての"危機感"があるといいます。

「15年の11月、サンフランシスコで行われた"Fortune 500"(米企業上位500社)のCEOのカンファレンスに参加したのですが、そこでの全参加者の共通認識が、『デジタルカンパニーに変革を遂げなければ、20年後には我々企業の4割はなくなっているだろう』という強い危機感でした」。

世界を代表するCEOと真剣に議論するなかで、技術革新が急速に進む時代にあって、イノベーションの必要性を改めて認識したと言います。

では、デジタル時代を生き抜くソリューションカンパニーとして、IoTの方向性をいかに模索するのか。ここで、山名氏が挙げたのが同社の2つの強みです。

1:顧客基盤

デジタル複合機や医療機器などの製品を通じ、全世界で200万企業のお客様との接点を有している。これは同社ならではの強みだと言います。

2:技術力

光学、センサー、画像処理、材料分野などの多彩な技術を融合し、新たな商品、サービスにつなげていくことが可能なのも、創業以来コア技術を磨き続けてきた同社の競争優位と言えます。

こうした2つの強みを活かし、いかに新たなビジネスモデルを生み出すのか。そのベースとなる戦略として、コニカミノルタが提唱するのが「Cyber-Physical System(サイバーフィジカルシステム)」です。

現代のIoT進展によるインダストリー4.0の状況下では、ネットの世界だけでなく、リアルな現場のすべてのモノがインターネットにつながっていく。そこで、同社が培ってきた200万ものお客様との接点と、技術力が強みになるというわけです。

つまり、高度な入力デバイスで、リアルな世界のあらゆるデータを見える化(Input)。同社独自の技術とAI、ディープラーニングといった最先端のデジタル技術を駆使し、サイバー空間で、意味あるデータへと解析。それらを元に、フィジカルな現場で、即時性の高いソリューションを提供(Output)していくというビジネスモデルです。

サイバー空間とフィジカルな現場を繋ぐことで、課題解決とともに、生産性向上、コストダウンといったワークフロー改革を実現。業務の効率化、自動化、最適化、創造性向上といった顧客価値の提供により、自社とともに、お客様企業の売上や利益向上も実現していく構想です。

その具体例として挙げたのが、同社が3月にローンチ発表をした、エッジIoTプラットフォーム「Workplace Hub」です。

これは、コンパクトなエッジ(分散処理)型のIoTデバイスをハブに、IT端末、ウェアラブルデバイス、ネットワークカメラなどをつなぎ、さまざまなデータの解析を実現する、新しいタイプのプラットフォーム。現場での迅速な意思決定をサポートするなど、「新たなワークスタイルを実現するビジネスモデルにもなりえる」と山名氏は言います。

デジタルマーケティングをソリューション事業として広く提供していく

同社では、今回のテーマであるエンゲージメントエコノミー時代のマーケティングに関しても、「サイバーフィジカルシステム」に基づく取り組みをすでにスタートさせています。

そのモデルを示したのが以下のスライドです。

センサー、カメラ技術をマーケティング領域で活用し(Inputの強化)、CMS、マーケティングオートメーション等のマーケティングプラットフォーム上での「データ活用基盤の強化」を実現。「リアルーデジタル融合」により、One to Oneマーケティングを実現していく上で、リアルな広告のオンデマンドプリンティングなどのOutputサービスも強化していく構えです。

「こうしたマーケティングを自社で実践していくだけでなく、BtoB企業として、デジタルマーケティングをソリューションビジネスとして広く提供していく」と山名氏はその展望を力説。その必然性は、情報のデジタル化を巡る下記のような顧客行動の変化にあると言います。

  • スマホ中心の日常
  • 流通する情報量の増大
  • EC市場の伸長
  • BtoB顧客の情報収集もインターネットがメイン
  • BtoB購買のECシフト

スマホを中心とした、デジタルメディアへの接触時間は年々増加。それに伴い、消費者が受け取る情報の流通量も増大しており、なんとこの10年間で500倍とも言われています。「今までのやり方では売れないのは自明の理。消費者の"欲しいもの"を把握し、"必要な情報"を提供することが肝要です」(山名氏)

情報のデジタル化はBtoBでも急速に進んでおり、インターネットの活用度はBtoCに迫る勢いです。インターネットを使った事前リサーチは当たり前で、「顧客の57%は自社営業と接する前に吟味を終えている」というデータもあるようです。アメリカでは、2020年には市場規模が1.1兆ドルを超えると予想されています。

これらの時代の潮流を受け、「"個"を知ることで最適な施策を実施する重要性がさらに高まっています」と山名氏は指摘します。

同社では、すでにコーポレートサイト、事業サイト、ECサイトなどのデータを収集し、BI(ビジネスインテリジェンス)などの活用で、顧客を"見える化"し、営業活動を効率化。企業内データの集約とマーケティングの変革を推進しています。

その社内実践の具体例が、同社が運営する東京・池袋サンシャインシティのプラネタリウム施設「満点」での取り組み。データに基づいたターゲット絞り込み、セグメント別の広告コンテンツを作成し、WebやSNSでの広告配信の適性化に取り組むことで、来訪者は14%増、予約数は1.5倍を達成しています。

こうした実績を蓄積して、デジタル複合機の"製造業"から、デジタルカンパニーへのトランスフォームを実践しています。

デジタル時代での生き残りをかけ、企業トップこそが変わらなければならない

そのために、戦略的パートナーとのアライアンス、M&Aも積極的に推進しています。マーケティング企画支援に強みを持つ、英国のIndicia社の買収や経済成長著しいアジアパシフィックをカバーするために、豪州の業務用印刷コンサルティング会社大手Ergo Asia Pty Limitedも買収。グローバルにマーケティングソリューションの提供を推進しています。

同社の強みであるカメラを通じた行動分析への取り組みも推進しています。

16年5月には、分散処理型(エッジコンピューティング)IRカメラ、画像データ解析技術に強い独MOBOTIX社の過半数株式取得も実践し、自動車ディーラーのショールームでの来店客、車のナンバープレートを紐づけた可視化、解析を実施。最適な顧客動線の設計、リアルタイムな顧客行動の分析で、サービス改善、顧客満足度の向上に活かしています。

日本で進めている事例としては、国内ブランドの小売店舗での、ディープラーニングによる顧客行動の分析、解析を実践。パッケージデザインやポップなどの販促物効果検証、過剰仕様検証につなげています。

まさに自社のコア技術、顧客基盤という強みに、最先端のテクノロジーを組み合わせることで、デジタルカンパニーへの変革に取り組んでいる同社。

最後に、山名氏は「企業が強くなるためには、社員自身が変わらないといけない。ITリテラシーを高め、ワークスタイルを変え、お客様への新たなソリューション提案につなげていくことが必須。そのためには企業のトップこそが変わることが肝要であり、今後も現状に甘んじることなくトランスフォームに向けてまい進して参ります」と力強く提言。

その飽くなきチャレンジ精神に、会場から大きな拍手が沸き起こりました。

マーケティングインパクト2017 特別講演.2 ローソン様はこちらからご覧いただけます。