SNSやスマホの台頭などテクノロジーの急激な進化により、顧客の購買行動は大きく変遷を遂げました。マーケティングが担う責務と役割が拡大するなか、顧客中心の戦略と決断が企業の成長性を大きく左右する時代が到来しています。

こうした時代の変化を受け、2017年4月12日、日経カンファレンスルームで開催された日経産業新聞フォーラムでは、「マーケティングインパクト2017 エンゲージメントエコノミー時代の新成長戦略」(主催:日本経済新聞社、特別協賛:マルケト、協賛:アクセンチュア、富士通)と題し、エンゲージメントエコノミーの最新潮流と実践事例が紹介されました。

約200名の来場者を集め、さまざまな知見の共有、議論が展開された本カンファレンスの内容をレポートします。

ビジネスモデルでいかにイノベーションを生み出すかが、企業の成長性を左右する

最初の基調講演で登壇したのが当社マルケト 代表取締役社長の福田 康隆です。

「エンゲージメントエコノミー時代の潮流と経営変革について~テクノロジーで事業成長を加速」と題し、問題提起としてスライドに掲げたのが、「なぜ企業が繁栄し続けることは難しいのか?」。

『エクセレント・カンパニー』『ビジョナリーカンパニー』『イノベーションのジレンマ』『ブルー・オーシャン戦略』といった代表的なビジネス書で取り上げられ、模範とされてきた企業であっても、存在感を失してしまった企業もあれば、高成長を継続しているP&G、事業の軸をファイナンス、デジタル、IoTと素早く転換し、チャレンジをし続けているGEなど、その道のりはさまざまです。

さらに、"破壊的イノベーション"の担い手として、Airbnb、Netflix、Uberといった先進企業がフォーカスされるなか、その先鋒的存在とされてきたAmazon.comは、オンラインのブックストアから、ECのあらゆるプラットフォームとなり、AWSでクラウドビジネスに進出するなど、事業領域を拡大し続けています。

一方、この20年、大きな革新モデルを生み出せなかった米国の小売業界は全般的に低迷状態にあり、近い将来、ショッピングモールの50%はなくなってしまうとも言われています。

自動車業界は、自動運転分野へのテスラやGoogleといった異業種からの参入で、業界構造が大きく転換しつつあり、オークション市場もかつての王者・ヤフーに代わり、メルカリが台頭しつつあります。

この差は何なのか。過去の成功体験に縛られ、組織と文化の壁などがネックとなりやすい既存勢力に比べ、強いリーダーシップのもと、一点集中型で新たな市場を創造しやすい新興勢力にアドバンテージがある点を指摘しつつ、「それだけではない」と福田は指摘します。

そもそも"環境"とは何なのか。自社を取り巻く環境の変化には、顧客、競合、協力会社といったミクロ要因によるもの、さらに政治、経済、社会、技術革新のマクロ要因が挙げられます。

後者のマクロ要因に関しては、昨今の米国トランプ政権の行方や北朝鮮をめぐる地政学リスク、あるいは日本における少子高齢化問題など、企業にとって制御が難しい要素が大半ですが、一つだけ企業がコントロールできるものがあります。

それが「技術革新」。つまり、「技術革新をどう事業に生かしていくか。これこそが先に挙げた、新たなフィールドで成長し続けている企業の共通項といえるのではないか」と福田は言います。

非テクノロジー企業のなかには「技術革新なんて関係ない」ととらえる向きもあるかもしれませんが、ここで誤解しやすいポイントとして福田が挙げるのが、技術革新、つまりイノベーションは「インベンション(発明)とは異なる」ということです。

イノベーションの定義とは、「アイデアや要素技術を、顧客が価値を感じるもの、製品、サービスに具現化、転換させること」。

たとえば、iPhone。その生みの親であるアップルはタッチパネルなどの技術、部品を自社で発明したわけではありません。しかし、さまざまな要素技術を、ユーザーが使いたいと思えるプロダクトに変換し、世界中に普及させたという点で、「まさにイノベーションの代表例といえます」と指摘します。

さらに、近年のイノベーションの潮流として、「ビジネスモデルのイノベーション」が挙げられます。Airbnb 、Netflix、Uberがその好例で、それぞれホテル業界、レンタル業界、タクシー業界の構造を一変。既存のテクノロジーを生かし、10~20年前には実現できなかったビジネスモデルで、破壊的イノベーションを生み出す企業が続々と台頭しています。

こうしたテクノロジーが変革するビジネスの潮流として、福田が挙げるのは3つ。

今、注目を集めているAirbnb 、Uberに代表される「シェアリングエコノミー」。Netflix、Apple music、SaaS/IoTなどの利用期間に応じて課金される「サブスクリプションエコノミー」。もう一つが本カンファレンスのテーマである「エンゲージメントエコノミー」です。

後編では、マーケティングにおけるエンゲージメントエコノミーの実践事例を紹介していきます。