MARKETING NATION BtoB セールス&マーケティングカンファレンス 2017」の最後のセッションとなった、ユーザーパネルディスカッションの模様をお届けします。Marketoを活用しながらアカウントベースドマーケティング(ABM)に取り組む先駆者のみなさんに「戦略・組織と人材・テクノロジー」の3つの観点からお話を伺いました。

<パネラー紹介>

Sansan
株式会社 マーケティング部 エバンジェリスト 石野 真吾氏

慶應義塾大学薬学部卒業後、医療系コンサルティング会社へ入社。医療介護機関向け動画コンテンツの新規事業の立ち上げを行い、2013年にSansanへ入社。業務企画のマネージャーとして業務改善や営業企画を行った後、現在、Sansanをビジネスインフラにするマーケティングの仕組みづくりを行っている。

株式会社コンカー
マーケティング本部 本部長 柿野 拓氏

学習院大学卒業後、外資系大手ERPベンダーにてマーケティングを中心に様々な業務に従事。2013年、株式会社コンカーへ転職。スタートアップメンバーとして間接費管理、出張・経費管理のクラウド市場創造に取り組む。デジタルマーケティンク基盤を活用した営業・マーケティングの融合施策やPRドリブン経営の実践を通じ、同社の急速な成長を支える。

富士通株式会社
グローバルマーケティング本部 シニアマネージャー 駒村 伸氏

Web(公開サイト、FUJITSU JOURNALサイト)、SNS(Facebook、Twitter)、モバイルアプリなどを活用したBtoB領域における全社的なデジタルコミュニケーションに従事。2015年10月よりデータドリブンマーケティングへの変革を目指し、MarketoやプライベートDMPを活用したデジタルマーケティング実践を推進中。

<モデレーター>

株式会社マルケト
バイスプレジデント マーケティング本部長 小関 貴志

試行錯誤の中でたどり着いた各社のマーケティング戦略

小関:まずは戦略について。みなさんの会社におけるマーケティングの役割やビジネスの方向性について、教えていただけますか。

石野:私がやっていることは、「 生産性の向上」というのが一つのキーワードになっていると思っています。現場のマーケターは繰り返し同じ業務をやっている人も多いと思うんですよね。オペレーションに割く時間がとても長くて、最終的な売上を上げるために重要な「ニーズ喚起」の部分に時間を割けていない。そこで、私がやっているのは、営業・インサイドセールス・マーケティングのそれぞれのオペレーションの中で、無駄を削いで、コスト下げること、そこで空いた時間を使って新しい施策を打っていくところのプロジェクトを担当しています。

Sansan株式会社 マーケティング部 エバンジェリスト 石野 真吾氏

柿野:私が入社してまず行なったことは、マーケティングプロセスの標準化です。私はマーケティングでは「バリュー・プロセス・インパクト」の3つが大事だと思っていますが、中でもプロセスは手をつけやすい領域です。この穴を埋めるとようやくマーケティングができる状態になります。1年半くらいで立ち上げて、うまく回るようになってから、コンテンツやデジタル、PRといった領域に手をつけていきました。現在はマネジメント業務が増えており、案件作りとともに売上の責任も担っています。

小関:売上の責任もマーケティング本部長が持っているんですか?

柿野:営業が持っていますが、私も同じようなKPIを持っています。Sansanさんもそうですよね?

石野:そうです。私も売上目標は持っています。

柿野:クラウドベンダーでは営業が売上を作ってきますが、営業の数字は結果指標だと思っています。それに対し、マーケティングは、計算上、何ヵ月後にこれくらい売上が立つというシミュレーションモデルで業務をやっているので、売上責任を中長期的に持つことが重要になります。

駒村:富士通では多くの商品があり、商品ごとのマーケティング中心を活動してきました。リードの管理はExcelでやっているところもあれば、ツールを使っているところもありましたが。今、リード情報を集約し、全社活用をはじめています。事業戦略上設定している重点領域を強化するために、

商品の組み合わせでお客様のニーズに応えるソリューションテーマ軸でプロモーションを強化しています。全社のセントラルのマーケティングという立ち位置で、全体の設計を担当しています。

小関:ABMの取り組みについては、どうですか?

駒村:最近、IT投資が情シス部門から事業部門に移っていて、これまで富士通のお客様の中であった情シス部門とは異なる、新たなお客様が出てきました。こういったお客様へのアプローチ強化にもABMは有効だと考えています。もともと営業活動自体はアカウントベースでやっておりアカウントプランを営業が考えていますので、そういったアカウントベースのセールスのシナリオをデジタル化することに大きな意味があると考えています。

柿野:コンカーの場合、アメリカではマーケット情報がAPIで公開されているため、CRMからアカウントのスコア(魅力度)が見えるようになっています。すごく便利なのですが、アカウントのビジネス状況の変化も激しいため、営業の担当領域がダイナミックに変わってしまうなど運用上の問題が出てきます。組織やチームの実態に合わせ、適切な運用を作り上げていくことが重要だと思います。日本では、まだコンカーの浸透度が低い状況ですので、日本市場でABMに本格的に取り組むのは、もう少し先になると思います。

株式会社コンカー マーケティング本部 本部長 柿野 拓氏

石野:当社の場合、Sansanの名刺情報を使ってオフラインの名寄せはできているものの、オンラインから入ってきたリードは企業名寄せができていない状態です。インバウンドで入ってきたときにもリアルタイムでクレンジングできるような仕組みに取り組んでいるところですね。あとは

SPEEDAさんと一緒にターゲティングのテストをやっていて、過去1年分の商談実績から類似する企業を探したりしているのですが、それがうまくいくかどうかというのは、まだまだこれからです。

データドリブンな組織をどうつくる?

小関:次に組織と人材の話に入りたいのですが、コンカーのマーケティング本部はどんな組織になっていますか?

柿野:通常、デジタル担当・ウェブ担当・セミナー担当など機能別に役割を設けるケースが多いと思いますが、私はその分け方が好きではなく、お客様のセグメントごとに全部できるマーケターを育てたいと思っています。また、特にデジタル領域は世界で詳しい人がたくさんいます。なので、アメリカやイギリスなど本社のメンバーと連携して業務を行なっています。自分の担当領域をグローバルな視点で考え、日本で実践するために世界中から適切なリソースと連携し、どう展開できるか?高いスキルレベルが求められますが、成長した魅力的な個人が支えるマーケティング組織こそが成長し続ける会社の原動力になると思います。

小関:インサイドセールスがマーケティング直下に置かれていますが、なぜですか?

柿野:営業組織に属していると、営業のサポート役としての思考になりがちですが、マーケティング組織に属していると、営業に案件を作ってあげるという思考に変わります。コンカーは商材の特徴もありますが、マーケティングで業務を行なった方が、電話営業の動きが積極的になり、結果もよくなると思います。

小関:富士通では、大企業ならではの課題もあると思いますが。

駒村:営業との連携についてはは、まだまだ課題が多いですね。取り組み自体はトップのコミットのもと、マーケティング部門に加え、営業部門や情シス部門、さらに顧客対応をしているSE部門も入り、組織横断のプロジェクトで進めています。既存の情シス部門が牽引するビジネスでのやり方と、新しい事業部門が牽引するビジネスでのやり方の両方をきちっと回していく必要があるかなと感じています。

富士通株式会社 グローバルマーケティング本部 シニアマネージャー 駒村 伸氏

小関:育成という意味で伺いたいのですが、石野さんはSansanに入ってからマーケターになられたということで、どのようにマーケティングを学んできましたか?

石野:マーケティングに携わって最初に違和感を覚えたのは、部分最適で効率を追い求める傾向がある事です。100は100以上にはならないので、もう少し広い視点に立つべきではないかと思いました。「全体像がどうなっているのか」「売上をあげるために、ニーズはどうやったら喚起出来るのか」といったことを考えて、実際に自分で手を動かしながらデータを触ったり、施策を試したりする中で、実践的に学んできていると思います。

なぜBtoBマーケティングにテクノロジーが必要なのか

小関:最後にテクノロジーについて、富士通の全体像を教えてもらえますか?

駒村:富士通では、様々なお客様接点の行動反応情報をプライベートDMPに集約し、マルケトと組み合わせて活用しています。名寄せには苦労しています。特に慎重に対応する必要がある個人情報の対応についてはリスクコンプラの部署にも入ってもらって、検討しています。このプラットフォーム活用し、リード情報を集約管理し、全社での活用を進めていきたいと考えています。

柿野:私たちは外資系ですので、世界で最先端のマーケティングモデルに触れ、適切なツールをすぐに使える環境にいます。今、必要なものをどんどん採用し、どんどん解約もしている(笑)のですが、今まさに使っているものはこれです。データを集めたり、網をかけるサービスを中心に活用していますが、次は収集したデータをどう活用するか?今はデータマイニングや多変量解析のモデルが中心で、AIは一部使っていませんが、そろそろAIを本格展開して、業務改善に生かしたいと思っています。

小関:お客様を正しく知るためにツールが必要だということですね。

柿野:予算が少ない、リソースに限りがある、架電数に限界がある、といった制約条件下で、効率的にお客様を特定する必要があります。成長市場であれば営業が足で稼いでくるモデルも機能しますが、今は成熟市場です。お客様のニーズも多様化、粒度も微細になっていますので、業務効率を上げて対応する必要があります。AIもこのような背景を前提にはマーケティングの現場に自動化や効率化といった文脈でまずは導入が進んでくると思います。

石野:成長角度を上げるために、何かを変えようと思ったときには、だいたい組織を縦軸か横軸で串刺して考えるといいと思っています。例えば弊社では、もともとはリードのデータベースだけだったのですが、MAも入れて、Salesforceも正しい使い方をするようになって、そこへ自社サービスのSansanもつなげて、さらにSPEEDAの企業情報で名寄せをしたりしています。それらをMAに統合し、入り口から出口までデータをつなぐことで、全体感を持ってキャンペーンや施策もデータドリブンでできるようになったというのが、テクノロジーを活用してよかったなと思う最大のポイントです。

小関:最後に、来場者のみなさんへメッセージをどうぞ。

石野:テクノロジーは活用した方がいいです。例えば、営業職以外の多くの人の名刺はまだまだ紙で管理されていますが、企業をターゲティングして攻めようと思ったときに、「社内に誰か知り合いはいないの?」というのがすぐにわかれば攻め方は変わってくると思います。自社の本質的な業務に注力するためにも、テクノロジーは活用してほしいし、できないといけないことだと思っています。

柿野:マーケティングとは考え方や行動規範であって、実際に業務に落とし込むのが難しい仕事であり役割です。自分なりの「マーケティングとはこれだ!」という答えを探し続ける姿勢が大事だと思います。私が思うマーケティングは、「会社のブランドを最大化するために常に全体最適を志向する」ということに尽きています。最適なツールを活用し、データを集め、状況を正しく把握し、意思決定をする、ということを大切にしたいと思っています。

駒村:富士通はテーマとプロダクトのマルチファネルという考え方でやっていますが、ここにたどり着くまでも試行錯誤でずっとやっていました。これからもみなさんと情報交換しながら、自分たちの取り組み、テクノロジー活用を磨いていきたいと思っていますし、そうした人たちが集まれる場ができればいいなと思っていますので、これからもよろしくお願いします。

小関:続きは、ぜひマルケトのユーザー会「Japan Marketo User Group」でどうぞ。みなさん、ありがとうございました。

BtoBマーケティングは会社の規模や組織体制などによって、さまざまな形がある一方、全社的な取り組みをされることが、成果への近道になっていることをおわかりいただけたのではないでしょうか。

本パネルディスカッションの模様は動画でも公開しておりますので、ぜひご覧ください。