2017年3月8日、六本木で行われた「MARKETING NATION BtoB セールス&マーケティングカンファレンス 2017」では、BtoBマーケティングの今後のあり方にフォーカスしました。

幕開けの、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科教授の余田 拓郎氏による基調講演「BtoBマーケティングのこれから:顧客対応と競争対応」の後編では、BtoBビジネスにおける2つ目の強化ポイントの「ブランド戦略」についてご紹介していきます。

消費者・流通チャネルをターゲットにした「成分ブランド」戦略

先のBtoBビジネスにおける強化ポイントの2つ目の施策として挙げた「ブランディング強化」についても言及。その「可能性は予想している以上に大きい」と言います。

インターブランド社の調査による「ブランド価値ランキング(Best Global Brands 2016)」のトップ10には、BtoBビジネスを展開するマイクロソフト、IBM、サムスン、GEがランクイン。「日本企業の強みである技術力に加え、ブランディング強化に取り組むことで、もう一つの成長ドライバーになりえます」と余田氏。

その取り組みの一例として挙げたのが「成分ブランド」です。いわゆる製品を構成する成分、技術、素材、食品などのブランディングを指し、身近な例ではプロセッサブランドの「Intel Pentium(ペンティアム)」、日清オイリオの健康オイル「リセッタ」、パナソニックのイオン放出系機能「ナノイー」などが挙げられます。

部品、素材技術のブランディングについては、マーケティング界の世界的権威のフィリップ・コトラー氏が著書『INGREDIENT BRANDING』で、その重要性を指摘しており、余田氏も自著『BtoB事業のための成分ブランディング』を刊行しています。

成分ブランドによるコミュニケーション成果の一つとして、余田氏が触れた興味深い研究結果が、「見本市における購買担当者の重視度」です。部品などの発注の際に、見本市をどの程度重視するかを示したもので、とくに新規(修正)発注の際に、「成分ブランドがある場合」と、「ない場合」とでは、大きく重視度が変わってくることがわかっています。

また、発注時のメディア重視度に関する調査を見ると、「業者メール」「業者ホームページ(HP)」といったIT系コミュニケーションにおいても、成分ブランドがある状況下で、関心が高まる傾向が明らかにされています。




こうした結果を受け、余田氏は「ブランディングは、成約に向け、コミュニケーション効率を高めていく効果もある」と指摘し、積極的な活用を助言。

「ブランディングについては、もっと可能性を広く捉えていくことが重要な視点となります」と言い、「購買プロセスにおける営業支援型の顧客ブランディング」「消費者・流通チャネルをターゲットにした成分ブランディング」、加えて、「製品開発や事業転換期における従業員ほかステークホルダー向けの発信型ブランディング」など、幅広い適用が考えられるといいます。



あらゆる製品、取引において、深いリレーションシップの有効度が増している

最後に、アカウントベースドマーケティング(ABM)を実践する上での必要な視点として、リレーションシップとトランザクション(transaction)の2つの概念についても解説。

リレーションシップとは、長期的関係のなかで、特定の顧客と深い関係を築きながら、CRM活動をしていくこと。一方、トランザクションとは、BtoCに近い形で、1回限りの取引が中心になります。

一般的に、素材、部品、原料などの分野は、リレーションシップの範疇であり、備品、消耗品などの商取引はトランザクションの範疇と捉えられてきました。

しかし余田氏によると、Webなどの低コストメディアの広がりとともに、通常はトランザクションの範疇にあった製品や取引に関しても、深い関係を築きつつ、クロスセル、アップセルを展開しながら、マネタイズしていく傾向が強まっているといいます。

つまり、「コミュニケーションメディアの変革により、リレーションシップの守備範囲が拡大しているのが今のマーケティングの方向性」(余田氏)というわけです。



最後に、コトラー氏のインタビュー記事を引用し、今後のマーケティングへの問題意識として、「プロモーションに偏向しがちな傾向があります」と指摘。

マーケティングとは、製品、価格、流通チャネル、プロモーションに関する戦略を統合的に組み立て、実践していくもの。よって、コトラー氏も指摘するように価格や流通の販路決定への関与など、「もっと広い視点で、ぜひマーケティングを実践、活用してほしいです」と余田氏は提言。

まさにBtoBマーケティングの新たな可能性と方向性を示唆する内容となりました。

前編の「BtoBマーケティングは、"Push+Pull"の複合型 プロモーションの時代に」もご覧ください。

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