最短でDXを成功させるには?Withコロナ時代の営業とマーケティングの関係性を考える

最短でDXを成功させるには?Withコロナ時代の営業とマーケティングの関係性を考える

2021年4月に開催した世界最大級のデジタルエクスペリエンスのイベント「Adobe Summit」。その日本版である「Best of Adobe Summit Japan Edition」のフォローアップイベントとして、6月に「Best of Adobe Summit」を開催しました。今回はその中から、2BC 御手洗 友昭氏、日本マイクロソフト土屋 健一氏をゲストに迎えて行なったパネルディスカッション「デジタル時代の営業マーケティングの連携」の模様をお届けします。モデレーターはアドビ株式会社 DXマーケティング&セールスデベロップメント本部 執行役員 本部長 祖谷 考克が務めました。

目次

コロナ禍によるオンライン化がもたらした変化とは

祖谷:コロナ禍に入ってからの約1年半を振り返って、営業とマーケティングのあり方にどのような変化が起きていると感じていますか?

土屋氏:我々はIT企業なのでデジタルシフトやDXを意識しながら働いていますが、私が日頃接している大企業のお客様の中にはレガシーなところもたくさんあります。このコロナ禍によって、そのようなお客様が強制的にデジタルシフトやDXをしなければならない状況に置かれてしまった。そこで課題を感じたり、戸惑いを覚えたりしているお客様が非常に多くいらっしゃると思います。

大企業ではそれなりにDXは進んでいるものの、どうしても部分最適が先行してしまう傾向があります。トップダウンで一気に進めるのではなく、事業部ごとや国、地域ごとに進めていくことで、情報が分断されてしまう。我々は、そうした情報のサイロ化に課題を抱えるお客様に対し、あらゆるデータを我々の箱の中に集めて活用する、データを循環させる環境づくりをご支援していますので、「DXのやり方がわからなくて困っている」とご相談をいただく機会がとても増えています。

祖谷:確かに、コロナ禍による環境変化は、これまでの延長線上では語れない、まったく新しい世界にいきなり放り込まれたようなものでした。御手洗さんはいかがですか?

御手洗氏:土屋さんがおっしゃるように、これまで構想止まりだったDXが、一気に現実的なものになった約1年半でした。そのひとつとして、「オンライン営業」があると思います。これがなかなかうまく現場に浸透しない。営業の方にヒアリングをしてみると、みなさん対面営業したいけれど"仕方なく"オンライン営業をしている感じなんですよね。「オンライン営業だから生産性が下がってしまうんだ」という捉え方をしているわけです。

しかし実際には、お客様は場面によってオンラインとリアルの使い分けを望んでいるはずです。どちらも有効な訴求手段であるという前提に立ち、メール、web、電話などチャネルを限定することなく、有効な組み合わせを模索するべきです。さらに、技術部門やマーケティング部門などがオンライン営業を支える仕組みづくりを始めているところもあります。コロナ禍によって、以下の図のように、マーケティングとセールスが融合していく必要性が、ますます高まったのではないでしょうか。

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祖谷:営業チームも対面とオンラインを分ける必要はなくて、営業という機能の中で目的に応じて組み合わせていく発想が大切だということですね。

土屋氏:ベルフェイスさんが2020年5月に行った「『オンライン商談』に関する実態調査」によると、オンライン商談を導入してよかったこととしては、移動コストやリードタイムの削減があった、と。一方、売上の増加や新規顧客の拡大に関してはネガティブな結果が出ているんですね。

オンライン商談は万能か
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我々の大企業向け営業チームのデータもご紹介すると、2020年1〜3月の1日あたりのお客様コンタクト数を1とした場合、2020年4月に緊急事態宣言が出たときには、やはり我々のチームも下がりました。それは、お客様がリモートでのやり取りに対応できていなかったこともあり、オンラインミーティングを受け入れてもらえないことが多々あったからです。ところが、7月以降になると爆発的に数字が伸びました。朝から晩まで隙間なくミーティングが入っている状態になったんです。

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とはいえ、結果につながる実のあるミーティングができたかというとそうではなくて、例年であれば6月の期末に向けて受注が右肩上がりに伸びていくのがトレンドなのですが、昨年は1月から右肩下がりになってしまいました。そのため、我々としても、今まで対面でやってきたところを「どうやってマーケティングツールも使いながら生産性の高いミーティングに変えていくか」というところに挑戦している最中です。

祖谷:土屋さんのところでは、マーケティングと営業の関わり方は、どのようになっているのですか?

土屋氏:我々は直販志向が強いので、デジタルセールス(インサイドセールス)が間に入って、マーケティングと営業をうまく連携する仕組みになっています。我々のアカウントの中では既存のお客様が全体の30%くらい、残りの60%強は新規のお客様です。なので、今後は新規のお客様にもしっかりアプローチする仕組みをつくる必要がありますし、マーケティングと我々フィールドセールスをつなぐ仕組みについても、改めて考えていく必要があると思っています。

マーケティングと営業の分断を避けるには?

祖谷:マーケティング部門が成果を上げるための分業や連携について、さらに深掘りしていきたいと思います。御手洗さん、どうすれば土屋さんも抱えているような課題を解決できそうですか?

御手洗氏:我々は内資系企業も多くご支援しているのですが、実態を見てみると、以下の図のようにマーケティングが売上から離れた位置にいて、下請けのような扱いになっているんですね。売上に責任を持っているのは事業部なので、営業はマーケターに対して「どうせお客様の声なんて知らないでしょ」という感じになってしまうし、逆にマーケターも営業から逃げてしまう。これでは、たとえマーケティングが経営直下にあったとしても、そのビジョンを浸透させることはできません。おまけに事業部同士が競争していることもあり、そういった場合にはデジタルアセットも事業部ごとに持って、ほかの事業部からは見えないように囲い込んでしまっている。そもそも連携、協調体制がまったくないわけです。

顧客を置き去りにし事業・プロダクトの推進を目指すサイロ化組織の例
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マーケターとして何よりも大切なのは、「顧客を中心に据えて、顧客に寄り添うこと」。このビジョンをしっかり胸に刻んで全社横断を意識すれば、自然と以下のような組織デザインができあがってくると考えています。

顧客の成功を中心に据えた共創組織のモデルの例
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祖谷:マーケットのことを一番よくわかっているのはマーケティング部門ですから、マーケターは自負を持って営業と対等な関係を築ける組織づくりにしていきたいですね。土屋さんはどう感じましたか?

土屋氏:ご支援している企業を見ていると、トップのメッセージがしっかりと末端にまで浸透している企業では、マーケティング部門や営業部門が、同じ方向を向いて同じゴールに向かって動いているので、セールスプロセスのつなぎ込みがうまくいっていますよね。

Marketing Automation + Sales Force Automation
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御手洗さんのおっしゃるように、自分たちの部門のことだけを見ているようでは、こううまくはいきません。初めからツールありきではなく、理想的なマーケティングのあり方やファネル全体の流れをしっかりと捉えて、最終的な数字につなげていくという意識を持つことが大切です。その上でツールを共通化することで、想いをひとつに活動していけるのではないでしょうか。

DXを最短で進めるには「マインドセットの変革」が必要だ

祖谷:では最後に、直近でDXを進めていきたい皆様に向けて、この一点だけはまず大事にしましょうというマジックポイントを教えてください。

土屋氏:DXの成功企業のひとつとして、我々のCEO サティア・ナデラのメッセージを紹介します。彼は「"CEO"の"C"は"Culture(文化)"の"C"だ」と言っているんですね。つまり、「文化のキュレーター(Curator of Culture)」として、時代の変化に合わせて文化をしっかり変えていくことがCEOの役割である、と。

マイクロソフトは、この10年をかけてDXを強く推進してきたのですが、元々は各部門が銃を突きつけあっているような、「自分たちの部門が良ければそれでいい」という、まったく協調性のない組織文化でした。これを変えていくためには、「『個人の成果』『他社の成功への貢献』『他者の知見の活用』の3つの要素のコンビネーションがビジネスにインパクトをもたらす」と考える「Growth Mindset」の価値観を全社員に浸透させることで、全員が同じ方向を向いて動けるようにしていきました。

この経験から痛切に感じているのは、DXには「データドリブン営業」「デジタルツールによる活動支援」「成長のマインドセット」の3つが不可欠であるということです。我々は多くの失敗も積み重ねながら、ようやくここに辿り着けました。だからこそ皆様が素早くDXをするためには、まず私たちの失敗談を聞いてください。そうすることで、我々のツールも組み合わせながら、皆様のさまざまな課題解決を一緒に進めていけると考えています。

御手洗氏:私もDXへの近道は「マインドセットの変革」に尽きると思っています。「マイクロソフトさんのような大手だからDXが実現できたのだろう」と考えていた方もいらっしゃるかもしれませんが、今日のセッションで土屋さんが赤裸々に語っていただいたおかげで、実はそうではないことが明らかとなりました。それに、私はむしろ中小・中堅企業のほうが、マーケターが経営に近づきやすいのでマインドセットの変革は容易だと思うんですよね。マイクロソフトさんだけでなくアドビさんもご自身でDXを実践して成功された企業なので、失敗例も含めて経験している企業の声に耳を傾け、どんなマインドセットを持つべきなのか、改めて整理してもらえればと思います。

祖谷:Adobe Summit 2021のキーノートで、ファイザーのアルバート・ブーラ氏が「準備していないところに幸運なんて来ない。実現不可能だと思うようなプロジェクトを実現するために必要なのは、まず『できる』と信じることだ」とおっしゃっていました。「10年かかると思われていたDXを半年で実現するんだ」と強い意志を持って信じることが、一番の鍵になるのかもしれませんね。おふたりとも、今日はありがとうございました。

<登壇者>

2BC株式会社 代表取締役社長 御手洗 友昭 氏
外資系ベンダー、株式会社リクルートなどを経て、2014年の2BC設立に参加。マーケティングコンサルタントとして戦略策定やシステム運用まで幅広いサービス提供とサービスづくりの経験を積む。2017年5月より現職となり、現在も多くのクライアントワークでプロジェクト責任者として関わる傍ら、海外のマーケティング動向での学びや豊富な営業経験を元に、 セールス&マーケティング支援のベストプラクティスをモデル化することを推進している。

日本マイクロソフト株式会社 クラウド&ソリューション事業本部 土屋 健一 氏
セールスフォース・ドットコムやソフトブレーンなど国内外CRM企業でセールス、エンジニア、コンサルタント、パートナーアライアンスなど多様な経験を積む。2012年、ソフトブレーン、首都圏のエンタープライズ顧客に対するSFA、Customer Serviceを中心としたコンサルタントとして多くのお客様のDXを推進。主にRealEstateの大手デベロッパーや全国展開の大手Healthcareなどで実績多数。2014年、セールスフォース・ドットコム、ミッドマーケット~エンタープライズ領域のエンジニアとして顧客提案を経たのち、パートナーアライアンスに従事しGSIやアドバイザリーをはじめ、全国のSIおよびISVパートナーのデベロップメントや技術支援を担当。2017年、現職。エンタープライズ向けビジネスアプリケーションのセールスエンジニアおよびパートナーマネジメントを担当。

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