B2Bにおける基本の型 〜ABMと購買グループ〜|マーケティングオートメーション(MA)ツール・サービス・システムのMarketo Engage

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B2Bにおける基本の型 〜ABMと購買グループ〜

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B2B SMX2019に学ぶこれからの組織と人材の価値とは? vol.3

第1回2回では、収益を生み出す成熟した組織と人材についてお話しました。第3回では、企業の営業とマーケティング活動で発生しがちな課題の解決のヒントとなるトピックをピックアップしてお伝えします。

B2Bの組織戦略「ABM」

ここ数年にわたり、マーケティング界隈の流行語であるABMですが、Vajre氏のABMの定義は『Account-Based Marketing for dummies』を出版した2016年に始まり、年々進化しています。

  • 2016年:顧客獲得の効率とコストの改善
  • 2017年:パイプライン強化速度の改善
  • 2018年:アカウント拡大
  • 2019年:B2B

2016年から2018年にかけて、マーケティングのツールや単なる戦術のように捉えられることも少なくなかったABMですが、2019年Vajre氏は、「B2B組織を構築する方法」としてABMを位置づけました。

第1回で紹介した組織の成熟要素、TEAMフレームワークですが、これはVajre氏が出版した最新の著書「ABM is B2B(ABMこそB2B)」におけるABMの捉え方を示すものです。

「Target、Engage、Activate、Measureこれらの4つの要素において、成熟度が頂点に達した状態「B2B 2.0」が、B2B組織のあるべき姿」と唱えるVajre氏は、既出の著書において、「ABMこそB2B組織である」と断言しています。さらには、「B2B組織でABMという形が取られていないことは、むしろ問題である」とまで言っていますが、その理由はどのようなものでしょうか。

【Target:ターゲティング】
ターゲティングでは、対象を絞り込み、自社製品やサービスが提供する価値にフィットする顧客企業を特定することが重要です。この選択と集中は、ABMには不可欠な要素です。
「全員に向かって話しているとき、実は誰にも話しかけていないんですよ」とVajre氏が言うように、マス・コミュニケーションは、効率と効果の両方の低下を意味するのです。

【Engage:エンゲージメント】
上記で絞り込んだターゲットアカウントに対して価値があるパーソナライズコミュニケーションを行います。単純に接触回数を測定する指標の優先度を下げ、コミュニケーションの内容に意味付けを行いましょう。
米国のソフトウェア会社であるPramata社では、ABM体制に移行した直後、ウェブサイト流入量が減りましたが、流入の質はむしろ改善されていることがわかりました。さらには、それによってターゲット顧客の獲得コストを60%削減することにつながったそうです。
私たちは、成果に直結しない指標を改善することにリソースを割き、その結果に一喜一憂したりすることがないようにしたいものです。

【Activate:アクティベート】
ABMがアカウントベースドの「マーケティング」と表記していて、後工程の営業が考慮されていないように思われるかもしれませんが、営業に武器を提供し、営業活動を効果的にすることこそ、ABMすなわちB2B組織における極めて重要な要素であるとVajre氏は述べています。営業に武器を提供するための活動ができていなければ、その活動自体、組織にとって無駄と言わざるを得ないのです。

【Measure:測定】
正しい指標を設定し、測定できていることが重要です。ABMアプローチを採用している組織は、根拠のない指標をなくし、成果に直結する指標を設定し測定しています。先述の【エンゲージメント】の説明の中でも述べましたが、サイト全体の流入量は本当に重要な指標でしょうか?セミナー参加者数も同様です。たとえ参加者数が100人いたとしても、ターゲット企業の適切な人物が1人も参加していないセミナーは参加者0人と同義なのです。

以上を踏まえると、ABMが単なるツールや戦術ではなく、B2B組織におけるマーケティング人材のリソース配分と正しい指標を決定し、後工程である営業組織にコミットするための組織戦略であることが見えてくるのではないでしょうか。

個人を追うマーケターと集団を追う営業

ある程度複雑なB2Bの購買には、6~10人の個人が関与していると言われています。すなわち、1名のリードが購買を検討しているのではなく、購買グループという集団がバイヤーとしての活動をしているということになります。マーケティングの購買プロセスを整理するときも、登場人物が複数名登場するにもかかわらず、なぜマーケティングファネル管理では、リードという個人を管理しているのか、不思議にすら思えます。

まさにこの矛盾が、組織のパフォーマンスの低下と、営業活動との不整合を起こしていると注意喚起を促したのが、BtoBマーケティングの分野では最も知見を集めていると言われるリサーチ&アドバイザリーを提供する Forrester社SiriusDecisions のCunningham氏 です。

現在のマーケティングのITシステムにおいては、リードを企業や組織単位にまとめて可視化できているケースはあまり多くありません。しかし、ABM/B2B組織の成熟度を上げていこうとするならば、ターゲットとなる企業や、ターゲットとなる組織に所属するリード全体の動きを捉えることで、各企業や組織としての案件の見込みや確度を見極め、営業に送客できることが強みになることは想像に難くありません。

Cunningham 氏は、セミナー、イベント、問合せフォームの送信、ホワイトペーパーのダウンロードなどのアクションを、個人のものとしてだけでなく、企業単位でも可視化・管理することがいかに重要かを次のスライドを使用して説明しています。

(スライドA)

上のスライドAは、3つの異なる購買グループ内の顧客行動を示しています。
一番左の購買グループでは、MQLが1件、真ん中の購買グループではMQLが1件と問合せフォーム通過リードが1件あり、一番右の購買グループには4件の問合せフォーム通過リードがあります。

(スライドB)

しかし、今のマーケティングのデータベースでは、上記のスライドBのような状態でしかマーケターの目に入ってこないのです。問題は2つあります。1つ目は、一番左の購買グループと真ん中の購買グループの重み付けの結果が同じになってしまうこと。そして、2つ目の問題は、4名も問合せをしているリードが存在する企業/組織であるにもかかわらず、MQL判定されているリードが1件もないために全体としての重要度が0のように見えてしまう一番右の購買グループです。この判断基準に基づいて送客を受けた営業が実際に顧客にコンタクトをとり、目の当たりにするのは、スライドAの状態です。そして、一番右の購買グループは営業へは送客すらされないため、企業としては機会損失をすることになり兼ねません。

このように、リード(個人)にだけ注目してしまうと、購買グループとしての検討度合いを見誤ったり、見落したりすることを「Buying Group Blindness(購買グループへの盲目性)」とSiriusDecisionsは呼んでいます。

収益を生むのはリードではなく、商機を構成する購買グループなので、最初からリードではなく購買グループの商機をウォッチングすべきであるとCunningham氏は強調しています。

ABMの基本型として普及しつつあるインテントデータ

インテントデータとは、顧客がオンライン上でどれくらい積極的に、どのような内容に関してリサーチを行っているかの顧客行動を示す3rd Partyデータです。米国企業では、このインテントデータの活用が徐々に進んでおり、B2B企業の半数近くが活用または検討しているようです。その背景としては、やはりターゲティング精度の向上による、選択と集中戦略を可能にするデータであることが挙げられるでしょう。では、インテントデータにはどのような価値があるのでしょうか。

【インテントデータの価値】

  • 関心度合いがまだ初期の段階のバイヤーの認知
    • 「自社との接点がなければ何もできない」のではない
    • インテントデータによって、自社が提供するソリューションで解決できる課題を持つ可能性が高い企業を特定可能
  • リードやアカウントの優先順位付け
    • インテントデータから、興味度合いや購買意欲の高低を測ることで、最も商機につながりそうなアカウントを判別可能
  • パーソナライズされたカスタマーエクスペリエンス
    • インテントデータから得たインサイトを使用することで...
      • 各企業の「状態」の仮説を立てられる。その状態に適切な(=パーソナライズド)コミュニケーションを設計し届けることで、顧客とのエンゲージメントを高めることが可能
      • カスタマーエクスペリエンスの設計を憶測ではなく、データに基づいて実行可能
  • 競争力の向上
    • 興味度合いや購買意欲の高い見込客を競合よりも早く察知可能
    • 見込客が解決策を探索しているそのタイミング(=Right Time)に適切な内容(=Right message)や、エクスペリエンスを届けることが可能
  • 既存顧客のリテンションへの応用
    • 既存顧客がリアルタイムでどんな情報を収集しているかを把握できる。これにより、変化し続ける既存顧客のニーズや課題に関するインサイトが得られる
    • 得られたインサイトに応じたカスタマーサービスを提供することにより、リテンション率を高めることが可能

購買グループの情報が可視化されていないことが課題であると一つ前のセクションでお伝えしましたが、可視化されたとしても、自社が保有する情報量そのものが少ないことも送客判断の精度が落ちる理由の一つでしょう。自社が保有する、個人特定ができているリードの行動データに加えて、IPアドレスなどから特定された同じ企業に属する匿名の人物の行動データであるインテントデータを総合的に見れば、前者だけで判断されるものよりも高い精度での関心度合い判定ができるのです。

ここでB2B SMX 2019の中で登壇していた2社の事例をご紹介しましょう。

Extreme社の場合、4つのビジネスの買収により営業の活動量拡大を迫られ効率・効果が危ぶまれた時期がありました。そこで同社は、営業が優先的にアプローチすべきアカウントリストを週次で提供することをマーケティング部門の価値として定義し、それを実現するための「プロジェクト・オリオン」をマーケティングとマーケティングオペレーションズ(MOPS)が立ち上げました。

結果、このプロジェクトは大成功し、現在は自社のMarketoに蓄積された行動データのみならず、外部の3rd Partyから得られたインテントデータも活用し、各営業にパーソナライズされた形でアプローチリストを提供しています。

もう一社ご紹介するのは、パイプライン不足を課題としていたAppNata社の事例です。同社は、顧客のエンゲージメントを高めるために相手に適したコミュニケーションを行い、パイプラインの充実につなげることをゴールとしていました。顧客と対話を深めるためには、顧客を知る必要がありますが、自社のデータはすでに駆使されている状態でした。

思考錯誤をする中、B2B企業が情報収集をする場合、ベンダーのウェブサイトを訪問する前に平均で12回検索行動を取るというGoogleが発表した動向や、70%の顧客が、企業広告からベンダーを理解するよりも、メディアの記事を読んで理解することを好むというContent Marketing Instituteによる調査結果を発見し、インテントデータを取り入れることを決めました。

【米国企業のインテントデータ導入状況 (2018年時点) 】

  • B2B企業の25%がすでにインテントデータとモニタリングツールを活用(Demand Gen Report調査)
  • B2B企業の35%が「今後12か月以内にインテント・インサイトを活用する予定」と回答(Demand Gen Report調査)
  • 10人中8人のシニアレベルのマーケターが、インテントデータをターゲティングに活用することが有効であると考えている(Forrester調査)
  • 67%の調査対象者が「インテントデータを見込客判定とリテンションへ活用することは、競争力につながる」と回答している(Forrester調査)

以上のデータからも見られるように、米国企業のインテントデータへの関心度は、他社の成功事例が増えるとともに増加傾向にあります。判断材料をより多く持つ企業が、他の企業よりも先に顧客の心を掴み、他の企業よりも先に顧客に価値を届けるようになると考えれば、インテントデータは競争力そのもの。普及の理由は問うまでもありません。日本においてはまだインテントデータを提供する企業は数少ないですが、今後増えることは明らかです。

今回が、本シリーズの最終回となりますが、いかがでしたか。

本シリーズでは、次のことをお伝えしました。

  • 営業とマーケティングの協業を成功させるためには、仲間意識などではなく「顧客体験」と「収益」を目指す共通のマインドセットが必要(第1回および第2回)
  • ABMはツールや戦術ではなく、組織戦略(第3回)
  • マーケティングもリードではなく、営業同様「購買グループ」や「商機」を追いかけるべき(第3回)
  • インテントデータは競争力そのもの。今後ますますニーズは高まる(第3回)

このイベントレポートシリーズが、皆様のよりよいマーケティングと営業の組織づくりのヒントになれば幸いです。

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