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顧客体験を高めるためのマインドセットとは?

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B2B SMX2019に学ぶこれからの組織と人材の価値とは? vol.2

第1回では、組織と人材の成熟曲線について紹介し、それらは効率化→効果→顧客体験→収益の道をたどるとお伝えしました。第2回では「顧客体験」について、B2B SMX2019の登壇企業であるNew England Biolabs社(以降「NEB社」)の事例をご紹介します。

バイヤージャーニーからカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)へ

今回NEB社から学ぶべきこととしてお伝えするのは、自社の有るべき姿を、マーケティングとマーケティングオペレーションの戦術に落とし込んだ点です。その中身はどのようなものでしょうか。

NEB社は、研究機関、病院、大学などに試薬や医薬品を販売するライフサイエンスカンパニー。創業者であるドン・コーム氏の「会社は研究者のためにあり、研究が大事」という『哲学』のもと、NEB社は企業の理念を以下のように明確に定めています。

  • Passion (情熱) 商売人である前に自分たちは科学者であり、科学者としての情熱を忘れない
  • Humility (人間性) 顧客という人の成功のために考え行動する
  • Being genuine (本物であること) お客様と関わるときは、思いやるふりをするのではなく、本気で顧客のためを考え抜いて関わる

それにより、NEB社は次のような価値観を掲げるに至っています。

  • 短期的な利益よりも、顧客との関係をつくり、育てる
  • 売ることよりも顧客の声を聞き理解する
  • 収益は、サービスの結果であり、自然な副産物であるとみなす
  • 合理的(Rational)アプローチよりも関係性を重視した(Relational)アプローチをとる

マーケティング活動も、これらの価値観に基づくべきであるという信念のもと、NEB社はまず、「バイヤージャーニー」に焦点をあてることをやめました。そもそも「BUY(購買)」は、顧客との長い付き合いにおいて瞬間的な1フェーズに過ぎないからです。日々顧客と関わり、その関係性をつくり育てるためには、何を考えればよいのか?その答えこそが、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)でした。

顧客の仕事に寄り添えば、企業は生かされる

「お客様にとって自分たちはベンダーではなく、仲間(Peer)であると考えています。大企業と戦うためには、もちろん効率性が求められますが、我々はそれよりも、お客様の仕事のプロセスに徹底的に合わせることを優先させました。それは、お客様の仕事のプロセスにあわせた様々な接触の連鎖こそが、売上につながるのであって、その逆ではないと強く信じているためです」

そう述べるのは同社のマーケティング・営業業務執行役員であるAndy Bertera氏。顧客が体験に満足すれば、自社の企業としての評判は向上し、最終的には収益につながると考えており、収益は顧客満足の副産物であると言い切るほどです。裏を返せば「ネガティブな顧客体験ほどあっという間に広まり、収益に悪影響を及ぼす」ことを意味すると同氏は言います。

購買プロセスにあわせた販売プロセスを持つことは、日本企業でも少しずつ見られ始めたものの、B2Bにおいて、顧客の仕事そのもののプロセスに合わせて、売り手側のプロセスをデザインし運用している企業はまだあまり見られないのが現状ではないでしょうか。

営業やマーケティングの指標はもちろん重要ですが、顧客がどれくらい頻繁に課題を開示してくれているか、自社から購入してくれているか、そして相互接触があるのかも同様に重要であると同氏は語ります。

では、このような企業理念と価値観を持つNEB社は、顧客体験を向上させるためにどんな取り組みをしているのでしょうか。マーケターとMOPs (マーケティングオペレーター)には「顧客の仕事のプロセスに寄り添い、顧客体験の向上に寄与する」ために、型にはまらない戦術を計画し実行することが求められています。その戦術と成果の一部をご紹介しましょう。

テクノロジー、人、指標も顧客体験のために

「世界で最も優れた製品を取り扱っていたとしても、顧客にとっての購入のしやすさがなければ、顧客は買おうとしません。仮にそれがクリアできたとしても、購入後の技術サポートが粗末であれば、再度購入することはないでしょう。顧客体験を考えるならば、こういった要素も考慮しなければなりません」

限りなく顧客に寄り添うことで、同社のマーケターとMOPsが生み出したものの一つに、顧客ラボ向けの冷凍庫があります。NEB社は、顧客である科学者や研究者の要望に応えるため、試薬や医薬品が必要なときに個人認証ですぐさま購入でき、購買履歴の記録追跡もできるCRMと連携した冷凍庫を開発しました。今まで現場では、社内での事前申請なしには試薬が使えないために、様々なロスが発生していましたが、この冷凍庫の導入により、即時使用できるようになりました。

他にも、実験中両手がふさがっている顧客を考えて、スマートスピーカーでテクニカルな調べ物や質問に回答したり、連携したIoT機器に指示を出したりすることも実現しています。MOPsの指標には、これらの機器がどれくらい活用されているか、というものが加わり、一辺倒の指標だけでなく、独自の指標が測定されている状態になっているのです。

もう一つの工夫は、NEB社が顧客に送るメッセージにあります。顧客の専門性が非常に高い場合、彼らの仕事のプロセスや、思考プロセスを同じレベルで理解するのは、一般的なマーケターやMOPsには困難です。そこでNEB社は、各製品に関するコンテンツを、自社でその製品を開発した科学者に書かせました。それらを顧客状態毎にパーソナライズして届けたときの顧客からの反響は、眼を見張るものがあったそうです。

「顧客は、自分が考えたり悩んだりしていることについての情報を受け取り、興奮した様子で返事をくれます。当然話題も弾み、新たなコラボレーション(=商機)の創出に自ずとつながっています」

もちろん、コンテンツ制作に詳しくない開発者がコンテンツをつくること自体簡単ではなく、課題もあるようです。しかし、顧客の仕事への貢献やインパクトを一番に考えれば、今と同じ選択肢に行き着くとBertera氏は考えています。

さらにBertera氏は、同社にとってマーケティングキャンペーンは顧客の仕事を支えるためのコミュニケーションに過ぎないと強調しています。それはどういう意味でしょうか?

例えば、Webサイトの訪問者が、1ページだけ見て問題を解決して離脱していると知ったとき、「なぜ、回遊してくれないのか」と残念に思うこともあるかもしれません。NEB社も同様に考えたことがありましたが、マルチチャネル接触分析してみると、むしろ好ましいことが判明しました。自社のWebページが、顧客が検索するテクニカルな質問に答える機会が増えるたび、例え1ページだけ閲覧して離脱していたとしても、長期的な関係が形成されていたことがわかったのです。これはNEB社のWebサイトのコンテンツそのものが、自社製品の売り込みではなく、顧客の仕事内容そのものになっているからこその結果と言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたか?第3回の記事でもご紹介しますが、B2B SMX2019では、自社の哲学や、有るべき姿を実現するために、マーケター、MOPs、そして組織がどうあるべきかを定義し、実行に落とし込んでいる良い事例が多く見られました。

自社のあるべき姿については、2013年、コトラーは誰もが知っているマーケティングの「4P」に、5番目の「P」であるPurpose(パーパス:企業の存在意義)を追加しています。顧客の幸福こそ、良い商売を意味し、結果としてブランドロイヤリティにつながる。だからこそマーケティングや営業活動も、企業のパーパスを軸にするべき、とコトラーは信じています。

また、本記事では、真に顧客体験を向上させるには、顧客の「仕事」と付き合うことが重要であるとお伝えしました。最近、「カスタマーサクセス」という言葉をよく耳にするようになりました。これが単なるリテンションや、アップセル・クロスセル対策だけを意味するバズワードにならず、「顧客の成功とは何か」「その成功を自分たちはどのように顧客に届けられるか」という問いに、真摯に向き合うために使われることを切望しています。

営業

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