事例

B2B SaaS企業3社のマーケターが実践する「収益プロセス」の設計方法とは

急成長中のB2B SaaSのスタートアップを招いて開催したウェビナー「成長企業に学ぶ、B2B SaaSを支えるマーケティング」の中から、ヤプリ、Wovn Technologies、Chatworkの3社が登壇したパネルセッションの模様をお届けします。各社ではどのようにリード獲得から受注に至るまでの「収益プロセス」の設計とデータの蓄積を行い、マーケティング、インサイドセールス、営業の部門間連携を図っているのでしょうか。アドビの虻川 稜太がお話を伺いました。

目次

<登壇社紹介>
株式会社ヤプリ
遠藤 実咲氏

Wovn Technologies株式会社
香川 亜友氏

Chatwork株式会社
北川 峻氏

営業マーケティングの収益プロセスはどう設計されているか?

虻川:リード(見込み客)の獲得から受注に至るまで、お客様の検討を進めていただくには、「収益プロセス」の設計が欠かせないと考えています。この収益プロセスとは、リードの獲得から受注までのプロセスをいくつかのステージに分類して、お客様一人ひとりの状況を把握しながら導入検討を進めていくことです。その上で重要になるのが、検討を促進するための情報を提供するナーチャリングや検討の可能性が高いホットリードの創出です。
急成長を遂げているSaaS企業では、具体的にどのような収益プロセスを組んで取り組みをされているのでしょうか。3社のマーケターからお話をお聞きしたいと思います。

遠藤氏:ヤプリでは3つのステージを設けています。1つ目はマーケティングチームが担当する部分で、「有効リードの創出」をKPIとして持っています。2つ目はインサイドセールスチームが担当する部分で、KPIは「有効商談数」。3つ目はフィールドセールスチームが担当する部分で、「受注数」がKPIとなっています。この3つのステージをスムーズに進むケースに加え、途中で商談化できなかったり受注に至らなかったりしたリードは「再育成リード」となり、メールを送ってスコアが規定値に達すると、有効リードに戻ってくるようにしています。

メルマガ施策のKPI

ちなみに再育成リードは「休眠中」「情報収集」「個人課題」「企業課題」「アプリ検討中」の5つのフェーズに分けており、各フェーズに合わせたテーマでメールやセミナーなどのコンテンツをつくることで、次のフェーズに進めるための施策を行なっています。

北川氏:こちらがチャットワークの収益プロセス図です。THE MODELの典型ですね。緑色がマーケティング、青色がインサイドセールス、赤色がフィールドセールス、オレンジ色がカスタマーサクセスの担当領域となっています。

Chatwork:収益プロセス

マーケティングの領域でいうと、リード獲得からSALまで育成してインサイドセールスに架電してもらうのですが、そこでうまく商談化できなかったものは、いったんリサイクルに変更してWarmステージまで戻します。弊社はリードを「Cold」「Warm」「Hot」「MQL」と分けていて、それぞれのステージに合わせてコンテンツを用意しています。

香川氏:弊社では収益プロセスを13個のステージに分けて設計しています。最初は「匿名」から始まり、マーケティング活動によってスコアが上がっていくと「MQL」に。さらにスコアが50点以上になるor企業規模or役職者の条件によって「SAL」となり、インサイドセールスにパスをします。その後は、「アポ」「商談」「有望商談」「受注」という流れがあり、途中でドロップしたら、そのタイミングによって、アポ→「未商談」、商談や有望商談→「失注」と定義しています。また、企業規模が明らかに合わない場合や、インサイドセールスが見込みなしと判断したリードに関しては、今後も着手しないリードとして「アーカイブ」に移しています。

収益プロセス

さらにAdobe Marketo Engageの「成功パスアナライザー」を使って、どのプロセスがボトルネックになっているのかを定期的に把握するようにしています。たとえばMALの残高が増えていたら、ウェビナーへ誘導したり、セグメントを分けたメールを配信したりして、次のMQLへ進めるための活動をしています。また、こうした残高の多いリードに対する施策に関しては、インサイドセールスやフィールドセールスともしっかり連携をとっていて、マーケティングで作成したコンテンツをチェックしてもらっているほか、件名や本文のA/Bテストを毎回実施してベストプラクティスを模索するようにしています。

ボトルネックの可視化

部門間連携で苦労した点と、その乗り越え方は?

虻川:収益プロセスを設計する過程で、インサイドセールスやフィールドセールスの方と意見が合わないなど、ご苦労された点があったかと思うのですが、どのように乗り越えて来られたのでしょうか。北川様からご回答をお願いします。

北川氏:弊社もよくあるマーケティングとインサイドセールスのいざこざみたいなものはありました。最初は「リードの量が足りない」と言われ、量を増やすと「質が悪い」と言われるんですよね。現在の収益プロセスでは「Cold」「Warm」「Hot」「MQL」と細かく分けていますが、以前はもっと単純に、リードを獲得したら「MQL」、その中で架電対象だったら「SAL」としていました。

弊社の場合、まずはインサイドセールスに多く架電をしてもらい、お客様のペルソナやカスタマージャーニーをきちんと定義するところから始めました。その中で、Chatworkの導入にあたって大きく4つの課題があることがわかったので、課題ごとにABCDの4種類のコンテンツを作成しました。その上で、最初に「Cold」の潜在層に対して引きの強いメールを送り、開封してくれたリードに対して、ABCDのメールを順番に送っていきます。たとえばそこでAのメールが開封されたら、そのリードが抱えている課題はAだとみなし、その後はAの課題に沿ってナーチャリングを進め、ホワイトペーパーがダウンロードされた時点ですぐにインサイドセールスから架電するようにしています。こうすることで、インサイドセールスは当該リードが抱えている課題を把握した上で架電できるため、商談化率がかなり上がりました。

スコアリングとホットリード基準の改善で商談率が2.7倍に

虻川:ありがとうございます。遠藤さんは、いかがですか?

遠藤氏:弊社はスコアリングを最初に設計してしばらくしてから、「スコアが高いのに商談に至らない」という課題が出てきました。マーケティング担当の私としては、「スコアが高いリードは商談に繋がるはず。早く架電してほしい!」と思うのですが、インサイドセールスとしては「スコアが高くても商談に至らないんだよな...」と後回しにしていたんですよね。そこで実際にリードのアクティビティログを見てみると、たしかに決定的なアクティビティがなかった。つまり、スコアのインフレが起きていたんです。

当時は、2〜3ヶ月間スコアを保持していて、「メールを開封したら3点」といったように、細かく加点していく仕組みにしていました。しかし、そうすると情報収集しているだけのリードを排除できず、逆にすごく検討を示唆する行動をしていたとしても、スコアの閾値に達しなければインサイドセールスに渡らず、スコアが溜まったときにはすでにホットなタイミングを逃している、といったことが起きていました。

解決策

そこでスコアの積み上げではなく、その時々の瞬間的な行動にフォーカスするように変更したんです。加えて、1ヶ月間でスコアを0に戻す。メールの開封を一律で加点せずに、良いコンテンツだけ配点を高くして、すぐにインサイドセールスに共有できるようにしました。その際には、必ず「どのページを見た」とか「機能紹介メールをクリックした」などの"リードを渡した理由"も明記する。これによりインサイドセールスから「電話がかけやすくなった」という声が上がるようになり、商談率も約2.7倍にまで増やすことができました。マーケティング担当としては、ついいろいろなところで加点したくなるのですが、そうした"もったいない精神"はいったん置いておいて、必要最低限のものを見極めて加点していくと、スコアリングがうまくいきやすいのではないかと思います。

虻川:たしかに。私もインサイドセールスをやっていたので、ホットな行動を見極めておいてもらえるのは、とてもいいなと思いました。では香川様、お願いします。

香川氏:弊社は昨年の10月にAdobe Marketo Engageを使い始める前からずっと、他社のMAを使っていました。ただ、その頃はメール配信ツールとしてしか使えていなくて、インサイドセールスを支援する仕組みもなかったので、社内理解は得られていない状態でした。Adobe Marketo Engageを導入してからは、収益プロセスの設計やスコアリング、エンゲージメントプログラムの積極的な活用をするようになり、有望商談から受注までのプロセスを可視化して他のチームメンバーにも共有しながら、マーケティングの効果測定やホットリードの創出をしています。

ホットリードの創出に関しては、弊社もスコアリングを活用していて、メールのクリックやフォームの入力、自社セミナーの出欠などで加点or減点しています。中でも特徴的なのが、ナーチャリング対象者であるリサイクルリードのランク付けですね。架電を4回してつながらなかった場合は、WOVNの社名すら覚えていないということで「不信」と定義をして、それ以外の「予算がない」「リードが決裁権を持っていない」「3ヶ月以内の導入は考えていない」といった場合は「不急」と定義をしていて、不信or不急のいずれかをインサイドセールスのメンバーにSalesforceへ入力してもらうようにしています。

この2分類でエンゲージメントプログラムを回していて、「不信」のリードには不信感を払拭してもらえるような"会社の紹介"や"導入事例"などのコンテンツを配信して、スコアが30点以上になれば「不急」に移します。「不急」のリードには、より詳しくWOVNを知ってもらうための"機能紹介"や"セミナーのアーカイブ動画"などを配信して、スコアが50点以上になれば、Slack通知やSalesforceのToDoでインサイドセールスに架電してもらう仕組みになっています。

架電後は、Salesforceに履歴を残すだけでなく、該当のSlack通知に対してリードの反応や対応ログを書き留めてくれるので、それを見ながら月に2回、マーケティングとインサイドセールスで"ナーチャリング定例"という会議を設け、ラフにディスカッションをしながら精度を高めるようにしています。

マーケティングはインサイドセールスをどうサポートできる?

虻川:ここまでの間にもマーケティングとインサイドセールスの連携の話をしていただいていますが、部門間連携を図るためにAdobe Marketo Engageを活用しながらサポートしていることがあれば、ぜひお聞かせください。

香川氏:非常に悩む部分は多いのですが、Adobe Marketo EngageのMarketo Sales InsightやMarketo Sales Connectなどのツールを駆使して、インサイドセールスやフィールドセールスが得たリードの情報をできるだけ可視化するよう意識しています。そのログをマーケティング施策に落とし込むようにするというのは、常に意識していることですね。

遠藤氏:ヤプリではセミナーによるリード獲得が多いので、どうしても長期休暇のタイミングでリードが減ってしまうんですね。そんなときにはインサイドセールスと連携しながら、通常のナーチャリングとはまったく異なる、業界やソリューション別に作成した"刈り取り目的の単発メール"を送るようにしています。このメールは非常に即効性があって、お客様から返信があることもありますし、開封した人には必ずインサイドセールスが架電しますので、リードが不足して困ったときの施策として鉄板になっています。こうした短期的な課題を一緒に解決できる仕組みがあると、営業部門にもMAの効果を実感してもらえるんですよね。

北川氏:先ほどの収益プロセス図のうち、赤い点線で囲んだところがマーケティングがインサイドセールスやフィールドセールスのサポートをしている箇所になります。

マーケティングからセールスへのサポート

具体的な取り組みはさまざまあるのですが、中でも重視しているのがChatworkでの"通知"です。セールスは当然のことながら、熱いうちに架電したいので、リアルタイムで通知してあげることが大切だと考えているからです。たとえば、リードが「SAL」になった瞬間に、リードの所有者を自動で割り振って通知する。特にパス率が高いチャネルでアクションがあったときには、リード所有者にメンションを付けて通知を出すように設定していて、リードがアクションをしてから数分以内に架電できる体制を整えています。

虻川:他のチャットツールだと個人に対してメンションを簡単に飛ばすことができないものがありますが、Chatworkなら、それもできるのですね。

今回3社のお話を伺って、収益プロセスの設計や部門間連携をしっかりと図りながらナーチャリングに取り組むことで、安定的なホットリードの創出につなげられることが改めてよくわかりました。みなさま本日はありがとうございました。

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