今回は、マルケト本社ブログの中から、著者Ardath Albeeの「B2B Tech Marketers Make the Shift From Funnels to Lifecycles」(B2Bで先をいくマーケターはファネル創出の観点からライフサイクル観点へ移行している)」を取り上げます。(原文はこちら

顧客ロイヤリティの向上、リテンションマーケティング、LTVの最大化などのテーマはBtoCにおける取り組みが先行していますが、多くのB2Bマーケターも取組みの必要性を認識していることに違いないでしょう。しかしながら「顧客の獲得地点」が「マーケティング戦略の終点」を意味することになってしまっている現状もまだまだ多いのではないでしょうか。
今回は顧客のライフサイクル全体に向き合うことの重要性について考察したいと思います。

1. 顧客との関係性維持に目を向けることの重要性

" Saasやサブスクリプションビジネスを提供する企業にとって「顧客を獲得すること」はカスタマーライフサイクル全体で価値を届けること(LTV)においては、最初のステップに過ぎません。"
"例えば、5社の顧客を今月失ったとすると、成長するためには6社の新規顧客を同月に獲得せねばなりません。企業規模が小さい場合はそれでもなんとかなるかもしれませんが、顧客数が増大するにつれて、継続的な月間売上(MRR)を維持する要求にも応えなければならなくなります。"

まさに著者が上記で触れているように、既存顧客の維持は新規顧客の獲得と比べると等価値以下の取り組みと捉えられがちです。ガートナーの調査で「利益の65%は既存顧客で構成されており、新規顧客の獲得は既存顧客の維持の5倍のコストを要する。」というものがありますが、このメッセージもこうした既存顧客への体制が希薄になっている実情に警鐘を鳴らすものでした。

例えば、自社の製品やサービスの

  • 利用頻度が少ない顧客
  • 機能を十分に活用しきれていない・アップグレードしていない顧客
  • 利用ユーザーが増えていない顧客
  • 社内外に推薦してくれない顧客
  • 解約や失効しそうな顧客

が存在するとして、こうした顧客に対する具体的な取り組みは実行できているでしょうか?
こうした顧客を生まないためにも、商材やサービスの購入直後から迅速に自社の商材やサービスから得られる価値を理解してもらうことが重要なのです。
失った顧客1社を取り戻すには、多大な労力とコストを費やしてしまう結果になります。

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2. 顧客とのエンゲージメント戦略を持つ。利活用状況を測定する

"マーケターは顧客との直接の接点においてもエンゲージメントや改善を続けなければいけないですし、直接の接点をもたないバックエンドにおいてもロイヤリティや満足度を高めるためのエンゲージメントを続けなければなりません。"

「顧客の獲得地点」が「マーケティング戦略の終点」を意味することになってしまっている現状からも、マーケターが「顧客の購買プロセス」を描くことはあっても、「顧客の利活用のジャーニー」を描くことは少ないのではないでしょうか。顧客がサービス利用を開始した時点から利活用のジャーニーが始まります。

顧客のライフサイクルを意識するマーケターは、そうした利活用のジャーニーに対応した

  • 各契約商材やサービス毎のオンボーディングプログラムの設置
  • 各契約商材やサービス毎の利用状況把握プロセスの確立
  • 紹介制度や表彰プログラムの設置(Advocacy/refaral)
  • カスタマーサービスとの連携
  • セールス/サポートとの連携体制

などのエンゲージメント戦略を描き、実行していく必要があります。

" 「購買過程において約束された成果」を得ることは顧客が求め期待した最低限の実行可能なリターンに過ぎません"

著者は「購買過程において約束された成果」などは最低限の実行可能なリターンであると言います。「購買過程において約束された成果」というのは例えば別システムからの安定移行や安定運用、最低限の機能の活用などが該当するように思います。具体的な数字をともなうビジネスの成功や高度な利活用までを購買過程において約束することは、稀なケースと言えるでしょう。
では、前述したエンゲージメント施策を推進する中で、顧客の利用状況や成功はどのように測定していけばよいのでしょうか。

" もしあなたが顧客に提供しているソリューション価値の定量化が容易でないならば、マーケティングは顧客担当者が他の社内関係者を通じてどのように価値検証を行っていけばよいかを示し、その実行結果を定量化すると良いでしょう。その結果出しが実現できれば、どうやってより高い価値を得られるかを、彼らに示すとよいと思います。"

著者が述べるように顧客が社内での活用状況を検証する、ユーザーアンケートを取得するなども顧客の活用状況を測る一つの有益な手段でしょう。加えて、利活用ジャーニーで顧客が活用を進める中でのキータスク・マイルストーンをきちんと定義し、そのポイントごとでマーケティングテクノロジーを活用するという手段もあります。例えばアナリティクスツールなどで自社で保有する顧客の利活用ログを分析し活用状況を測定(推察)する手段を確立することや、Kissmetricsなどのサードパーティーツールを利用して顧客のアプリケーション利用状況を把握するなどの手段も有効であると考えられます。

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3. FearlessMarketerの実行するエンゲージメント戦略は

顧客に「寄り添った」「噛み合った」もの

"マーケターが直面する最も大きなチャレンジの一つは、見込み客や購買関与者のことをよく理解し、エンゲージメントにおいて彼らを妨害するような行為を無くすことだといえます。"
"ファネルではなくカスタマーライフサイクル全体を大胆にマネジメントしようとする瞬間は、「Fearless Marketer」にこそ訪れる瞬間なのです。"

インタラクティブなコンテンツやパーソナライズされたコンテンツは、顧客に寄り添い噛み合ったものであれば非常に有益なエンゲージメントができるものです。
著者が述べるように、こうしたコンテンツはマーケターが目指す施策形態の理想形でもあるでしょう。但し、そのコンテンツが全く顧客の状態に見合わないものであったとすると、それは妨害行為となってしまいます。
既存顧客なのか?見込み客なのか?購買関与者なのか?非購買関与者なのか?
既存顧客であれば、どのような利活用上にあり、自社に対する満足度はどの程度なのか?
大きなチャレンジではありますが、マーケターはこれらを正しく見極め、それぞれのステージに合った最良なコミュニケーションをしなければなりません。
それはとても大きなチャレンジですが、それこそがFearless Marketerであるのです。

今回はB2Bにおいて顧客ライフサイクルに向き合うことの重要性について紹介いたしました。