Adobe Symposium 2019」で行われた当セッションでは、日立製作所でコーポレートサイトの企画・運営に携わる米山 卓美氏に「コーポレートサイトが、デジタル活用で事業に貢献するコンシェルジュに変わる - 日立製作所がMarketo Engageで挑戦するデジタルエクスペリエンス改革」と題してご登壇いただきました。Marketo Engageを活用し、企業の顔とも言えるコーポレートサイトの最適化を進めている日立製作所の取り組みについて紹介します。

<登壇者紹介>
株式会社 日立製作所
ブランド・コミュニケーション本部 デジタルコミュニケーション部 担当部長 米山 卓美氏

1994年に日立製作所入社後、通信機器事業部門で輸出製品の納期・売掛・生産管理を担当。その後、情報事業部門を中心にさまざまな部門にて、広報・IRや営業支援、マーケティング、事業企画などに従事。2018年から本社 ブランド・コミュニケーション本部 デジタルコミュニケーション部でコーポレートサイトの企画・運営、Webガバナンス・教育、SNSを担当している。

デジタル活用によって、顧客課題に応えるコーポレートサイトへ

日立製作所は、1910年の創業以来、「優れた自主技術・製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、社会や人々が直面しているさまざまな課題を解決する社会イノベーション事業を推進しています。消費者に馴染み深い家電は事業の一部にすぎず、ITやエネルギー、インダストリー、鉄道やエレベーターに代表されるモビリティなど、幅広い事業を展開しています。連結総売上収益は9兆4806億円(2019年3月期)、連結従業員数は約30万人(2019年3月末時点)に上ります。

コーポレートサイトは、企業のブランド価値の向上や事業の認知度向上を目指し、企画・運営されています。また、訪問者が求めている製品やサービス、さらには企業に関する情報を紹介しています。

日立製作所でもコーポレートサイトで情報発信してきたものの、「外部調査による検証を行ったところ、導線がユーザー視点を欠いており、せっかくいいコンテンツがあっても見つけにくい、コンテンツそのものがユーザーの課題にフォーカスしておらず、押し売りの印象が強い、社会イノベーション事業に取り組む強み、持ち味が伝わっていないといった、さまざまな課題が見えてきました」と振り返ります。

株式会社 日立製作所
ブランド・コミュニケーション本部 デジタルコミュニケーション部 担当部長
米山 卓美氏

そこで米山氏は、ブランド・コミュニケーション本部に異動した2018年から、次期中期経営計画が発表される2019年6月ごろをターゲットとして、コーポレートサイトの改訂プロジェクトをスタートさせました。

「改訂プロジェクトでは、『コーポレートサイトは、顧客課題に応えるためにデジタルを活用した日立グループのコンシェルジュになる』というビジョンを掲げ、『ブランド価値向上だけでなく、事業にも貢献すること』をミッションとしました」(米山氏)

そして最終的なゴールとしては、①ユーザーがほしい情報に容易にたどり着ける、②日立の認知度を上げ、ユーザーに興味を持ってもらうことに加え、③日立が伝えたい情報をしっかり届けられるコーポレートサイトの実現を目指しました。

「ほしい情報にたどり着きやすいサイト」を目指す

ブランド・コミュニケーション本部では、改訂作業に当たって、既存のコーポレートサイトのアクセスログなどのデータを解析し、精緻なサイト分析を実施しました。

その結果、問題に挙がったものとして、例えば、トップページにアクセスしても、サイト内のほかのページを開くことなく離脱してしまう直帰率が40~50%と非常に高いこと、また、検索キーワード上位には、日立の注力する社会イノベーション事業に関するものではなく、家電の品名や型番、マニュアルなどランクインしていることがわかりました。

「これらの結果から、訪問者はどこを探せばほしい情報にたどり着けるのか迷っているのではないか、家電情報のサイトを探している訪問者が、間違ってコーポレートサイトに紛れ込んでいるのではないかということが浮き彫りになりました。流入経路を調べたところ、大手の価格比較サイトで当社の家電製品のページからの訪問者が多かったため、さらに調べたところ、メーカートップページへのリンクが、日立の家電サイトではなく、日立のコーポレートサイトに遷移するようになっていました」と話す米山氏。

以上の課題について、米山氏はECサイトのリコメンドのように、何らかのデジタルを活用して解決できないかと考えていたときに、Marketo Engageにたどり着きました。

「Marketo Engageには、訪問者のIPアドレスなどに基づいて、関連性の高いコンテンツやパーソナライズされたメッセージを届ける『Webパーソナライゼーション』というオプションサービスがあります。これを利用すれば、訪問者が見たいと思われる情報をこちらからリコメンドして、満足度を上げることができるのではないかと考えたのです」

「Webパーソナライゼーション」により、思い描いていたコーポレートサイトの実現ができそうだと考えた米山氏は、Marketo Engageの採用に向けて、2018年8月から事業部門と連携し、検討を進めました。

「Marketo Engageは、そもそもWebの表示の最適化のみを目的とはしていません。Web上で欲しい情報にたどり着いた各ユーザーと関係を構築し、具体的なビジネスに繋げていく、事業貢献を目的に設計されたソリューションです。せっかく導入するならば、営業および事業部門と連携してこそ、最大の効果を発揮すると考えました。

IT分野の営業部門でデジタルマーケティングを検討している部署があることがわかり、相談したところ、実は同部門で営業活動支援のために使用している別のMAをMarketo Engageに切り替える検討をしていたため、それならコーポレートと事業部門が連携することで、大きな効果が見込めるに違いない、ということになったのです」。こうして日立製作所は、わずか2ヵ月後の2018年10月、Marketo Engageを導入しました。

今後は営業活動のみならず、社内コミュニケーションにも活用

Marketo Engageの導入から間もない2018年11月、米山氏たちは手始めに、問題になっていた家電の価格比較サイトから日立製作所のサイトに遷移してくる訪問者向けに、「Webパーソナライゼーション」を使ったリコメンドを試行しました。

訪問者が価格比較サイト上のメーカートップページへのリンクをクリックして日立のコーポレートサイトを訪問すると、「日立の家電品についてお探しの方はこちら」というバナーが掲出されるようにしたのです。「その結果、バナーのクリック率は30%を超え、家電サイトへのスムーズな送客ができたほか、訪問者のニーズにあったリコメンドをすれば、必ず効果が得られると確信しました」と米山氏は語ります。

(スライドP13)

その後、サイトの情報構造やデザインなどの検討を経て2019年6月、コーポレートサイトのトップページを改訂しました。

「新しいトップページの上部にはブランディングエリアを設けていますが、『Webパーソナライゼーション』によって訪問者を分析し、訪問者の業種に合わせた事業部門サイトへのリンクを促す画像掲出するなど、訪問者のニーズにマッチしたページに送客できるようにしました。ほかにも、日立グループから訪問者に伝えたい最新情報を掲示したり、検索機能を強化してサイト内検索の結果を改善することで、ニーズに合うコンテンツページへ直接送客する工夫も凝らしています」(米山氏)

(スライドP14)

これら施策の結果、40~50%あった直帰率が、トップページを改訂した6月には33.3%と大幅に改善しました。

日立製作所は今後、コーポレート部門だけでなく、各営業・事業部門においてもMarketo Engageなどのツールを活用してマーケティングのデジタル化を推進していく方針です。

米山氏は、「事業部門との連携による集客・送客の強化はもちろん、コーポレート部門においても、日立グループからのアクセスに対して社内向けの情報を掲出したり、リクルーティング活動や広報・IRといった取り組みにおいても活用していきたいと考えています。」と語り、セッションを締めくくりました。