今回は、マルケト本社ブログの中から、Go-to-market戦略家であるマルケト社員Brian Gloverの記事「3 Tech Trends Shaping the Future of Account-Based Marketing (ABMの未来を形作る3つのテクノロジー)」を取り上げます(原文はこちら)。

B2Bの世界でABMという言葉が流行してから数年が経過し、コンセプトとしても国内でかなり浸透してきました。ただ、国内においては、ABMを実際に定常的な取り組みとして活用するところまで到達しているか、というとそうでもないのが実情です。
一方の米国では、ABMの導入もかなり進み、効果検証に至る企業もでてきた印象があります。2019年に実施された調査では、ABMプログラムを1年以上実行している企業は調査対象企業の57%を占めることが報告されています。
「コンテンツマーケティング」というものが、国内外問わず企業のNice-to-HaveからMust-Haveに変化したのと同様に、米国においてはABMプログラムの計画実行も同じような位置づけになりつつあると言えるでしょう。
みなさんはマーケティング格差(Marketing Divide)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。マーク・ジェフリーが名著『データ・ドリブン・マーケティング』の中で使用したキーワードで、マーケティング活動で成果を出しさらに大きな予算を獲得している企業とそうでない企業の間に格差が生じているという状態を表しています。マーケティング格差の要因は、マーケティング・セリング活動をデータドリブンで実施できているか否かを始めとし、多岐に渡りますが、ABMを活用する力の有無も、成否を分ける一因になりそうです。
2017年にSiriusDecisionsが実施したABM実体調査結果を見てください。

以上のことから、ABMを適切に活用できている場合、そうでない場合と比較してより高いROIと生産性を実現できていると言えるでしょう。筆者も、ABMの成否を分けるのは、ROIであり生産性であると考えています。

では高ROIを実現するには何が求められるのでしょうか。

それは、明確に定義したターゲットに最適化されたマーケティング施策です。何故ならば、これらによりターゲットへの無駄打ち施策が減るだけでなく、戦略アカウントに適切なバイヤー/カスタマーエクスペリエンスを提供することができるようになるためです。

最近AdobeがABM(Account-Based-Marketing)を、新たにABX(Account-Based-Experience:アカウント・ベースド・エクスペリエンス)と呼ぶようになったのは、それが理由です。

今回の記事では、これをテクノロジー観点で語る筆者の見解を紹介していきます。

ABMの成長を促進するテクノロジー

B2Bマーケターが求めているのは次の3つであり、テクノロジーがこれらの実現を支援できると筆者は説明しています。

"今日のマーケターは、アカウント中心のターゲティング、パーソナライゼーション、およびデジタルチャネル全体での測定ができるようになりました。ABMをエンゲージメントエコノミーでスケール可能にするためには、テクノロジーが重要な役割を果たしているのです。"

"マーケターがABMプログラムにより多くの予算を投入するにつれて、成功を収めたマーケターは、マーケティングテクノロジースタックをアップグレードし、投入リソースや努力を運用しやすく最適化しています。"

では、ABMを推進し、その未来を形作る主要なテクノロジー動向を見ていきましょう。

筆者が考えるABMテクノロジーの主たる役割・トレンドは次のとおりです。

一つ一つ見ていきましょう。

1. 自動化によるABMスケールアップとリスク低減

"10年前、ABMはトップの大手アカウントを選定し、アウトバウンドプログラムと戦術でアプローチしてきました。ABMを効果的に実行するためには、マーケターは数少ないチャネルを介してアカウントに取り組むだけで済みましたが、マーケティング・オートメーションがなかったために、数多くのアカウントにアプローチすることが困難でした。
現在は、マーケティング・オートメーションにより、マーケターはABM戦略を大胆に組み合わせ、実行することができます。上位10〜20位、または50位までの戦略的アカウントのみならず、マーケターはすべての営業チームのNamed Accountに加えて、ターゲットアカウントであるロングテールまでをフォローできるのです。これにより、マーケティング部門と営業部門の提携が実現し、フォローアカウントからの需要を生み出すことができます。

さらに、より安価なチャネルを使用し、幅広いターゲットアカウントから需要を生み出すことで「すべての卵を1つのバスケットに入れる」というリスクを軽減することもできます。また、新規アカウントがエンゲージしたことのアラートを人手を介さずに営業向けに出すこともできます。今後は、顧客ライフサイクル全体を通じてアカウントフォローをさらに自動化し、営業とマーケティング間でより一貫性のある、調和の取れたアカウントエンゲージメントの実現が見込まれます。"

2. AIによる大量情報の処理と判断支援によるパーソナライズ、およびICPのモデリング。AIによるエンゲージメントの強化

"自社の営業組織が狙うアカウントリストさえあればABMプログラムは開始できますが[...]、AIを使用すると、マーケターは、非常に細かいレベルで理想的な顧客プロファイル(Ideal Customer Profile)を捉えることができます。経験を積んだマーケターはAIを活用し、業界、収益、その他企業情報に限らず、過去の売上高、アカウントが使用するテクノロジー、企業ニュース、ソーシャルメディアチャネルに関する、ビジネスの手がかりになる情報を分析しています。言い換えれば、AIはマーケターが社内外の情報源からより多くの情報を活用し、より正確なICPモデルを設定するのに役立ちます。"

"AIが強化しているもう一つの分野はエンゲージメントです。マルケトのレポート「The State of Engagement(エンゲージメントの実体)」によれば、72%のマーケターが、顧客とのやり取りにパーソナライズされたメッセージとコンテンツを使用する必要がある、と回答しています。この目的を達成するために、彼らの約40%が、AIや機械学習などの新技術を活用してカスタマージャーニー全体で使用されるコンテンツの強化を予定していることがわかっています。

AIを使用すると、マーケターは、1対1の方法でコミュニケーションをパーソナライズできるため、ルールベースアプローチを超えたパーソナライズに拡張できます。Marketo ContentAIは、このようにマーケターがコンテンツや訴求対象商品をパーソナライズするのを支援する人工知能を活用したソリューションです。ContentAIを使用すると、マーケターは各個人がコンバージョンする可能性が最も高いコンテンツを予測し、その個人をチャネル間でターゲティングできます。
マーケターにとってのAIの可能性が今後も認知されるにつれ、AIによってより強化されたルールベースのABM活動が増えることが予想されます。それにより、マーケターが適切なアカウント(およびそのユーザー)をターゲットとして選定し、チャネルを越えてアカウントにエンゲージし、インサイトを得ることが容易になります。"

2025年には従業員の75%を占めると言われているデジタルネイティブ。
Econsultancyは、そのデジタルネイティブ・バイヤーの67%が、チャネルを横断してパーソナライズされたエクスペリエンスを期待すると報告しています。このようなデジタルエクスペリエンスを提供する能力の有無が、競争力に直結する可能性がありそうです。

AdobeがB2Bソフトウェア企業に対して実施した調査によると、企業はABMに投資はしているものの、すべてのデジタルチャネルでパーソナライゼーションを実現している企業はほとんどないことがわかりました。
というのも、それを実行するとなると、業界、潜在顧客のビジネス要件、およびペルソナによって整理された大量コンテンツが必要になるためです。また、米国において見逃されがちなコンテンツの種類としては、職業や役職別コンテンツや、ユーザー制作コンテンツ(UGC=User Generated Contents)であることが判明しています。

デジタルエクスペリエンスをパーソナライズし、静的なパンフレットページの現状から離脱できた企業は、そうでない企業よりも先に競争力を手にすると言えそうです。

3. 高度な分析によって、ABMコンテクストでのアトリビューションを可能にする

実施しているABM戦略が機能していのか否かを確認する方法は1つで、それは、ビジネスへのインパクトを測定することであると筆者は唱えます。

"従来は、マーケターはスプレッドシートと格闘しながらデータをまとめ、活動の影響を示すモデルをつくるか、もしくは全くそれに着手しないかのどちらかでした。アトリビューションレポートを自動化できれば、マーケターは自分らの取り組みを、商談、パイプライン、収益に結び付けることができます。これはABMの観点においてはさらに重要です。"

その理由は次の3つです。

"1) まず、ABMは、ターゲットアカウントに対する営業との提携についてです。マーケターは、パートナーシップが機能していることを証明できる必要があります。

2) ほとんどのマーケターが複数のターゲットアカウントリストを持っています。アトリビューションレポートを使用すると、あるアカウントリストと別のアカウントリストの取り組みと結果を比較できるため、ABMプログラムを最適化できます。

3) ほとんどのマーケターは複数または混合マーケティング戦略を並行して実践しています。たとえば、ABMパイロットを実行したり、ABMとインバウンドマーケティングを融合させてものを実践したり、といった具合です。このような場合、どの投資がうまくいっているのかを把握する必要があります。

将来的には、さらに多くのタッチポイントとデータをアトリビューションモデルに取り込み、それらをより包括的に活用することが求められるでしょう。また、アトリビューション分析自体がマーケターにとってより使いやすくなることも期待されています。"

米国マーケティングの習熟度の高さは賞賛に値するか、脅威に値するか

ABMとそのテクノロジーの可能性を見てきましたが、冒頭に立ち戻ると、私たちは「米国のABM実施状況が非常に進んでいる」という事実をどう捉えるべきでしょうか。

良いコンセプトは積極的に取り入れ、企業のマーケティング・セリング活動を最適化し続けよう、という他国企業の取り組みや姿勢は、米国を始め賞賛に値するものではあります。しかし、企業の多くがグローバル市場に立たされていることを再認識すれば、むしろ脅威に値する可能性も十分にあります。

国境線が薄くなるにつれ、国際競争に晒されながらも、コストもヒトも多くを投入できない今の時代。マーケティング施策の無駄打ちをなくし、生産性とROIを最大限まで引き伸ばすことは喫緊の課題です。

お伝えしてきたように、ターゲットに最適なエクスペリエンスを提供するABM = ABXは、B2B企業が売上主導型から、顧客中心型に移行するのに役立つでしょう。こうした機会を逃さないためにも、データやテクノロジーを活用し、ABXを長期戦略の一部として含めることをお勧めします。
これが整えば、ABXは増収をもたらし、競争力と優位性をもたらすはずです。

今回は企業競争力としてのABM:3つのテクノロジートレンドをご紹介しましたが、いかがでしたか。

マルケト社も、ABM領域で数多くのご支援をしています。ぜひ気軽にご相談ください。